京都府各圏域で地域医療構想調整会議を再開-持続可能な医療提供体制を目指し,地域ごとの課題を議論

 京都府では,2月28日の京都市域地域医療構想調整会議(全体会議)を皮切りに,各二次医療圏(構想区域)で地域医療構想調整会議を開催(京都市域は4ブロックごとの会議も開催)。それぞれの圏域ごとの医療機能や地域課題を共有し,医療機関ごとの役割の明確化と連携の強化を図ることで,2040年に向けて持続可能な医療提供体制の構築を目指した議論が再開した。

今後の地域医療構想の推進に向け議論

 今般の地域医療構想調整会議では,新型コロナウイルス感染症対応において,医療機関間の連携や役割分担が図られたことを踏まえ,一般医療においても同様の連携や役割分担をさらに推進することを目指し,各地域(構想区域,京都市内においてはブロック)ごとの現状と,2025年や2040年を見据えた医療機能,医療機関間の連携等について,議論が行われることになる。
 2月28日に開催された「京都市域地域医療構想調整会議(全体会議)」には府医から松井会長,谷口副会長,角水理事が出席した。同会議における主な意見は下記のとおり。

  • 一刻を争う疾患や時間的猶予のある疾患など,疾患別に特性があるため,今後の地域医療構想を考える上では,それぞれを機能別に評価していくと,高度急性期の病床数も自ずと変わっていくのではないか。
  • 急性期を脱して回復期・維持期(生活期)になると自宅の近くで完結することが望ましく,ブロック分けする意義はあるが,すべての医療をブロック化するのは無理があるのではないか。
  • 特定機能病院(両大学)は高度急性期,急性期という分け方で考えられないのではないか。京都府全体をカバーする位置づけとし,特定機能病院に押し付けるべきではない患者を救命救急センター等に対応いただくなどの役割分担,病院間連携を検討すべきではないか。
  • 少子高齢社会の到来にともなう高齢者の増加により,年齢構成や疾患の構造も変化することから,医療提供体制を見直す必要があるということが地域医療構想の趣旨である。京都府全体で,それぞれの疾患に対する医療提供体制を考えるためには,「地域医療構想」,「働き方改革」,「医師偏在対策」を一元的に進めなければならない。
  • 今後は,医療機能のある程度の集約化と役割分担を見据えた上で医療提供体制を考える必要がある。民間病院にとっては厳しいテーマを突き付けられているが,高度な医療を担う病院からの下り搬送の受入あるいは上り搬送の起点となるほか,かかりつけ医との入退院に係る連携を進める中で,改めて「在宅療養あんしん病院登録システム」等の活用も促進していきたい。
  • コロナ禍では,入院医療コントロールセンターが重要な役割を果たしたが,5類への移行にともない,今後は病院の地域医療連携室等による連携が大きな役割を担うことになる。
  • 2040年の人口動態を見据え,外来機能と在宅医療の今後のあり方に関する議論が必要になる。かかりつけ医機能のあり方も重要になる。
  • 日医は「かかりつけ医機能」について,患者を地域で,面で支えていく体制を構築していくことが重要だと考えている。かかりつけ医が日常的な健康を支えつつ,必要に応じて紹介できる専門医療機関をかかりつけ医に明示しておくことが重要になる。そのための外来機能報告であり,病床機能報告,在宅療養あんしん病院登録システムであってほしい。
  • 2040年の体制を今構築しても機能しないので,2040年を見据えながら目の前の患者を支えるために,段階的にできることから進めていくという意識を持ってもらいたい。
  • 老老介護や独居高齢者には,在宅医療や介護は重要であり,地域の病院やかかりつけ医のサポート,訪問看護師等の確保が必要となる。
  • 国の動向や地域医療構想調整会議等で検討されている内容は,一般開業医(かかりつけ医)にはあまり伝わってこないと感じており,一般開業医にも伝わるような広報が必要。
  • 今般のコロナ禍の経験から,高齢者施設との連携や意見交換の場をさらに充実させる必要があるのではないか。

 今後,上記の意見を踏まえ,各圏域の地域医療構想調整会議において順次,協議が行われることになる。府医としては,新しい制度に無理やりはめ込むことで却って地域の医療提供体制に不具合が生じることのないよう注視するとともに,地域の特性に応じて役割分担と連携の強化が図られ,地域住民が必要な時に必要な医療・介護を受けることができる地域包括ケアの実現を目指し,働き掛けを続けていく。

改めて地域医療構想とは…
 地域医療構想は,「医療介護総合確保推進法」の成立(2014年6月)を受け,団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり,医療・介護サービスの需要がピークを迎える2025年に向けて,その地域にふさわしいバランスの取れた医療機能の分化と連携を推進し,患者それぞれの状態に応じた良質かつ効果的・効率的な医療提供体制を構築するため,各都道府県において 2025年における医療需要と病床の必要量を推計し,目指すべき医療提供体制を実現するための施策をまとめたもので,京都府においては,2017年3月に「京都府地域包括ケア構想(地域医療ビジョン)」として策定されました。

改めて地域医療構想調整会議とは…
 地域医療構想調整会議とは,構想区域ごとに,診療に関する学識経験者の団体(医師会等),その他の医療関係者,医療保険者等を構成員として,地域課題の整理,関係機関の役割の明確化と連携をはじめとした地域医療構想の進捗の共有と推進施策を検討するための「協議の場」として,医療法にその設置根拠が定められています。
 京都府においては,「丹後」,「中丹」,「南丹」「京都市(全体会議と4ブロック会議)」,「乙訓」,「山城北」,「山城南」を構想区域とし,それぞれの圏域で地域医療構想調整会議を開催することとしています。

2023年4月1日号TOP