コロナ禍中の闘い

西陣健康会 堀川病院 副院長
松本 恭明

 府医の皆様初めまして。昨年より勤務医部会の幹事を仰せつかりました堀川病院の松本と申します。2022年5月に入職して間もなく突然院長先生より幹事指名された際には分不相応であることに加え,医師会活動にも関わってこなかったためどうしたものかと思いつつも現在に至っております。本年1月末に京都医報への執筆をこれも突然依頼され,非常に戸惑っておりますが,勤務医通信の内容は自由とのことでしたので以下雑感を書かせていただきます。
 2020年1月以降COVID-19は世界中で爆発的な感染者数の増加がみられ,本邦でも当初は諸外国に比べ感染者も少なくコントロールされているように見受けられましたが,デルタ株の流行以降は重傷者・死者の増加がうなぎ上りとなり,多くの病院でクラスターが発生,陽性者や濃厚接触者の職員が増加して業務に支障をきたすなど大問題となりました。当院でも2020年当初東日本の永寿総合病院と並んで西日本で最初に院内クラスターが発生し,紙面を賑わせる大きなニュースになってしまいました。その当時は現在ほどCOVID-19についての知見も得られていない中にあって,さらには医療物資の不足する中,文字通り病院スタッフが命がけで診療活動にあたったと聞き及んでおります。心無い罵倒や的外れな非難,病院に火をつけるなどの脅迫。恐怖心の裏返しであったのでしょうがそういった投書がたくさん届き病院スタッフの心を容赦なく傷つけたとのことです。また献身的な治療・看護にあたる中,不幸にして罹患してしまったスタッフ,お子さんや家族にしわ寄せが行ってしまい職を離れざるを得なかったスタッフもおられました。当時COVID-19が原因で亡くなられた入院患者さんは1名にとどまったのは幸いでしたが,大きくマスコミに報じられ話題となり病院のイメージダウンにつながったことは否めません。その中にあっても温かい応援メッセージや手作りの防護服を送ってくださる方々も大勢おられ,捨てる神あれば拾う神ありとは言ったものです。その当時はコロナ補助金もなく,損失は病院丸抱えでかなり厳しい状況でした。その時の傷跡は今もこの病院スタッフに深く残されているように思います。そんな苦難もあって,この病院規模では珍しくいち早く院内で独自にPCRできる環境を整え,入院時などの初期対応は迅速検査(abbott ID-NOW)を駆使し院内への侵入と蔓延を防止してきました。その後昨年の第6・7波でも残念ながら院内クラスターに見舞われましたが,その頃には院内クラスターは珍しいことでもなくなり,抗ウイルス薬の処方も可能となっていたため随分とストレスは軽減されたと思います。感染性の高いオミクロン株の蔓延する第8波の中で院内クラスターを当院が免れているのも2年前の艱難辛苦を乗り越えた結果であり,病院の完全復活を目指してスタッフ一同奮闘していただいております。この文章が皆様の目に触れる頃にはCOVID-19の第8波が収束していることを願っておりますが,残念ながらコロナウイルスはさらに変異し次の第9波,第10波と続くでしょうし,今後強毒化しないとも限りません。コロナウイルスは全身の細胞に感染し障害をきたすといわれること,ワクチンでは予防が困難であることなどこのウイルスに対してはまだまだ未知な部分が多く安心できませんし,感染者が激増した今後問題となるのはコロナ後遺症でしょう。そういったことを議論もされない中,政府は当初のPCR不要論,コロナただの風邪論に加え最近は非科学的なマスク不要論を唱えており,忌まわしい記憶を消し去ろうとしているかのようです。どこかで見たような風景が繰り返されるこの事態を強く憂慮しています。
 最後になりましたが医師会に参加してまだ1年余りの若輩者のため行き届かない点もあるかと存じますが,精一杯務めたく存じますのでご指導ご鞭撻宜しくお願い申し上げます。

Information
病 院 名 社会医療法人 西陣健康会 堀川病院
住 所  京都市上京区堀川通今出川上ル北舟橋町 865 番地
電話番号  075-441-8181
ホームページ  http://www.horikawa-hp.or.jp/index.html

2023年4月1日号TOP