令和4年度 産業医部会総会

最新の労働安全衛生に関する情報を共有

 令和4年度府医産業医部会総会が3月4日(土),府医会館とWEB中継による6カ所のサテライト会場(西京医師会,東山医師会,伏見医師会,福知山医師会,舞鶴医師会,北丹医師会)で開催された。総会には,府医師会館140名,サテライト会場の西京医師会6名,東山医師会5名,伏見医師会18名,福知山医師会13名,舞鶴医師会6名,北丹医師会15名の計203名が出席した。

松井 府医会長

 開会にあたり,松井府医産業医部会長から「新型コロナウイルス感染症について5月8日に2類から5類感染症へと対応の見直しが行われる。コロナウイルスにより職場に新たな課題が生じたが,この見直しにより追加の対応が求められる。以前より働き方改革,メンタルヘルス,仕事と治療の両立支援等に対応いただいてきたが,今後も事業場における産業保健の重要性を伝え,産業医の地位の向上に努めなければならない」と挨拶があり,続いて赤松京都労働局長の代理として岸労働基準部長から祝辞が述べられた。

森口 府医理事

 「令和4年度産業医部会事業報告」では,森口府医産業保健担当理事から今年度の産業医部会幹事会,正副幹事長会,産業保健委員会の活動,研修会開催実績について報告。

京都労働局健康安全課
高木 課長

 「労働安全衛生の動向」では,京都労働局健康安全課・高木課長から,労働安全衛生行政の実施体制と国における産業保健のあり方の検討状況について報告するとともに,産業保健に関する現状と課題として,①職場における健康課題の多様化と深刻化,②法令が想定する産業保健活動と実態の乖離,③健康経営の広がりと経営者の意識の変化,④健康管理を支援するIT技術の拡大―を挙げ,説明がなされた。また,令和5年4月に施行される職場での化学物質規制の見直しのポイントとして,①リスクアセスメント対象物の拡大,②事業場における化学物質の管理体制の強化,③化学物質の危険性・有害性に関する情報の伝達の強化,④リスクアセスメントに基づく自律的な化学物質管理の強化,⑤化学物質の管理状況に関する労使等のモニタリングの強化,⑥化学物質等に係る教育の拡充―を挙げ,改正内容が説明された。

古木 幹事長

 「職域の新型コロナウイルス感染症対策」については,府医産業医部会・古木幹事長より,新型コロナウイルスの流行初期からの出来事を時系列で振り返り,産業保健の課題と今期の府医産業保健委員会で2年にわたり議論してきた諮問事項について,①職場唯一の医療者として正確な情報をどのように確保するか,②事業継続という観点から情報を事業者にどう伝えていくか等の問題に対する提言が示された。また,今後はウイルスの感染ルートを考慮した対策が重要とした上で,換気の指標や換気方法について説明がなされた。

産業医科大学産業生態科学研究所健康開発科学研究室
大和 教授

 特別講演では,産業医科大学産業生態科学研究所健康開発科学研究室の大和浩教授に「『改正健康増進法』と『職場における受動喫煙防止のためのガイドライン』にもとづく職域の喫煙対策」と題し講演いただいた。大和氏は,自身の20〜30代での禁煙失敗歴や禁煙してよかったことなどの体験談を踏まえ,職場におけるニコチン依存症の問題点として,ニコチンに対する身体的依存,タバコに対する心理的依存について解説された。管理者が喫煙者である職場や喫煙率の高い職場における対策と職場の喫煙所を廃止(敷地内禁煙)するための工夫については,安全衛生委員会で繰り返し討議することが重要であるとし,職場における受動喫煙を完全に防止するためには,敷地内禁煙とした上で,敷地周囲での喫煙も禁止する以外に手段はないと言及。加熱式タバコや電子タバコについては,紙巻タバコよりも健康リスクが低いという証拠はなく,いかなる目的であってもその喫煙や使用は推奨されないとした上で,加熱式タバコの喫煙や電子タバコ使用の際には紙巻タバコと同様の二次曝露対策が必要であると提言された。

長村 副幹事長

 喫煙者だけでなく,非喫煙者にも情報を提供し職場全体の問題として取り上げ,喫煙率を最終的にゼロとすることが職場のニコチン依存の根本的な対策であり,その実現に産業医として取組んでいきたいと締めくくられた。

2023年4月15日号TOP