生活保護の医療扶助における医薬品の適正使用の推進について

 昨年の社会保障審議会生活困窮者自立支援および生活保護部会における次期制度見直しに向けた議論におきまして,「医療扶助の重複投与・多剤投与者に対する医薬品の適正使用の取組について,医師・薬剤師等の医療関係者と連携の上で推進していく必要がある」とされました。
 令和5年度当初予算案では,多剤投薬に係る医薬品の適正使用について,福祉事務所において,薬剤師等医療関係者を雇用または業務委託して,多剤服薬になっている者への服薬指導等を行う取組みに対する国庫補助のための経費が盛り込まれており,加えて,この実効性を運用面で担保するために,各自治体宛に取組み推進のための通知が発出されましたので,概要をお知らせします。
 この通知内容につきましては,医療扶助に関する検討会でとりまとめた「医療扶助に関する見直しに向けた整理」(令和4年9月6日)の方向性も踏まえつつ整理されています。
 具体的には,医療扶助においては,昨年9月に大阪で発生した生活保護受給者による向精神薬の不正転売事案を受けて,同年12月に向精神薬の重複処方の適正化に係る取組の徹底についての通知が発出されていますが,向精神薬以外の重複投薬の是正や多剤投与の適正化については広く取組まれていないことから,この適正化を各自治体に認識させるとともに,この取組みを進めていくことを目的に,標準的な取組み内容が記載されています。
 福祉事務所が生活保護等版レセプト管理システムを活用して,重複投薬や不適切な複数種類の医薬品投与がみられる患者を選定した上で,嘱託医や薬剤師等と協議して,必要に応じ,主治医訪問も行いながら,指導対象者を確定します。指導にあたっては,医療関係者と連携することが重要であることから,福祉事務所は地域の実情に応じて,地域の医療機関・薬局,医師会・薬剤師会等の関係機関と連携体制を構築するなど実施体制の確立を図るとされています。
 指導の結果,受診行動や処方種類数等が改善されたかは翌月のレセプトで確認され,改善が認められた場合,減薬や薬剤の変更等による健康影響がないか,経過観察が行われます。改善されていない場合,嘱託医・薬剤師等と再度協議し,必要な指導が行われるとともに,6か月を経過しても改善がみられない場合は,改善されない理由を分析し,今後の援助方針を検討することとなっています。

2023年4月15日号TOP