新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更にともなう医療提供体制の移行および公費支援の具体的内容について

 今般,厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部より各都道府県等宛に標記の事務連絡が発出されました。
 本件は,政府の新型コロナウイルス感染症対策本部決定「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制及び公費支援の見直し等について」(令和5年3月10日)の基本的考え方や外来・入院医療体制,入院調整,各種公費支援等の見直し内容について,具体的に示すものです。
 本号ではその中から診療報酬や公費等に係る部分を中心に抜粋してお知らせします。
 全文は厚労省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00416.html)より,「2023年3月17日新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制の移行及び公費支援の具体的内容について」をご参照ください。

(以下抜粋)
1.位置づけ変更に伴う医療体制の移行に関する基本的な考え方

  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法上の位置づけが5類感染症に変更され,医療提供体制は入院措置を原則とした行政の関与を前提とした限られた医療機関による特別な対応から,幅広い医療機関による自律的な通常の対応に移行していくことになる。
  • このため,新型コロナにこれまで対応してきた医療機関に引き続き対応を求めるとともに,新たな医療機関に参画を促すための取組を重点的に進め,暫定的な診療報酬措置を経て,令和6年4月の診療報酬・介護報酬の同時改定を通じて新型コロナ対応を組み込んだ新たな診療報酬体系による医療提供体制に移行させる。この間,感染拡大が生じうることも想定(※)し,感染拡大への対応や医療提供体制の状況等を検証した上で,その結果に基づき,必要な見直しを行う。
    • 位置づけ変更後の幅広い医療機関で新型コロナに対応する医療提供体制においても,引き続き感染拡大に対応できるようにすることが必要。
  • その際,各都道府県による「移行計画」の策定,設備整備等の支援を通じて,冬の感染拡大に先立ち,対応する医療機関の維持・拡大(外来の拡大や軽症等の入院患者の受入れの拡大)を強力に促す。
  • 入院調整についても,冬の感染拡大に先立ち,「移行計画」などに基づき,まずは軽症・中等症Iの患者から医療機関間による調整の取組を進める。秋以降は,その進捗を踏まえつつ,重症者・中等症IIの患者について医療機関間による調整の取組を進めることを基本に対応する。これにより,病床確保を含む行政による調整から,他の疾病と同様に入院の要否を医療機関が判断し,医療機関間での調整を基本とする仕組みに移行する。
  • 上記の取組を推進するため,国は,「地域包括ケア病棟」等での受入れの促進,医療機関間で病床の状況を共有しやすくする仕組みの普及など必要な支援を行う。

2.外来医療体制
(1)基本的考え方

  • 外来医療体制については,位置づけの変更により,幅広い医療機関が新型コロナの患者の診療に対応する体制へと移行していく。
  • 具体的には,これまで「季節性インフルエンザとの同時流行を想定した新型コロナウイルス感染症に対応する外来医療体制等の整備について(依頼)」(令和4年10月17日付け事務連絡(令和4年11月4日一部改正))等に基づき各都道府県においてこれまで整備してきた外来医療体制も踏まえて,現在コロナ患者の診療に対応している医療機関(令和5年2月8日時点の診療・検査医療機関数は42,490)については,引き続き対応をしていただきつつ,新たにコロナ診療に対応する医療機関を増やしながら移行していくことにより,広く一般的な医療機関(全国で最大約6.4万(※))での対応を目指していくこととなる。
    • インフルエンザ抗原定性検査を外来においてシーズン中,月1回でも算定している医療機関数。
  • その際,外来診療にあたる医療機関での感染対策の見直し,設備整備等への支援,応招義務の整理,医療機関向け啓発資材の作成等,新たに新型コロナの診療に対応する医療機関を増やすための取組を講じることとする。

(2)新型コロナの診療に対応する医療機関を増やすための取組
  ③応招義務の整理

  • 新型コロナウイルス感染症に係る医師等の応招義務については,緊急対応が必要であるか否かなど,個々の事情を総合的に勘案する必要がある。
  • その上で,特定の感染症へのり患等のみを理由とした診療の拒否は,応招義務を定めた医師法(昭和23年法律第201号)第19条第1項及び歯科医師法(昭和23年法律第202号)第19条第1項における診療を拒否する「正当な事由」に該当しないが,現在,新型コロナウイルス感染症は,2類感染症と同様,制度上特定の医療機関で対応すべきとされていることから,その例外とされている。位置づけ変更後は,制度上幅広い医療機関において対応できる体制に移行することから,「正当な事由」に該当しない取扱いに変わることとなる。
  • 具体的には,位置づけ変更後は,患者が発熱や上気道症状を有している又はコロナにり患している若しくはその疑いがあるということのみを理由とした診療の拒否は「正当な事由」に該当しないため,発熱等の症状を有する患者を受け入れるための適切な準備を行うこととし,それでもなお診療が困難な場合には,少なくとも診療可能な医療機関への受診を適切に勧奨すること。

(3)医療機関名の公表の取扱い

  • これまで各都道府県において,発熱患者等の診療又は検査を行う医療機関を「診療・検査医療機関」として指定し,公表する取組を進めてきたところであるが,位置づけの変更後に,幅広い医療機関がコロナ患者の診療に対応する医療提供体制に向けて移行する間においては,発熱等の症状のある患者が検査・診療にアクセスすることができるよう,また,一部の医療機関に患者が集中することを防ぐため,発熱患者等の診療を行う医療機関については,引き続き公表することが必要である。
  • このため,発熱患者等の診療に対応する医療機関(以下「外来対応医療機関」という。)の医療機関名等を都道府県において公表する仕組みは当面継続する。(※)なお,「診療・検査医療機関」から「外来対応医療機関」に名称は変更するが,指定・公表の仕組みについては,これまでの診療・検査医療機関と同様に行うこと。
  • その際,地域における一律の対応として,各都道府県における全ての外来対応医療機関をホームページに公表することとし,患者の選択に資するよう,次の事項を併せて公表することを検討すること。診療時間(特に夜間の対応の可否)や検査体制,日曜祝日の対応の可否,かかりつけ患者以外の患者への対応や小児対応の可否,経口抗ウイルス薬の投与の可否,電話・オンライン診療の対応の可否(可の場合には,当該医療機関のURLを含む。)
  • また,受け入れる患者をかかりつけの患者に限定している外来対応医療機関に対しては,地域の医師会等とも連携の上,患者を限定せずに診療に対応するよう積極的に促していただきたい。なお,診療報酬においては,5月8日以降,受入患者を限定しない形に8月末までに移行することを評価する仕組みとなることにご留意いただきたい。

4.入院調整
(1)基本的考え方

  • コロナ患者の入院先の調整については,現行,感染症法に基づく入院勧告・措置に付随する業務として,各都道府県・保健所設置市・特別区において実施いただいているところであるが,位置づけ変更後は,こうした行政による調整から,他の疾病と同様に入院の要否を医療機関が判断し,医療機関間での調整を基本とする仕組みに移行することになる。
     現行でも,地域の実情に応じて,医療機関間での調整の取組を進めていただいているところであるが,位置づけ変更後の入院調整の大まかな流れとしては,
    • コロナ患者の確定診断を行う外来の医療機関においては,これまで,保健所や都道府県の入院調整本部等を通じて入院先の調整を行っているところ,位置づけ変更後は,他の疾病と同様,当該医療機関において,患者の受入先の医療機関を調整することが必要となり,
    • 入院先の医療機関においても,これまで,行政からの依頼を受けて患者を受け入れているところ,位置づけ変更後は,個々の外来の医療機関からの依頼を受けて患者を受け入れる体制に変わることになる。
  • こうした体制に向けて,以下の(2)入院調整の移行に向けた環境整備(行政による支援等)に掲げる環境整備を行うとともに,(3)入院調整の移行の進め方に掲げる進め方を基本として計画的に移行を進める。

6.宿泊療養・自宅療養の体制
(3)時限的・特例的に認められている電話や情報通信機器を用いた診療等の取扱い

  • 「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」(令和2年4月10日付け事務連絡)に基づく,電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについては,位置づけ変更後においても,引き続き実施する。
  • ただし,当該時限的・特例的な取扱いについては,新型コロナウイルス感染症の感染が収束するまでの間継続するとしているが,具体的には,院内感染のリスクが低減され,患者が安心して医療機関の外来を受診できる頃に終了することを想定している(「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いに関するQ&A」の改定について(その3)」(令和4年9月30日付け事務連絡))。
  • そのため,各医療機関・薬局においては,当該取扱いの終了に向けて,「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(平成30年3月30日付け厚生労働省医政局長通知の別紙),「オンライン服薬指導の実施要領」(令和4年9月30日付け厚生労働省医薬・生活衛生局長通知の別添)に沿ったオンライン診療・オンライン服薬指導を実施する体制を整備されたい。
  • なお,「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」による電話・オンライン診療に係る診療報酬上の特例措置については,令和4年度診療報酬改定において情報通信機器を用いた初診及び再診に対する評価が設けられたことを踏まえ,令和5年5月8日以降,経過措置を置いた上で廃止することを予定しているため,ご留意いただきたい。

8.患者等に対する公費負担の取扱い
(1)外来医療費の自己負担軽減
  ①公費支援の内容

  • 5類感染症への移行(5月8日)後は,新型コロナウイルス感染症の患者が外来で新型コロナウイルス感染症治療薬の処方(薬局での調剤を含む。以下同じ。)を受けた場合,その薬剤費について,全額を公費支援の対象とする。当該薬剤を処方する際の手技料等は支援対象には含まれない。
  • 対象となる新型コロナウイルス感染症治療薬は,他の疾病とのバランスの観点から,これまでに特例承認又は緊急承認された経口薬「ラゲブリオ」,「パキロビッド」,「ゾコーバ」,点滴薬「べクルリー」,中和抗体薬「ゼビュディ」,「ロナプリーブ」,「エバシェルド」に限るものとする。
  • なお,これらの薬剤のうち,国が買い上げ,希望する医療機関等に無償で配分している薬剤については,引き続き,薬剤費は発生しない(配分に当たっての手続き等はそれぞれの薬剤の事務連絡を参照)。また,一般流通が開始し,国による配分が終了した薬剤については,全額を新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の対象として補助する。
  • 本措置については,9月末までの措置とする。その後の本措置の取扱いについては,他の疾病との公平性に加え,国確保分の活用状況や薬価の状況等を踏まえて冬の感染拡大に向けた対応を検討することとしている。

(2)入院医療費の自己負担軽減
  ①公費支援の内容

  • 5類感染症への移行(5月8日)後は,新型コロナウイルス感染症の患者が当該感染症に係る治療のために入院した場合,他の疾病との公平性も考慮し,医療費(窓口負担割合1~3割)や食事代の負担を求めることとなる。ただし,急激な負担増を避けるため,医療保険各制度における月間の高額療養費算定基準額(以下「高額療養費制度の自己負担限度額」という。)から原則2万円を減額した額を自己負担の上限とする措置を講ずる。なお,高額療養費制度の自己負担限度額が2万円に満たない場合にはその額を減額する。
  • 本措置については,9月末までの措置とする。その後については,感染状況等や他の疾患との公平性も考慮しつつ,その必要性を踏まえて取扱いを検討することとしている。
  • 入院中の食事代は,高額療養費の適用対象ではないことから,上記減額の対象とはならない。また,外来療養のみに係る月間の高額療養費算定基準額は,入院療養を対象とするものではないため,上記減額の対象とならない。
  • 入院時に新型コロナウイルス感染症治療薬の処方を受けた場合,その薬剤費について全額を公費支援の対象とするとともに,高額療養費制度の自己負担限度額から原則2万円を減額した額を自己負担の上限とする。この場合の治療薬に対する公費支援の取扱いについては,外来の場合と同様とする。

  ②補助の実施方法

  • 通常,高額療養費制度の自己負担限度額は,被保険者等の所得区分に応じて決定されるが,今般の公費支援により,高額療養費制度の自己負担限度額から公費により減額を行うこととし,当該減額措置後の自己負担額は,表(本号保険だより7頁参照)の通りとする。
  • 減額措置は,高額療養費制度の自己負担限度額に医療費比例額が含まれない場合は2万円を減額することとし,医療費比例額が含まれる場合は,当該医療費比例額に1万円を加えた額を減額することとする。
  • 入院時に新型コロナウイルス感染症治療薬の処方を受けた場合,まずは,その薬剤費について,全額を公費支援の対象とする。その上で,なお残る自己負担について,上記補助の考え方を適用する。

  ③移行に伴う経過的な取扱い

  • 入院医療費の自己負担に対する公費支援については,月単位で行われることも踏まえ,経過的な取扱いを以下のとおり行う。
    (A)4月30日までに入院する場合
    • 従来通り,入院医療費の全額を公費により支援する。
    • 4月中の入院については,従来通り感染症法に基づく負担金により措置する。公費の請求も,従来通り行う。感染症法に基づく入院勧告は,入院期間を定めて行うこととされているが,本場合の入院期間の終期は,4月30日を超えないよう設定されたい。
    • 本場合は,4月30日までの入院についての取扱とする。なお,本場合に該当する者が,5月1日以降も引き続き入院することも考えられるが,その場合,5月中の公費支援は,本場合の取扱ではなく,(B)のとおり取り扱うこととする。
    (B)5月1日から5月7日までに入院する場合
    • 従来通り,入院医療費の全額を公費により支援する。
    • 本場合においては,(C)の場合との実務上の連続性を考慮して,5月1日以降は感染症法に基づく入院勧告は行わないこととする。
    • 本場合は,5月31日までの入院についての取扱とする。なお,本場合に該当する者が,6月1日以降も引き続き入院することも考えられるが,その場合,6月以降の公費支援は,本場合の取扱ではなく,(C)のとおり取り扱うこととする。
    (C)5月8日以降に入院する場合
    • 本節①及び②の取扱により,入院医療費を公費により支援する。
    • 保険請求(レセプト請求)の枠組みを用いた請求の方法については,追って通知する。

(3)検査の自己負担

  • 発熱等の患者に対する検査については,抗原定性検査キットが普及したことや他の疾病との公平性を踏まえ,自己負担分の公費支援は位置づけの変更により終了する。追って,都道府県等が医療機関へ行政検査を委託し患者の自己負担分の公費支援を行う取扱いをお示ししている「新型コロナウイルス感染症に係る行政検査の取扱いについて」(令和2年3月4日付け健感発0304第5号厚生労働省健康局結核感染症課長通知。同年10月14日最終改正。)の改正等を行うので,御承知おきいただきたい。

2023年4月15日号TOP