2023年12月1日号
第54回全国学校保健・学校医大会が10月28日(土)に兵庫県(神戸ポートピアホテル)で開催された。本年は参集型での開催となったが,後日,オンデマンドでの配信も行われる。府医からは11名が参加した。
午前は「からだ・こころ1」,「からだ・こころ2」,「からだ・こころ3」,「耳鼻咽喉科」,「眼科」の5分科会で合計52の演題発表が行われた。府医からは柏井真理子氏による「はぐくもう!こどもの視力『こどもの目の日』記念日制定」の研究発表が行われた。
午後からの式典では,各種の挨拶のあと日医会長表彰が行われ,京都からは岸本純子氏(舞鶴医師会)が晴れて表彰を受賞された。
シンポジウムでは「トラウマインフォームドケア〜子どもたちのトラウマを理解し,社会がどう変わるべきか〜」をテーマに発表とディスカッションが行われ,特別講演では一般社団法人淡路ザル観察公苑理事であり大阪大学人間科学部講師の山田一憲氏から「淡路島のサルから考える寛容性と協力社会」についての講演が行われた。
シンポジウムでは3人の演者による発表があり,まず,兵庫県立尼崎総合医療センター小児科長の毎原敏郎氏から「いじめ・虐待に遭ってきた子どもたち」と題した発表があった。毎原氏からは小児科医の立場から,虐待が子どもに与える影響,虐待と発達障害やいじめとの関係,アタッチメントの問題などを採り上げて,周囲の大人が関わる際にトラウマインフォームドケアの視点を持つことの大切さを説明した。
次に,「子どもへの性暴力〜ワンストップ支援センターの立場から〜」を演題として登壇したNPO法人性暴力被害者支援センター・ひょうご理事であり兵庫県立尼崎総合医療センター産婦人科部長の田口奈緒氏は,子どもにかかわる身近な大人としての学校医の存在の重要性を説いた。
最後に武庫川女子大学心理・社会福祉学部社会福祉学科准教授の大岡由佳氏は「トラウマインフォームドな子どもへの対応」について講演し,子どもや保護者のトラウマに気づくことで私たち自身の子どもたちに向き合う態度が変容し,子どもたちの再トラウマ化が予防できる可能性を示した上で,さらには私たち支援者としての傷つきを振り返ることにもなり,結果的に私たちがバーンアウトしてしまうことを予防することにもつながるとの考えを説明した。
特別講演では,山田氏がニホンザルの社会は極めて厳格な優劣関係に基づいて成り立っているが,淡路島の寛容なニホンザルでは,立場の弱い者が報酬を得ることを,立場の強い者が許容する寛容性が協力行動を成立させていることを示した上で,この淡路島のニホンザルに注目することで寛容で協力的な社会を築くための手がかりを探ることができるとした。
閉会式では来年度の開催県である宮崎県医会長からの挨拶を以て第54回全国学校保健・学校医大会は盛会裏に終了した。