保険医療部通信(第383報) – 令和6年度診療報酬改定の論点<その2>

 診療報酬改定の財源を巡っては,9月に財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会が2024年度予算編成に向けた議論を開始した。その中では,診療所の1受診あたりの医療費の年平均増加率が近年の物価上昇率を超えた水準で急増しているとの分析結果を示した上で,診療報酬の引上げは保険料の引上げなどに繋がり,政府の物価高対策とは矛盾すると指摘したほか,医療機関にはコロナ関連の補助金などによる内部留保の積み上がりを用いて賃上げ等に対応するよう求めた。さらに11月には診療所の初・再診料を引下げ,診療報酬本体のマイナス改定を主張するとともに,リフィル処方箋による適正化効果が未達成であることから,処方箋料の時限的引下げなども提案した。
 財務省のこれらの主張に対して,松本日医会長は即座に反論した。今回の診療報酬改定は,『従来の改定』に,『物価高騰や賃金上昇への対応』『新型コロナへの対応』を加えた3点の論点があり,異次元の改定になることからプラス改定にする必要性を強く主張した。コロナ関連の補助金についても,すべての医療機関が受け取っているわけではなく,また賃上げ等に充てるものではないとした。さらに,診療所の経営は良好だとする財務省の主張に対しても,コロナで収入減が大きかった2020年度をベースに比較することは恣意的だと批判した。リフィル処方箋を推し進める提案についても,個別項目の医療費の予算と決算の乖離をこれまで議論してきたことはないとし,強引な姿勢に疑問を呈した。
 一方,中医協では10月から第2ラウンドとして診療報酬改定項目の具体的な議論が開始された。在宅医療では往診料の適正化が議論されたほか,医療保険と介護保険の同時改定を踏まえた介護支援専門員との連携に関して,地域包括診療加算・料にサービス担当者会議への参加などを要件化することが議論された。
 さらに外来医療では,特定疾患療養管理料等の生活習慣病への対応が議論されたほか,外来管理加算の取り扱いについても議論の俎上に上がった。支払側は外来管理加算の算定要件があいまいで評価の妥当性に疑問を呈し,特定疾患療養管理料や地域包括診療加算等との併算定も理解しがたいとして,廃止を主張した。こうした発言に対して,長島日医常任理事は詳細な診察や丁寧な説明を全否定するもので,全く容認できないと猛反発し,単に対象疾患が同じであれば,医師の労力も提供される医療も同じだからまとめろという議論は暴論だと強く批判した。
 また,入院医療では今回も急性期入院医療の重症度,医療・看護必要度の評価項目の見直しが焦点となっている。支払側からはB項目(患者の状況等)は急性期機能を適切に反映していないとし,急性期全般で評価項目からB項目を廃止することが提案された。診療側は廃止は大きな影響を及ぼすと指摘し,受け皿となる地域包括ケア病棟への影響も考慮して慎重な議論を求めている。
 本号では,9月15日号保険医療部通信「令和6年度診療報酬改定の論点<その1>」の続報として,9月下旬以降の改定関連情報について,主に中医協総会の議論の論点を整理し,お知らせする。

2023年12月1日号TOP