「新型コロナウイルス感染拡大による規制解禁のための具体的条件」,「オンライン資格確認導入の有用性」,「リフィル処方箋」 について議論

 与謝医師会・北丹医師会と府医執行部との懇談会が11月26日(土),Web で開催され,与謝医師会から11名,北丹医師会から6名,府医から8名が出席。「新型コロナウイルス感染拡大による規制解禁のための具体的条件」,「オンライン資格確認導入の有用性」,「リフィル処方箋」をテーマに活発な議論が行われた。

〈注:この記事の内容は11月26日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合がございます〉

新型コロナウイルス感染拡大による規制解禁のための具体的条件について

 府医では,参集での開催を検討する際,①会場の定員(会場内のディスタンスがとれるかどうか),②飛沫防止(会話の際はマスク着用),③会場の換気(会議中も扉を開いておく),④参加者の健康観察,⑤参加は強制しない―の5つの条件を勘案して判断している。
 産業医研修会もこの基準に則り,参集にて開催しているが,感染者数が急増するような局面では,慎重な対応を検討するなど,感染状況も考慮する必要があると考えている。
 懇親会については,これらの基準に加えて,ホテルなどのガイドラインに沿っての開催となるため,席の間にパーティションを立てたり,席の移動などが禁止され,本来の目的である「懇親を深めること」が難しいことから,府医では実施を見合わせている状況である。
 基本的な判断基準としては,3密を避けるために会場の広さを考え,すべて参集することが難しい場合はWeb とのハイブリッド開催とするなど,うまく組み合わせて会議の種類等に応じた開催方法を検討しているが,ウィズコロナの政策下においては,これらの基準の緩和についても検討が必要になると考えている。

オンライン資格確認導入の有用性について

 オンライン資格確認システムは,令和5年4月からの運用開始の義務化が療養担当規則にも記載された一方で,中医協の付帯意見では,「2022年末頃の導入の状況について点検を行い,地域医療に支障を生じる等,やむを得ない場合の必要な対応について,その期限も含め,検討を行うこと」とされており,日医としても導入が困難な様々な事情があることを承知し,最大限のサポートに努める意向を示している。その一環として,日医では「導入できないやむを得ない事情」の具体的事例を収集しているため,日医が国に対して正当かつ有効な主張ができるよう,ぜひ日医への情報提供に協力いただきたい。
 オンライン資格確認の有用性・メリットとしては,患者がマイナカードを持参する場合は,資格情報の自動入力,限度額適用認定証等との連携,診察券との兼用,診療/薬剤情報・特定健診情報の閲覧―などが挙げられるが,従来の保険証では,現時点でその保険証資格が有効か否かの確認,限度額適用認定証等との連携等に限られる。併せて,今後運用が予定されている「電子処方箋管理サービス」では,直近の薬剤情報の閲覧や重複投薬防止の機能が付加される見込みである。
 基本的には導入メリットに地域差はないが,IT に係るインフラ面と地域住民のマイナ保険証の普及率等には地域差が出る可能性があり,いずれも国が責任を持って対応すべき事項として,日医を通じて国に強く対応を要望していく必要がある。
 現在,国が提唱している「医療DX」では,日本の医療分野の情報のあり方を根本から解決するための取組みの1つとして「電子カルテ情報の標準化」が挙げられており,自民党政調会の提言には,電子カルテの普及率を2026年までに80%,2030年までに100%とする目標値が示されている。義務化という文言は使われていないものの,今後の動きを注視していく必要がある。
 府医としては引続き,オンライン資格確認の義務化に対応できない場合の配慮を求めていくとともに,電子カルテの義務化については反対の立場であり,導入できない医療機関が淘汰されることを阻止しなければならないと考えている。
 近年,国の医療政策に係る決定プロセスが従来と異なってきており,日医には医療現場にとって非現実的で望ましくない政策を抑止する力が求められる中で,日医はその実現のためにも組織力強化を重要課題として掲げている。府医としてはその取組みに協力するとともに,会員の先生方と危機感を共有しながら,不合理な政策決定がなされないよう日医を通して働きかけていく考えである。

リフィル処方箋について

 リフィル処方箋は,その導入過程において,安全性よりも利便性が優先されていることから,府医は明確に反対の立場である。この制度は中医協での議論もなく,大臣折衝で決定されたが,その背景には医療費削減を目論む財務省の意向が大きく反映していることは明らかである。
 有効性と安全性が科学的に確認されたもののみが公的保険に導入されるべきであるが,最近は経済効率のみを優先する外部の会議体からの要求が,中医協等における科学的議論なく導入決定されており,この点については今後も強く是正を要望していく考えである。
 現在のリフィル処方箋の利用状況および政策の実効性については,利用が非常に低調なため,リフィル導入の本来の目的ともいうべき財政効果も限定的で,到底意味のある政策とは言えないのが現状である。財務省側はこの結果を受けて,「制度の普及促進に向けて周知・広報を図るべき」としているが,普及しないのはニーズが無いためであり,筋違いの指摘である。
 また,患者に対して責任をもって治療するために,定期的な医学管理のもと投薬すべき,という医療者としての立場は一切変わっていない。府医としては,会員の先生方にはリフィル処方を行うのではなく,引続き定期的な医学管理をしていただくべきだと考えている。

◇質疑応答・意見交換
 意見交換では,オンライン資格確認の導入について,すべての医療機関において簡単に対応できるものではないため,導入にあたってサポート体制の充実を図ることが要望された。地区からは,カードリーダーは手元に届いたものの,その後の接続の段階で業者の対応待ちであるとの事例が報告され,医療機関としての責務を果たした上で,物理的に間に合わなかった場合の救済措置等が打ち出されると安心して導入の準備ができるといった意見が挙がった。また,オンライン資格確認のために,常時オンラインの状態となることで,セキュリティに懸念を示す声も見られた。
 府医からは,国が進める医療DX の最終的な目的は医療ビッグデータの分析であり,すべての情報を入手した上で,国の考える「医療の最適化」,「効率の良い医療」を推し進めようとしているのではないかと推察し,今回のオンライン資格確認システムの導入は今後の全国医療情報プラットフォーム創設への第一歩として位置づけられると説明した。
 一方で,オンライン資格確認の導入により,救急患者の処方内容がわかるようになるなど,医療現場にとって有益なことはあるとして,医療DXの流れが止められないのであれば,うまくこの流れに乗って医療側の要望を通せるように対応していくべきとの指摘もなされた。
 リフィル処方箋については,オンライン診療やリフィル処方を行うことを謳い文句に宣伝し,逆に利用するような医療機関が横行する懸念があるとして,このような危険性がある政策は直ちに見直されるべきとの意見が挙がった。
 府医からは,医療を受ける患者の安全を守るために,必要な提言が聞き入れられ,政策に反映させていくためにも,医政活動が重要であるとして,医師会の組織力を強化し,理念を共有してくことが重要であるとの考えを示した。

保険医療懇談会

※乙訓医師会との懇談会

2023年2月1日号TOP