「オンライン資格確認導入」,「各資格研修会,講習会の参加人数が制限されている場合でのWEB 参加」について議論

 東山医師会と府医執行部との懇談会が12月9日(金)Web で開催され,東山医師会から13名,府医から10名が出席。「オンライン資格確認導入」,「各資格研修会,講習会の参加人数が制限されている場合でのWEB 参加」をテーマに議論が行われた。

オンライン資格確認導入について

~導入経過~
 自民党の政調会が示した「医療DX 令和ビジョン2023」の提言の中に,「全国医療情報プラットフォーム」の創設が掲げられており,オンライン資格確認システムの導入はその基盤として位置付けられている。医療DX は,国が最近強行に推進している政策であり,骨太の方針にも技術革新を通じて医療サービスの効率化・質の向上を図ることが示されている。

~医療DX に対する日医の姿勢~
 日医は,「日医IT 化宣言2016」において,医療におけるIT 技術への基本的姿勢を示しているが,医療DX についても「業務の効率化や適切な情報連携などを進めることで,国民・患者の皆さんに,より安全で質の高い医療を提供するとともに,医療現場の負担を減らすことにつながる」として,必ずしも否定的な見方をしておらず,オンライン資格確認システムにより形成される全国の医療機関を結ぶネットワークは,今後の医療を支える重要な基盤になり得ると肯定的に捉えている。
 一方で,医療提供に混乱・支障が生じては本末転倒であり,政府が示す来年4月からの原則義務化,再来年秋の保険証廃止(マイナ保険証義務化)といった性急なスケジュールで無理に推し進めることについては日医も懸念を示している。

~導入状況~
 医科診療所におけるオンライン資格確認の運用開始率は11月13日時点で23.3%である。業者のキャパオーバーや電子機器の供給不足もあり,来年4月にすべての医療機関で導入が可能か,非常に疑わしい状況であるのは確かである。京都府では,11月27日現在,運用開始をした診療所が461機関で20.4%,病院では94機関で57.3%の運用率となっている。

~府医の方針~
 オンライン資格確認システムは,令和5年4月からの運用開始が療養担当規則にも記載され,義務化されたことを踏まえると,医療機関としては導入に向け努力するしかない状況である。この義務化を契機として,各医療機関には導入の準備を期限内に行うようお願いしており,結果として,業者の対応や機器類の供給不足など物理的な理由で期限に間に合わなかった場合に,不当にペナルティが課されることを回避するためにも,医療機関として導入に向けた協力姿勢を示すことが重要である。
 一方で,中医協の付帯意見では,「令和4年末頃の導入の状況について点検を行い,地域医療に支障を生じる等,やむを得ない場合の必要な対応について,その期限も含め,検討を行うこと」とされており,府医としても取り残される医療機関が無いよう日医を通じて国に配慮を求めていく考えである。日医では「導入できないやむを得ない事情」の具体的事例を収集し,中医協での議論において現状を訴えることとしている。

◇意見交換
 地区からは,訪問診療時の資格確認の方法や情報漏洩の際の責任の所在について意見が出され,システム導入の労力等に加えて,医療機関が今後のランニングコストの負担や,セキュリティのリスクまで負うことに対して疑問が投げかけられた。
 府医としても,電子カルテとの相性の問題など,様々な問題点があることは認識しているとした上で,政府の最終的な目標は全国医療情報プラットフォームの創設であり,今回のオンライン資格確認をそのとっかかりとして推し進めてきているとの見方を示した。

各資格研修会,講習会の参加人数が制限されている場合でのWEB 参加について

~日医認定産業医研修会の現状~
 日医のルールに基づき,①対面方式,②サテライト方式,③WEB を利用した個人参加型方式―で実施されているが,①,②については感染予防対策を施す必要性から,医師会館での実施の場合,ソーシャルディスタンスを確保するため,会議室の定員の半分以下の上限定員を設定している。
 多くは産業保健推進センターが実施しているものであるが,申し込みは先着順のため,すぐに定員が埋まることも多々あるが,キャンセル待ちの対応もされているので,申し込み時にお申し出いただきたい。
 なお,日医では,開催頻度の減少等の状況に鑑み,産業医資格の更新に必要な20単位を確保できない場合の対応として,新型コロナの感染が始まった令和2年2月以降に更新を予定していた産業医を対象に,更新期限を超えても直ちに産業医資格が失効するのではなく,事後的に単位取得することで,引続き産業医活動を可能とする措置がとられている。

~WEB個人参加型方式~
 日医では,今年度から個人参加型WEB 研修システム(日本医師会Web 研修システム)が開始されたものの,取得可能な単位は20単位のうち5単位までというルールになっており,残りの15単位は対面方式もしくはサテライト方式で取得する必要がある。
 また,本番前のテスト実施メニューがないことや,利用にあたり撮影業者が指定されていることに加え,指定された業者の利用費用が約50万円と高額なことから利用が進んでいないのが現状である。近畿各府県でも今年度の利用予定はなしと聞いており,現在はシステムを利用する都道府県医がほぼない状況である。今後運用メニューなどが改善されると,WEB 個人参加も進んでいくものと思われ,府医でも会内の産業医部会で随時検討を行っている。

◇意見交換
 地区からは,単位数が足りない場合の救済措置を利用した場合も,事後的に単位取得した時点からではなく,本来の更新期限から5年間となるため,次回の更新にはより短い期間での単位取得が求められるとして,配慮を求める声が上がった。
 府医からは,新型コロナが収束して元の取り扱いに戻る見通しが立たない中で,次回更新までの期間が短くなる問題点についても日医に対応を求めていくとした。

2023年2月1日号TOP