2023年2月15日号
下京東部医師会と府医執行部との懇談会が 12 月 21 日(水)Web で開催され,下京東部医師会から16 名,府医から8名が出席。「オンライン資格確認の導入」をテーマに議論が行われた。
地区からオンライン資格確認の導入に係る医療機関の負担について,憲法第 29 条第3項に「私有財産は,正当な補償の下に,これを公共のために用ひることができる」と定められているにも関わらず,財務省が補償を嫌悪するのは憲法違反であり,国民の財産権が侵害されているのではないかと問題提起がなされた。
~オンライン資格確認システム導入に関する補助金~
上限 42 万 9,000 円の補助金はあるが,実際の導入費用が上限を超える事例もあり,また導入後の月々のコストにも課題がある。導入に対して,医療情報・システム基盤整備体制充実加算(月1回,初診時のみ)が設定されているが,コストを賄うほどの効果は期待できず,日医は政府に対して「導入・維持に対する十分な財政支援」を求めているところである。
~憲法第 29 条第3項に基づく補償請求の判例~
昭和50年3月13日最高裁判所第一小法廷では,「公共のためにする財産権の制限が社会生活上一般に受忍すべきものとされる限度をこえ,特定の人に対し特別の財産上の犠牲を強いるものである場合には,これについて損失補償に関する規定がなくても,直接憲法 29 条3項を根拠にして,補償請求をすることができないわけではない」とされている。
憲法第 29 条に基づいて直接補償を求めるには,「社会生活上一般に受忍すべきものとされる限度をこえ」,「特定の人に対し特別の財産上の犠牲を強いる」という2つのポイントがあり,憲法を直接の根拠にして補償請求するのは,難しいと考えている。
~医師会としてできること~
実際に裁判を求めるものではなく,導入に至った政策の過程が極めて不当であることを意図した問題提起であり,医師会として政府に十分な財政支援を求めるには,個別の事業として法律に定めてもらう必要があり,日医が政治力を発揮することが非常に重要となる。政府・厚労省との関係,政府内部のパワーバランス等,色々な考慮すべき事項の中で,日医としても慎重な言動を心掛けている。会員の声をしっかりと受け止め,日医に伝え,日医の声が政府に対して十分な影響力を持つよう,府医として連携を取り,支える必要がある。
中医協にて,オンライン資格確認導入の原則義務化にやむを得ない事情で間に合わない施設に対する経過措置の詳細が明らかになり次第,周知する。
~インボイス制度について~
地区から「令和5年 10 月からインボイス制度が開始されるが,医薬品について薬価表には税込みである旨が記載されていないので,逆ザヤで納入されている医薬品があるが,医療が非課税である限り,本来は最終消費者である患者が負担すべきものを医療機関が支払わなければならず,非課税になっている医療機関が課税対象になってしまうのではないか」と質問が出された。
保険診療では,薬価は決まっており,納入価に消費税が乗り,差益がある場合と薬価を超えてしまう場合がある。インボイス制度の導入にかかわらず,ワクチン接種や健診等の自由診療の収入が1,000 万円を超える医療機関が課税業者となる。
医薬品の納入時には医療機関が消費税を負担しているが,診療報酬にその分が含まれているとして,医療機関は非課税業種となっている。今後,消費税率が上がった際に,そのままで良いのかという議論は重ねており,消費税負担という面から課税業種になるべきという議論もあるが,一方で,四段階制のままが良いという意見もある。
予防接種等により,保険診療外の収入が増えて, 1,000 万円を超えると課税業者になるので,四段階制の恩恵を享受できない点については,ご指摘のとおりであり,府医としても整理して示していく。
~保険証の廃止について~
地区から「2024 年秋から保険証が廃止される方針が示されたが,府医としてどのように考えているか」と質問が出された。
府医からは,マイナンバーカードの普及率が上がらない状況下においては,保険者としても直ちに保険証を廃止するという判断は難しいのではないかとの見方を示した上で,政府が期限をきって各保険者に対応を迫る可能性もあるため,引続き注視していく必要があるとした。
~医政活動の重要性について~
地区から「日医が発言権を持って政府に働きかける力が持てるように日医の組織内候補については当地区も応援しているが,今回のような早急な政府決定の要因は何か」と質問が出された。
政策立案に影響力を及ぼすには我々が良い意味で圧力団体になることであるが,日医の組織力の低下があったがために,水面下での意見聴取が行われないままに政策決定がなされている。影響力を果たすためにも,日医の組織力強化が重要であるとして,理解を求めた。
新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的取り扱いについて解説するとともに,個別指導における主な指摘事項について資料提示した。また,療養費同意書の交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書の発行に理解と協力を求めた。