「かかりつけ医の制度化に対する見解」,「特定健診における心電図異常」, 「オンライン資格確認の義務化」について議論

 西京医師会と府医執行部との懇談会が 12 月 23 日(金),Web で開催され,西京医師会から 12 名,府医から9名が出席。「かかりつけ医の制度化に対する見解」,「特定健診における心電図異常」,「オンライン資格確認の義務化」をテーマに議論が行われた。

かかりつけ医の制度化に対する見解について

 新型コロナ蔓延当初,感染拡大を防ぐために施策として受診に一定の制限をかけたにもかかわらず,財務省は「かかりつけ医機能が十分に機能しなかった」と問題をすり替え,「かかりつけ医の制度化」を図るよう主張しているが,その真意はかかりつけ医を登録制とし,患者一人あたりの定額制を導入することによって医療費を抑制することにある。

~かかりつけ医機能が発揮される制度整備に向けて~
 財務省に議論を先導させないためにも多くの関係団体から対案が出される中,日医より「かかりつけ医機能が発揮される制度整備に向けて」の第1報告が発表されたところである。
 内容としては,まず,平時と有事を切り離して考えた上で,有事への備えとして,かかりつけ医のいない国民を含め,地域の中で感染症に対応する医療機関をあらかじめ決めておくことが提唱されている。感染症発生・蔓延時(有事)においてもかかりつけ医が診療を行うことが望ましいが,未知の感染症への対応に際しては,動線分離を含めた感染拡大防止対策が重要である。通常医療を継続しつつ,感染症医療のニーズに対応していくことが必要であり,地域医療体制全体の中で感染症危機時に外来診療や在宅療養等を担う医療機関をあらかじめ明確化しておくことで,平時に受診している医療機関がない者を含め,必要とするときに確実に必要な医療を受けられるようにするとの考えを示している。
 医療機関に向けては,日医かかりつけ医機能研修制度の実施等により,これまでも「かかりつけ医の普及」に努め,かかりつけ医としての役割を果たすべく日々研鑽を重ねてきたことを紹介するとともに,個々の医療機関ではなく,機能分化や連携によって「面」で地域の医療を支えることが重要であるとして,各医療機関は自らが持つ機能を磨くことにより縦糸を伸ばすとともに,さらに他の医療機関との連携を通じて横糸を紡ぎ,「地域における面としてのかかりつけ医機能」を発揮していくことが提言されており,他の医療機関と連携し,急変時においても可能な限り地域におけるネットワークで対応していくことが重要であるとしている。

~「医療機能情報提供制度」の内容充実化と「かかりつけ医機能報告制度」の創設~
 厚労省が示した「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」に向けた骨格案においては,すでに医療法施行規則に記載されている「医療機能情報提供制度」(京都府においては,「京都健康医療よろずネット」が該当)の内容を充実させ,国民に向けてわかりやすい内容に変更することと併せて,各医療機関が患者や国民のニーズに応じた機能を都道府県に報告し,都道府県がその報告内容を受けて地域における充足状況などを公表する「かかりつけ医機能報告制度」を創設することが示されている。

~医療機関同士の連携による「面」としてのかかりつけ医機能の強化に向けて~
 府医としては,かかりつけ医は制度化するのではなく,その機能をより強化することで国民の信頼に応えることが重要であり,診療科や開業,勤務の別にかかわらず,かかりつけ医機能の定義に記されているようなことはすでに多くの医師が実践し,かかりつけ患者であるか否かにかかわらず,その機能を果たしているものと考えている。医師はそれぞれ専門領域を持つ専門医であり,自身の専門領域以外の疾病には,信頼できる専門医療機関への紹介や相談を通じて,自らも知見を広げながら,その都度かかりつけ医としての資質向上を図っており,個々の医療機関がそれぞれの機能に応じた役割を果たすことは,医療機関同士の連携によって地域医療を「面」で支えていることに他ならない。
 そのためにも,現在診療報酬で評価されている地域包括診療加算など,対象疾病が限定されている点などを緩和することで,診療科にかかわらず,より多くの医療機関が算定できるよう改善を求めていく必要があると考えている。

~全世代型社会保障構築会議 報告書~
 令和4年 12 月 16 日に報告書が出され,かかりつけ医機能が発揮される制度整備については,医療機関,患者の双方の手挙げ方式を採用し,患者がかかりつけ医を選択できる形とする見解が示されており,患者の選択に資するよう医療機能情報提供制度の拡充などが求められ,情報提供を充実させていく方針が提示された。これにより,財務省が当初主張していた登録制や患者一人あたりの定額制は否定された形となった。

特定健診における心電図異常について

 地区から,「R波増高不良(ミネソタコード1-2-8)と記載すると,心電図所見欄に『心筋梗塞または障害』との記載がなされ,受診者にも同様の結果通知が届く。明らかに心筋梗塞ではない心電図所見であっても,そのような対応になるのか。受診者にも余計な心配を与えるのではないか」との意見が出された。
 ミネソタコードは,心電図検査の所見を客観的,統一的に表現するために,アメリカのミネソタ大学で発案された所見のコード体系であり,現在は各心電図メーカーが独自にカスタマイズして使用している。
 特定健診委員会では,心電図の結果をミネソタコードで「要指導」,「要医療」が簡単に判別できるようコードをパターン化して区切ることとしたが,別の判定の方が適切な場合,個別健診では医師の判断で調整いただくことも可としている。
 集団健診の場合,患者には,結果のみ通知されるためショッキングな結果が通知されることもあるが,その後の受診や治療に繋げるためにも現行のままで対応したいと考えている。本件については,特定健診委員会で継続的に検討していきたい。

オンライン資格確認の義務化について

 オンライン資格確認システムは,政府が「骨太の方針」の中で示した医療 DX 推進の一環である「全国医療情報プラットフォーム」の基盤として位置づけられている。
 オンライン資格確認をはじめとする「医療DX」は逆らえない時代の流れではあるものの,政府による強引なマイナ保険証,オンライン資格確認の推進は,保険医療機関と患者(国民)双方の現実を軽視したものであり,現状では医療機関のコストに対する手当や導入メリットについても非常に乏しいと言わざるを得ない。
 日医は「日医 IT 化宣言 2016」において,医療における IT技術への基本的姿勢を示しているが,医療 DX については「業務の効率化や適切な情報連携などを進めることで,国民・患者の皆さんに,より安全で質の高い医療を提供するとともに,医療現場の負担を減らすことにつながる」として,必ずしも否定的な見方はしておらず,オンライン資格確認システム自体についても,「このシステムにより形成される全国の医療機関を結ぶネットワークは今後の医療を支える重要な基盤になる」と肯定的に捉え,医療の立場から十分に有用である,との考えを示している。
 しかしながら,医療提供に混乱・支障が生じては本末転倒であり,日医としても政府が示す令和5年4月からのオンライン資格確認システム導入の原則義務化,令和6年の秋の保険証廃止(マイナ保険証義務化)という性急なスケジュールによる強引な進め方には否定的な姿勢を示している。
 現場の医療機関としては,オンライン資格確認の導入が療養担当規則にも記載され,義務化された以上,令和5年4月の運用開始に向けて努力するしかない状況であるが,府医としては日医を通して,取り残される医療機関が無いよう働きかけを続けていく考えである。

~質疑応答~
 地区から,訪問診療においてカードリーダーを持参するには無理がある等課題が多く見受けられるとの指摘があった他,オンライン資格確認導入に対応できない医療機関は診療ができなくなるのではないかと危惧しているとの意見があった。
 府医は,国から示される義務を果たしつつ,日医を通して国に対し課題を提言していくことで,改善を求めることが重要であるとの見解を示した。また,日医とともにオンライン資格確認導入に対応できない医療機関が診療できなくなることがないよう提言していく意向を改めて示した。

2023年2月15日号TOP