2023年1月15日号
昨年9月に大阪市西成区において,生活保護受給者による向精神薬の不正転売事案が発生しました。10か月間で病院を延べ約380回受診し,向精神薬を含む薬剤計約5万3千錠を窓口負担なしで入手し,最も多かった月では26病院を計58回受診し,6,880錠を処方されていたものです。
これを受け,厚労省社会・援護局保護課から各地方自治体宛に,同様の事案が繰り返し発生しないように,医療扶助における向精神薬の重複処方の適正化に係る取組の周知徹底について通知が発出されましたので,お知らせします。
向精神薬の重複処方については,これまでも福祉事務所において,同一月に複数の医療機関から向精神薬を処方されている者の把握や適正受診指導が実施されていますが,今回の事案は医療機関や薬局を次々と変えて受診していたため,福祉事務所から医療機関等への注意喚起が十分に行うことができなかった他,福祉事務所閉庁後に医療券や調剤券を持たずに受診することが多く,医療機関等が予め福祉事務所に医療券などの発行の有無を確認できない状態が多かったという福祉事務所と医療機関等との連携における課題も見受けられました。
今回の通知では,今後さらに,薬剤の総量や頻度が顕著な場合には,適正受診指導や服薬指導・服薬管理を徹底するとともに,改善されない者に対しては必要に応じてより強力な対応も検討するよう各自治体宛に周知徹底されることになりました。
なお,通知の発出にあたり,日医は,そもそも医療機関では他院での投与量等の正確な把握は困難であり,まずは行政がしっかりと患者の動向を把握すべきであることを主張しています。また,閉庁後の受診については,従前から問題意識を持っているのは医療機関側の方であり,まずは福祉事務所が,生活補助受給者に対して,日頃から(緊急時を除く)適切な受診方法などの教育を徹底すべきである等の指摘をしたことから,自治体宛文書に反映されています。
これまでも,生活保護受給者である患者へ向精神薬を処方する場合には,個々の患者の状況を踏まえて投与日数や投与量に注意を払っていただいているところですが,本件の趣旨に鑑み,各地方自治体の福祉事務所等から生活保護受給者の重複処方に係る照会や適正受診指導等の協力依頼等があった際にはご協力くださいますようお願いいたします。