「かかりつけ医の制度化」について議論

 下京西部医師会と府医執行部との懇談会が11月14日(月),Web で開催され,下京西部医師会から8名,府医から7名が出席。「かかりつけ医の制度化」をテーマに議論が行われた。

かかりつけ医の制度化について

~かかりつけ医の制度化に対する府医の見解~
 財務省は,新型コロナウイルス流行当初に感染拡大を防ぐために受診に一定の制限をかけたにもかかわらず,かかりつけ医機能が十分に機能しなかったと主張し,かかりつけ医の制度化を図ろうとしている。これは,かかりつけ医機能の要件を法制上明確化し,かかりつけ医の認定制度の創設,利用者の事前登録を促す仕組みを導入することであり,患者一人あたりの定額制,いわゆる人頭払い制の導入にほかならず,国が医療費をコントロールすることが可能となり,包括払い制の拡大に拍車がかかることが危惧される。
 また,フリーアクセスや出来高払い制を柱としてきた国民皆保険制度を崩壊へと導くことからも,府医はそのような「かかりつけ医の制度化」は明確に反対であり,かかりつけ医機能をより強化することで国民の信頼にこたえることが重要であると考えている。

~日医におけるかかりつけ医の議論~
 日医は11月2日に「地域における面としてのかかりつけ医機能~かかりつけ医機能が発揮される制度整備に向けて~(第1報告)」を公表。これは,かかりつけ医機能に関する日医の考え方について,日医の医療政策会議の下に設置された「かかりつけ医ワーキンググループ」(松井府医会長が副座長)で検討を重ね,さらに日医執行部内で検討し,機関決定されたものです。

◇かかりつけ医の定義
 2013年8月に日医と四病院団体協議会が取りまとめた合同提言において,「なんでも相談できる上,最新の医療情報を熟知して,必要な時には専門医,専門医療機関を紹介でき,身近で頼りになる地域医療,保健,福祉を担う総合的な能力を有する医師」とされている。また,「かかりつけ医」はこの定義を理解し,「かかりつけ医機能」の向上に努めている医師であり,患者のもっとも身近で頼りになる医師として,自ら積極的にその機能を果たしていくとされている。

◇かかりつけ医機能
 「かかりつけ医は,日常行う診療においては,患者の生活背景を把握し,適切な診療及び保健指導を行い,自己の専門性を超えて診療や指導を行えない場合には,地域の医師,医療機関等と協力して解決策を提供する」,次に「地域の医師,医療機関等と必要な情報を共有し,お互いに協力して休日や夜間も患者に対応できる体制を構築する」,「日常行う診療のほかに,地域住民との信頼関係を構築し,健康相談,健診・がん検診,地域保健等の地域における医療を取り巻く社会的活動,行政活動に積極的に参加するとともに保健・介護・福祉関係者との連携を行う。また,地域の高齢者が少しでも長く地域で生活できるよう在宅医療を推進する」,「患者や家族に対して,医療に関する適切かつわかりやすい情報の提供を行う」とされており,すでに多くの会員の先生方にこの機能を実践・発揮いただいているところであるが,引続き自己研鑽に努めていただくとともに,必要に応じた医療提供体制を構築いただければと考えている。

◇有事・平時におけるかかりつけ医
 感染症発生・まん延時における対応について,「コロナ等感染症をはじめとする有事における対応については,日頃から患者のことをよく知るかかりつけ医機能を担う医療機関が診療を行うのが望ましいが,未知の感染症への対応に際しては,動線分離を含めた感染拡大防止対策が重要であり,地域医療全体として通常医療を継続しつつ,急速に増加する感染症医療のニーズに対応していくことが必要である。このため,感染症をはじめとする有事における医療については,地域の医療体制全体の中で感染症危機時に外来診療や在宅療養等を担う医療機関をあらかじめ適切に確保し明確化しておくことで,平時に受診している医療機関がない方を含め,国民が必要とするときに確実に必要な医療を受けられるようにしていくべきである」とされています。

◇医療機能情報提供制度の充実
 国民にわかりやすくかかりつけ医機能を示すために「医療機能情報提供制度」の充実が提案されている(京都の場合は,京都健康医療よろずネットがこれに該当)。
 骨太の方針2022の中で「かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う」と記載され,国においてもその検討がスタートしている。厚労省の会議には日医も参画しており,医療機関がかかりつけ医機能を発揮するためには,「必ずしも一つの医療機関においてかかりつけ医機能のすべてを持たなければならない訳ではなく,診療科に関わらず,それぞれの医療機関が有している機能を発揮しつつ,連携とネットワークによりその他の機能を補完することにより,地域における面としてのかかりつけ医機能が発揮されるもの」との考えを示している。
 「医療機能情報提供制度」の充実・強化を進めていく上で,「医療機関がかかりつけ医機能を発揮」,「かかりつけ医機能への評価の充実・強化」の取組みを総合的に進め,その結果として「地域における面としてのかかりつけ医機能」を発揮していくことが,今後,論点の中心となって協議が進められていくと考えられる。

 その他,2022年の日医会長選挙について,当時の日医の状況など松本新執行部が誕生した経緯を振り返った上で,意見交換が行われた。

2023年1月15日号TOP