府医第 210 回定時代議員会を開催

第4期松井執行部が発足

 府医では6月18日(日),ホテルグランヴィア京都「源氏の間」において代議員96名の出席を得て,第210回定時代議員会を開催した。
 冒頭の松井府医会長の挨拶に続き,議長・副議長が選出され,議長に辻󠄀幸子代議員(伏見),副議長に中野昌彦代議員(下京西部),今出陽一朗代議員(与謝)が就任した。その後,地区からの代表質問ならびにその答弁が行われた。

令和4年度事業報告および決算,任期満了にともなう府医役員の改選等を可決
 議事では,第1号議案として「令和4年度事業報告及び決算」が上程され,松井府医会長からの総括報告,担当副会長から保険医療,地域医療,学術・会員業務,看護専門学校に係る各事業報告,内田府医理事による会計決算報告を受けて,大坪府医監事より監査報告が行われ,賛成多数で可決承認された。
 また,第2号議案では,「会長の任期満了に伴う改選」,第3号議案「理事の任期満了に伴う改選」,第4号議案「監事の任期満了に伴う改選」,第5号議案「裁定委員の任期満了に伴う改選」に第6号議案「選挙管理委員会委員及び予備選挙管理委員会委員の任期満了に伴う選任」,第7号議案「顧問の選任」がそれぞれ上程され,満場一致で可決承認された。
 協議では,畑府医理事から決議案が上程され,採択された(決議文は別掲)。

松井府医会長 挨拶

松井 府医会長

 松井府医会長は挨拶の冒頭で,5月8日に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の取り扱いが「2類相当」から「5類」へと引下げられ,新型コロナの闘いがようやく長いトンネルから抜け出したと述べ,医療現場の最前線で感染リスクと闘いながらも献身的に診療に従事いただいた先生方をはじめ,多くの医療関係者に感謝の意を表した。
 「5類」の位置づけは,季節性インフルエンザや麻疹,風疹等と同じく,感染力や重篤性に基づく総合的な観点から見た危険性が低いと判断されたものであり,今後は国が感染症発生動向調査を行い,その結果等に基づいて必要な情報を国民や医療関係者に提供・公開していくことによって,発生,蔓延を防止すべき感染症とされていると説明。直近の1週間の感染状況は1医療機関あたりの平均患者数は全国平均で5.11人,京都府では4.13人,また,重症病床利用率は2%であり,京都府入院医療コントロールセンターによる入院調整は行われなくなったものの,これまでのところ,大きな混乱はないことを報告した。今後は,最も懸念されるウイルスの変異による重症化に注意しながら,必要な情報提供に努めるとした。
 日医において2022年6月に任期満了にともなう会長選挙が実施され,松本吉郎日医会長のもと新執行部が誕生したことについて触れ,府医としても全力で日医を支えていく考えを示した上で,府医からは城守国斗先生が3期目の常任理事として再選されたことを報告した。
 国政においては,2022年7月に参議院議員選挙が実施され,日医連の推薦を受け立候補した自見はなこ氏が医療・介護関係の当選者の中で最多得票数を獲得し,再選を果たしたことについて各位の支援に謝意を述べた上で,今後ますます厳しくなる医療情勢において,医師会が推薦する候補の得票数が今後の医療界に大きな影響を与えるとして,改めて医政活動の大切さを訴えた。
 松本日医会長が就任時の所信表明の中で「医師会の組織強化」への強い決意を示したことで,全国的に組織力強化への取組みが動き出し,日医が令和5年度から研修医の会費減免期間の延長を決定したことを受けて,府医においても会費減免期間を現行の「医籍登録2年目まで」から「医籍登録5年目まで」に期間延長することを決定するとともに,新たな組織強化への取組みとして,研修医・若手医師との「つながり」をキーワードとして,「KMA.com」を開設したことを報告した。毎年4月に府医が開催する「新研修医総合オリエンテーション」をきっかけに多くの研修医が医師会に加入する一方で,初期研修修了時には勤務先病院の異動や他府県への異動にともなって,その後の連絡が途絶えてしまい,医師会も退会してしまうことが課題であったことから,全国各地,どこにいても「つながり」を継続できる新たな仕組みとして,研修医・若手医師に無料で登録してもらう WEB サイト「KMA.com」の運用を今年のオリエンテーションから開始したことを紹介した。今後,対象を研修医から若手勤務医に広げ,将来の医療を担う先生方に情報発信することを通じて医師会活動を次世代に繋げていきたいと述べ,我々にはその責任があると説明した。
 政府が骨太の方針2022において,かかりつけ医機能の制度化と医療の DX 化を強力に推進する方針を打ち出す中,かかりつけ医・かかりつけ医機能を巡る議論は,「かかりつけ医機能報告の創設」と「医療機能情報提供の拡充」で一定の決着がつき,日医の働きかけにより,全世代社会保障法案では「かかりつけ医」と「かかりつけ医以外の医師」を区別することなく,人頭払いや登録制,認定制も否定されているものの,財務省や経済界の動向は引続き注視していく必要があると指摘。府医としては,かかりつけ医はその機能をより強化することこそが国民の信頼に応えることであり,それは診療科や開業,勤務医の別にかかわらず,個々の医療機関がそれぞれの機能に応じた役割を果たし,医療機関同士の連携によって,地域医療を面で支えることであるとの考えを示し,すべての医師がかかりつけ医機能を発揮するために「かかりつけ医研修制度」の充実を目指すとした。
 医療 DX では,その入口となるオンライン資格確認システムの導入が2023年4月から「原則義務化」されたが,極めて拙速に進められたために医療現場に混乱をもたらす結果となったと振り返り,2024年秋に現在の保険証を廃止して「マイナ保険証」に一本化することが決まったものの,他人の情報が紐づけられるなどトラブルが相次いでいることから,その信頼性に懸念を示した。医療機関の業務効率化や医療機関間の情報共有の推進は質の高い医療の提供に寄与するものであり,府医として反対するものではないが,セキュリティーへの対応や医師の高齢化とデジタルデバイスにより会員が取り残されることのないよう,今後も引続き日医を通じて国に対して強く働きかけていく意向を示した。
 先日,政府が提示した骨太の方針2023の原案では,少子化対策が柱の一つに位置付けられたことに言及し,最重要課題であることは間違いないものの,年3兆5,000億円にのぼる財源の確保が問題であると指摘。政府は「消費税などの増税は行わない」としており,その財源を捻出するためには診療報酬の抑制,医療機関収支の抑制を行うべきとの意見があることに対して,高齢社会が進展する中で医療費の削減はあってはならないことであり,医療介護に人材を確保するためにも2024年の診療報酬改定においてはプラス改定が不可欠であることを日医とともに訴えかけていくと強調した。
 防衛問題,エネルギー問題,気候変動など問題が山積する困難な状況の中にあっても,医療の必要性は変わるものではなく,医療を担うものとして,医師会は一層その必要性を訴えていかなければならないと述べ,会員各位に理解と協力を求め,挨拶を締めくくった。

代表質問

 代表質問では,中京東部,綾部,北丹の3地区から代議員が質問に立ち,直面する課題について質疑が行われた。質問内容および執行部の答弁(概要)は次のとおり。

○新屋 明美 代議員(中京東部)

〔今後の安定的かつ継続的な医療提供体制の維持について〕

新屋 代議員

①診療所経営者の高齢化問題と医療機関の減少,②医療費抑制により医療従事者の報酬が低いこと,③医療機関における従事者の確保が困難―という3つの点から,医療提供体制の維持が危ぶまれている。当地区においても,職員の退職により,通常の診療体制が維持できず,診療時間の短縮を余儀なくされる事例も発生しており,医療機関間の連携や地域の救急医療への影響が懸念される。
 安定的,継続的に医療提供体制が成り立たなくなる状況は,いわゆる医療崩壊の一つとも言えるが,この現状と今後の医療提供体制の維持について府医としての考えを伺いたい。

●濱島府医副会長

濱島 府医副会長

 冒頭に挙げられた3つの課題は,我々としても危惧しており,病院,診療所を問わず大きな問題であると認識している。
 管理者の高齢化の問題は,日本の医師全体をみれば若い医師も増えており,平均年齢はそう変わらないが,定年まで勤める勤務医が増え,勤務医の平均年齢が上がっている一方で,20代で開業する医師もいて,二極化が進んでいると言える。
 後継者がなく,やむなく閉院を余儀なくされる事由として,その根本には,人口減少の曲面に入り,受診患者数そのものが減少していることや,地域によっては開業数過多による競争の問題,さらには医療費の抑制による経営の悪化の問題があると考えている。バブル崩壊後,1990年代後半に高齢者人口の増加とともに経済状況が悪化し,構造改革として政府から医療費抑制を含む基本方針が示され,2000年代には小泉・竹中改革により医療費削減に一層の拍車がかかり,診療報酬が低く抑えられたことが関連している。地域医療提供体制を安定的に維持するためには,診療報酬の増額が最優先課題であると考えている。診療報酬の増額,具体的には基本診療料の引上げのためには,財政中立ではなく新たな財源の確保が必要ではないかと考えている。
 従業員の採用問題については,実際に新型コロナ対応に際して退職した者もあり,新型コロナ診療をしていない医療機関においても,発熱患者が来院する可能性があったため,診療所のスタッフにはストレスが大きかったと推察される。それによる離職もあるが,新型コロナウイルス感染症が落ち着き,各業界において求人が増えたことで全体的な人材不足が生じていることが大きな理由ではないかと考えており,時給を上げてもなかなか応募がない状態が発生している。これは,労働人口の減少をどうするかという問題であり,国を挙げての対策が必要となってくる。当面は子育て世代を中心に,女性が働きやすい環境をつくること等が挙げられるが,政府としても「異次元の少子化対策」を掲げ,取組みが進められているものの,その効果が表れるには数年かかると思われるため,一朝一夕に課題を解決することは困難だと考えている。このような中,政府はさらなる賃金の引上げを各業界にお願いしているが,多くの事業所は自由経済の原則により,コストの増加を製品価格に反映し,消費者の負担増によって賃金アップを実現することができるが,公定価格の診療報酬で運営している医療機関においては価格に転嫁できず,賃金アップ相当分を見出すことは困難である。臨時的な補助金などはあくまで一時的なものであり,安定的な原資としては診療報酬の引上げとその安定化しかないと考えている。この点について,後ほどの協議に「決議案」として上程させていただく。

○米谷 博夫 代議員(綾部)

〔地域医療構想に係る病床機能再編の進捗状況ついて〕

米谷 代議員

 地域医療構想は2018年3月に,急性期病床の削減,回復期病床の大幅増,退院を余儀なくされる患者の受け皿として在宅医療の充実等,一定の方向性が示されたが,その後,病床機能再編の議論は進んでいるのか。また,コロナ禍で一時求められた感染症対応病床の確保は,病床機能の再編に関する方針に何らかの影響を及ぼすのか。

●谷口府医副会長

谷口 府医副会長

 地域医療構想とは,2014年に成立した医療介護総合確保推進法に基づき,医療機関が都道府県知事に病床の医療機能を報告し,都道府県がそれをもとに医療機能ごとに2025年の医療需要と病床の必要量を推計し,地域の医療提供体制のあるべき姿を医療計画の中に「地域医療構想」として策定することが求められたものである。
 2015年度より,各都道府県において構想策定のための地域医療構想調整会議が開催され,2016年度末には京都府においても「京都府地域包括ケア構想」という名称で策定された。
 国のガイドラインにより,地域ごとに2025年の「医療需要」と「病床の必要量」の推計が示されており,その「病床の必要量」については医療機能ごとに,高度急性期,急性期,回復期,慢性期と区分され,それぞれの推計値に近づけることが望ましいとされた。しかし,これには,現場の肌感覚に合わないといった意見や,数字ありきで医療提供体制を検討することに疑問を呈するご意見など,様々な課題が示された。
 そこで京都府では,より地域の実態に沿った議論を行うため,全国で唯一,地域医療構想に明記を求められていた医療機能区分ごとの目標病床数を明記せず,幅を持たせた記載にしたところが特徴的であり,京都府が府医や病院団体の主張を理解してくれた結果であったと自負している。
 各圏域における地域医療構想調整会議は,コロナ直前の2019年までは概ね年2回程度のペースで毎年開催されていたが,2020年に入ると,保健所をはじめとした行政のマンパワーが新型コロナへの対応に追われて逼迫したことから,約2年にわたり調整会議の開催が困難となり議論がストップした状態になっていた。その後,2022年には,WEB 会議の浸透もあって各圏域において調整会議が再開されるようになり,綾部市の中丹地域医療構想調整会議についても2021年度に1回,2022年度は2回開催されている。直近の調整会議では,京都府から外来機能報告制度,紹介受診重点医療機関の創設,医師の働き方改革,公立病院経営強化プランの策定状況,医療機能情報提供制度の全国統一化―等の説明が行われた後,各病院が考えている現状と課題,今後の役割についての情報共有が行われているところである。
 各病院の再編の進捗状況については,資料のとおりである。
 左下,国が2025年に京都府で必要だと推計する数字に対し,右上が地域医療構想を策定した2017年当時の病床機能報告,真ん中が公表されている最新の2021 年の病床機能報告,左上は医療機関が自院の2025年の病床機能を予測した数字である。
 中丹地域では,許可病床数自体が国推計の必要病床数を上回っているため,京都府の方針としては,現行の許可病床数を維持しつつ,急性期を減らし,回復期機能の充実を図ることが目標とされている。
 数字で示すとこのような状況であるが,地域医療構想で重要なことは,地域ごとの調整会議において,患者を面として支えることができる医療提供体制をどのように連携して構築していくかを考えていただくことである。病院側も調整会議において,地域に必要なニーズや医療機能を把握することで,自院が果たすべき役割・機能を検討し,健全な経営判断のもと病床機能が転換され,自然に収れんされていくことが,本当にその地域で必要な医療機能・医療提供体制のあり方に繋がるのではないかと考えている。国が病床機能ごとにキャップをかぶせるべきものではなく,調整会議での議論が左右されてしまうのは本末転倒である。

資料:京都府全体の病床機能報告の推移

 地域によって人口,面積,医療資源に大きな差があり,医療資源がどれぐらいあるか,どういう診療科の先生がいらっしゃるかで工夫も変わってくる。専門医が地域にいない場合は,市や圏域を超えて,助け合うことが鍵となる。病院・病床の再編,急性期を減らして回復期を増やす,というだけではなく,地域のかかりつけ医である診療所の先生方も含めて,地域でどのような機能が足りないのか,といった情報共有,意見交換の中で,不足している機能が明らかになれば,地域医療構想の中で補填をしていかなければならない具体的な根拠にもなるのではないだろうか。
 新たに難しいことを始めるのではなく,地域ごとに協力し,地域の病院と連携を深めながら,足りない場合は圏域外の高度病院とも情報交換や連携を深めていただくことが,面としてのかかりつけ医機能の強化にも繋がると考えている。調整会議においては,ぜひ地域の先生方からもご意見をお願いしたい。
 最後に,「感染症対応病床の確保がこの再編の方針に何らかの影響を与えるのか」というご質問について,ご指摘のとおり,今回の新型コロナウイルス感染症は,地域医療構想で特にやり玉にあげられていた公立・公的病院のあり方に大きな影響を与えた一面もある。極端に言うと,再編計画や縮小の検討を求められていた公立病院が,コロナ受入病院として大きな役割を果たし,また,地域ごとにコロナ受入病院からの下り搬送を受け入れていただく病院をグループ化する動きなど,一般医療や疾患別医療においても応用できるのではないかと考えられる連携の形が立ち上がった部分もある。それらをどのように地域医療構想や医療計画に落とし込んでいくのかも重要であり,かかりつけ医として在宅医療を支える地区医の先生方も,その連携を考える協議の場にご参加いただき,必要な患者に必要な医療が行き渡る病病・病診連携の体制整備にご協力いただきたい。
 なお,今後の新興感染症等への対応のあり方については,昨年12月の改正感染症法により,都道府県が定める「感染症予防計画」を見直し,「医療提供体制」や「検査体制」,「移送体制」,「保健所体制」などを論点に,「連携協議会」を設置し,検討を進めることとなっている。この「連携協議会」には府医からも主導的な立場で参画し,地区医の先生方から現場のご意見を賜りながら,適切な見直しが行われるよう働きかけていく考えであり,引続きのご理解とご協力をお願い申し上げる。

○赤木 重典 代議員(北丹)

〔今後の新興感染症のパンデミックに備えた対応について〕
〔感染拡大期における情報提供・情報発信について〕

赤木 代議員

 新型コロナウイルス感染症は2類から5類に移行し,WHO が緊急事態宣言を終了して事態は大きな節目を迎えたが,新型コロナ対応の経験を踏まえ,府医として,再び起こりうる新興感染症のパンデミックにどのように備え,対応すべきと考えているのか。
 感染拡大期には医療機関の現場で必要とされる診療やワクチン接種に関する情報が不足していたため,会員に対する情報提供についてどのように考えているか。また,医師会としての存在感を示すためにも,マスコミに依存せず,YouTube チャンネルの開設など独自の情報発信ツールを持つ考えはあるか。

●北川府医副会長

北川 府医副会長

 府医として,一連の新型コロナウイルス感染症への対応で生じた様々な問題点について検証し,将来起こりうる新興感染症にどのように備えるかは大変重要なことと認識している。この3年間,少しずつ経験値は積み重ねてきたものの,対応に追われる中で振り返る余裕はなかったが,5類になったこのタイミングで検証し,記憶・記録ともに残し,次に備えることが非常に重要であると考える。
 国は,次期第8次医療計画で,新興感染症への対応を事業として追加するとしており,また,都道府県は予防計画を策定することになっている。厚労省の検討会の資料では,都道府県等が定める数値目標について,「新型コロナ対応における最大値の体制を確保していくことを目安とする」とされ,これには入院関係の数値はもちろん,発熱外来を担う医療機関数,自宅・宿泊施設・高齢者施設における療養者等に医療を提供する機関数も含まれる。簡単に「最大値の数」としているが,国はそこに至るまでのプロセスを一体どこまで理解しているのか。医療従事者,医療機関,医師会,行政などの苦悩や葛藤,どれだけの汗を流してきたか,押し寄せる感染拡大の波の中で地域における医療がどのような状況になり,その中でレジリエンスはどのようにして高まってきたのか。これらをしっかり振り返ってはじめて,その数字の再現性,実効性が得られるのではないかと強く思うところである。
 今後の新興感染症の発生や,新型コロナもさらに重大な展開となる可能性もある中で,このインパクトの強い時期をチャンスと捉えて検証し,次へ備えなければならない。そのために必要なのは,特に医師会が深く関わった外来診療,自宅や宿泊施設療養者の健康観察,高齢者施設での医療,ワクチン接種などについて,自ら検証することであり,医師会にしかできない検証があると考える。行政に対して情報の提供を求めるとともに,必要に応じて会員向け,また地区医向けにアンケート調査を実施したいと考えている。これは,府医による問題点の検証のためだけでなく,個々の医療機関での振り返りや,地区医での振り返りの手助けになればとの思いもある。コロナ禍ではなかなか掴めなかった自身の医療機関の立ち位置の確認,各地区での情報を共有すること,例えば,赤木代議員ご所属の北丹医師会,京丹後市ではどのような事態になり,医療従事者が少ない中で医師会の先生方がどのように対応されたのかをご教示いただくことが,今後の備えを考えるために不可欠だと考えている。
 検証のためのもう一つのツールとして,禹府医感染症対策担当理事が激務の中,「京都医報」地域医療部通信に「新型コロナウイルス関連情報」として,第52報にわたる総計1,000ページを超える記録を残している。これは会員に情報を伝える目的で発信されたものであるが,次に備えるための資料として記録されたものでもあり,他にはないこの非常に貴重な資料を活用したいと考えている。
 検証の必要性について,別の視点として,今回のコロナ禍で多くの会員,地区医,専門医会などの協力により行った,宿泊療養施設での健康観察をはじめとする様々な事業が新興感染症対策だけでなく,今後必要とされる,面で支えるかかりつけ医機能,地域包括ケアなど平時における医療を考えるためにも有用だと考えている。
 次に,情報に関する問題点であるが,一点目は会員に対する情報提供について,二点目は医師会の情報発信についてである。
 府医では,京都府での一例目発生から約1週間後,2020年2月7日より,「新型コロナウイルス感染症対策チーム」を会内に設置し,京都医報,会員メーリングリスト,FAX 情報により情報提供を行ってきた。また,同年3月には府医ホームページに「新型コロナ関連特設サイト」を設置し,随時,最新情報の提供に努めてきた。さらには,地区医との連絡調整として,「感染症対策担当理事連絡協議会」を頻回に開催し,情報の共有,地区での周知等を依頼し,一般会員の先生方にもご聴講いただけるよう配信も行った。新型コロナ関係の診療報酬やワクチン接種に係る費用の請求なども含め,なるべくわかりやすく情報提供するとともに,個々の医療機関からの質問に対しては電話や個別メールで回答するように努めてきた。しかしながら,国からの通知が発出された後,行政との調整・確認の部分でどうしても時間を要し,会員各位へお伝えするまでにタイムラグが生じるなど,情報提供上の課題も浮き彫りになった。今後,検証して改善を図っていきたいと考えている。
 ウイルスに関する情報については,未知のウイルス故の困難さがあるものの,府医では,2020年2月11日に府医会館にて,京都市立病院の清水恒広先生による講演,動画配信,2021年の京都医学会では,京都大学の西浦博先生をはじめ,専門家をお呼びして講演を行ったほか,「京都医報」において厚労省の検討資料や研究者からの情報をピックアップし,最新情報の提供に努めた。ワクチン情報については,行政と協力して適切なワクチン接種に必要な情報を提供し,特に誤接種が起きないよう,またアナフィラキシーなどの副反応出現時に対応できるよう情報提供に注力した。その後も,「京都医報」においてギランバレー症候群,心筋炎・心嚢炎などへの注意喚起や,厚労省の検討会資料,国内外の研究情報を紹介してきたところである。これからも,医療現場で先生方が患者への説明に際して手助けとなる情報提供に努めたいと考えている。
 社会に向けた情報発信については,府医ではこれまで,「BeWell」など紙媒体による健康情報の提供,「今の医療,こんなんで委員会」のような双方向性のシンポジウムの開催等を通じて情報発信に努めてきた。YouTube での配信については,医師会関係では,日医や東京都医など大きな組織が定例記者会見を発信しているが,視聴回数は少ないようである。医療に関する情報を正しく,また,医師会の意見を一般の方々に広く知ってもらうために,SNS の活用は有効だと思われるものの,発信するための労力,発信後の対応なども含めて,府医では十分な検討が必要だと考えており,特に新型コロナ感染症における情報発信については,リスクコミュニケーションなどを学ぶ必要があり,今後の課題として,検討していきたいと考えている。

2024年度のトリプル改定に向けて,必要な財源の確保を要望
 続いて行われた協議では,国民が安心して医療・介護を受けることができるよう,2024年度の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬のトリプル改定に向けて必要な財源を確保することを政府に強く求める決議が採択された。

決 議

 政府は昨今の諸物価の上昇や人手不足に対応すべく賃金の引上げを企業に要請し,そのための様々な補助を講じている。
 しかし医療機関においては,診療報酬という公定価格で運営しているため経費の増加分を他の財源に求めることは困難である。
 政府は社会保障関係費について依然として「実質的な伸びを高齢化による自然増分に相当する伸びに抑える」ことを基本方針としており,先進医療や高額薬剤などによる医療費および医業経営費の増加に対する財源が考慮されていない。
 少子化対策とその他の社会保障対策を十分に行うことはいずれも重要で,そのためにはともに十分な予算の配分が必要である。一方を削って他方に充当するようないわゆる「財政中立」を図るものでは決してない。
 全就業者の約12%に当たる医療・介護分野の就業者の生活を守り,国民が安心して医療・介護を受けることができるよう,2024年度の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬のトリプル改定に向けて必要な財源を確保することを政府に強く求める。

2023年6月18日

京都府医師会 第210回定時代議員会

退任役員の尽力に謝意を示し,感謝状・記念品を贈呈
 本代議員会をもって退任となった北川靖副会長,小野晋司副会長,髙橋滋理事,飯田明男理事,橋本京三監事の5名の先生方に対し,長きにわたる府医の活動へのご尽力とその功績を称え,松井府医会長から労いの言葉とともに感謝状と記念品が贈呈された。

2023年7月15日号TOP