2023年7月15日号
「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」が5月19日に公布され,順次施行することとされた。 改正の趣旨は,全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するため,出産育児一時金に係る後期高齢者医療制度からの支援金の導入,後期高齢者医療制度における後期高齢者負担率の見直し,前期財政調整制度における報酬調整の導入,医療費適正化計画の実効性の確保のための見直し,かかりつけ医機能が発揮される制度整備,市町村による介護情報の収集・提供等に係る事業の創設等の措置を講ずることである。 本号では,その中からかかりつけ医機能が発揮される制度整備についてその概要等をお知らせする。
かかりつけ医機能が発揮される制度整備は,国民・患者が,そのニーズに応じてかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるための情報提供を強化し,地域の実情に応じて,各医療機関が機能や専門性に応じて連携しつつ,自らが担うかかりつけ医機能の内容を強化することで,地域において必要なかかりつけ医機能を確保するための制度整備を行うこととされている。 そのために(1)医療機能情報提供制度の刷新(令和6年4月施行),(2)かかりつけ医機能報告の創設(令和7年4月施行),(3)患者に対する説明(令和7年4月施行)が計画されている。 医療情報機能提供制度の刷新は,国民・患者へのわかりやすい情報提供を実現するために項目が見直される予定で,今後有識者会議で検討される。 かかりつけ医機能報告は,医療機関が都道府県知事に慢性疾患を有する高齢者その他の継続的に医療を必要とする者を地域で支えるために必要なかかりつけ医機能を報告するものである。都道府県知事は,報告した医療機関が,かかりつけ医機能の確保に係る体制を有することを確認し,外来医療に関する地域の関係者との協議の場に報告するとともに,公表することとなる。 なお,報告はあくまで地域における現状の把握を目的とするものであり,都道府県知事がかかりつけ医を認定するものではない。また,多様なかかりつけ医機能を一つの医療機関がすべて一律に担うことを求めるものでもない。 本内容は,日医が昨年提言していた内容に沿うものであり,財務省が主張していた①法制上の明確化,②認定制,③事前登録・医療情報登録とはなっていない。 府医では,かかりつけ医は「制度化」するのではなく,その機能をより強化することこそが国民の信頼に応えることであり,それは診療科や開業,勤務医の別にかかわらず,個々の医療機関がそれぞれの機能に応じた役割を果たし,医療機関同士の連携によって,地域医療を面で支えることが重要と考えている。引続き国民皆保険制度の根幹をなすフリーアクセスの堅持を主張していく。
※以下,日医定例記者会見資料
*日本医師会定例記者会見「全世代社会保障法案の閣議決定を受けて」(令和5年2月15日)
https://www.med.or.jp/nichiionline/article/011041.html*日本医師会定例記者会見「全世代社会保障法案の閣議決定を受けて」(令和5年2月15日)
https://www.med.or.jp/nichiionline/article/011041.html