2023年5月15日号
3月19日(日),府医会館からのライブ配信にて「第2回医療安全講演会」を開催し,会員医師等計250名が視聴した。冒頭,挨拶に立った小野府医副会長は,採血での痛みやしびれは医療者が頻回に遭遇する医療行為であり,その対応は最も身近な課題といえ,万が一疼痛などをきたす事例に遭遇した際の丁寧な対応も重要になることから,今回のように幅広い職種から研修を受けられる機会は貴重になるとして,挨拶を締めくくった。
講演では,はじめに講師2名による基調講演を実施。一人目は,採血実施頻度の高い健診機関から京都工場保健会診療所看護師の玉村祐美子氏,そして二人目は,法曹界から府医医療安全対策委員会委員で弁護士の廣石阿津沙氏の2名に発表いただいた。玉村氏は,健診機関は多くの採血を行うため,一定の頻度で,痛みやしびれが発生すると考えており,その中で健診を受けた方の不安を増長しないように適切な声かけに努めたり,翼状針採血に切り替えるなどの対策やチェックリストを用いた院内教育の取組みなどについて説明があった。廣石氏からは,弁護士として神経損傷疑いに関わる訴訟を行った経験から,患者からの痛みの訴えに対しては,重く受け止めて,しっかりとその声に耳を傾けることの重要性を訴えた。
続いて,京都大学医学部附属病院麻酔科で疼痛緩和を専門とされる加藤果林氏が登壇。同院では過去に採血後の痛みに関する診察を数件行っており,治療では漢方薬なども使いながら,概ね数か月で治癒した実績もあることから,痛み・しびれの症状のある場合には,ペインクリニックの受診も検討いただきたいと,積極的な利用を訴えた。
そして最後は,府医医療安全対策委員会委員で整形外科医の山下琢氏から,今期委員会で作成したリーフレット(名称「採血・血管確保時の痛み・しびれへの対応」)の内容とその活用方法を紹介した。リーフレットでは,痛み・しびれを起こしにくい部位からの採血や血管確保を勧めるとともに,症状が出た場合にはリーフレットのフロチャートを活用し,あらかじめ対応を決めておき,発生時に適切な対応をとれる準備が必要と説明した。また,痛みの訴えには,心理的要因から起こることもあり,すべて真摯に聞くことが重要であると述べた。
今回の講演会で紹介したリーフレット(採血・血管確保時の痛み・しびれへの対応)は,4月15日号京都医報にて全会員へ配布しています。また府医ホームページから PDF データのダウンロードも可能ですので,是非ご活用ください(ホームページ掲載場所:京都府医師会ホームページトップ → 医療安全対策 https://www.kyoto.med.or.jp/member/medical/index.shtml)。
<担当事務局>
京都府医師会 医療安全課 TEL:075-354-6505