「高齢医師の診療所への技術的援助」,「文献検索のあり方」,「レセプトへの記載」,「マイナンバーカード保険証」について議論

 右京医師会と府医執行部との懇談会が2月14日(火)右京医師会館で開催され,右京医師会から8名,府医から5名が出席。「高齢医師の診療所への技術的援助」,「文献検索のあり方」,「レセプトへの記載」,「マイナンバーカード保険証」をテーマに議論が行われた。

高齢医師の診療所への技術的援助について

 オンライン資格確認の導入が4月から義務化されるが,厚労省が示した「やむを得ない事情」に該当する場合は,ポータルサイトを通じて届け出ることで経過措置が適用される。医師が高齢のため対応できないような場合も,「その他特に困難な事情」の対象となるが,いずれにしても経過措置の適用には3月末までに届出が必要である。
 デジタル環境の技術的支援について,現在の府医の体制では,高齢の医師を個別にサポートすることは難しいが,引続き情報提供に努め,いただいた意見は日医とも共有していきたい。
 オンライン資格確認の導入にあたっては,事業者(ベンダー)に依頼が必要であるが,重要なのは事業者が医療機関に対して適切な対応を行うことである。国が医療 DX を国策として推進している以上,国はその技術面の実働を担っている事業者をしっかりと管理監督する責任がある。この点は日医を通じて今後も国へ訴えていきたいと考えている。

文献検索のあり方について

 現在は府医会館図書室において提供している学術的な論文等,文献検索サービスについて,Web 上でのシステム利用やデータによる論文の提供は,システムの契約上,不可とされており,対応が難しいところであるが,会員の利便性向上の観点から,できることを検討していきたい。
 また,今後の検索システムの使用範囲の拡大については,コストと利用件数の費用対効果を考えて検討することになるが,ご提案いただいたとおり,府医が開業医の文献検索について利便性の向上を図ることは,若い医師の研究やキャリア形成の支援につながり,今後の医師会としての組織強化を考えた際に会員サービスとして良いアピールポイントにつながると考えられる。組織強化につながるコンテンツの1つとして前向きに検討していきたい。

レセプトへの記載について

 レセプトへのコメント記載については,平成30年度診療報酬改定時にデータの利活用推進の観点から,フリーテキストから選択式への移行が始まり,令和2年度診療報酬改定では,医療従事者の負担軽減,業務効率化の観点から選択式へのさらなる拡充が図られ,95%が選択式に移行された経過がある。しかし,選択式になったものの,コメント詳記を要する点数の項目数が増え,医療従事者の負担が増加しているのはご指摘のとおりである。年々レセプト請求が煩雑になっている問題は府医でも認識しており,医療機関の診察や業務に支障をきたすようでは本末転倒である。
 日医も,医療 DX は,国民・患者により安全で質の高い医療を提供するとともに,医療現場の負担軽減をもたらすものであるべきと主張している。現在,国は医療 DX を推進しており,デジタル時代に対応した診療報酬改定 DX も進めることとなっているが,医療機関のレセプト請求が簡便になるような取組みとなるかどうか状況を注視するとともに,日医に意見を伝えていく。

マイナンバーカード保険証について

 政府は,従来の保険証を令和6年秋に原則廃止し,マイナンバーカードと保険証を一体化(マイナ保険証)する方針を示した。また,現行の保険証廃止後,マイナ保険証を持たない人には「資格証明書」を発行するとしているが,有料化を懸念する声が出ている。
 マイナ保険証のメリットとしては,資格情報の自動入力,限度額適用認定証等との連携,診察券として兼用,診療・薬剤・特定健診等情報の閲覧などが挙げられ,従来の保険証よりできることが増える点である。導入初期は不慣れな患者への対応もあり,受付窓口の混乱が懸念される一方,レセコン等への入力の手間も一定省くことができると考えられる。様々な課題が予見されるが,逐一日医に状況を伝え,改善につなげていきたい。
 マイナ保険証を中心に運用する医療保険のあり方がどうなるか,今のところ全体像は見えないが,医師会の立場としては,国民が取り残されることなく,平等に安心して医療を受けられる国民皆保険制度の本質を見失うことが無いよう,国の動きを注視しつつ,対応していきたいと考えている。

質疑応答・意見交換

 意見交換では,オンライン資格確認に対して,経過措置に関する確認や利便性に疑問を呈する意見が多くみられた。
 また,かかりつけ医の制度化について懸念を示す意見があったが,医師への過度な負担増加に繋がらないよう日医が対応していることと併せて,今後のかかりつけ医機能においては連携が重要であり,自身の専門領域以外の疾病には信頼できる専門医療機関へ紹介するなど,個々の医療機関がそれぞれの機能に応じた役割を果たすことで,医療機関同士の連携によって地域医療を支え「面」としてのかかりつけ医機能を強化していくことが重要であるとした。

2023年5月15日号TOP