2023年9月1日号
設問 1 抗血栓薬内服中の患者に対する内視鏡診療において,正しい対応はどれか?
すべて選べ。
① 脳梗塞の既往があるアスピリン内服中の患者に対して,休薬せずに胃から生検を行った。
② 冠動脈ステント留置2ヶ月後で抗血小板薬2剤内服中の患者の貧血精査のため,3日前よりすべて休薬して上部消化管内視鏡検査を行った。
③ 心原性脳梗塞の既往があるワルファリン内服中の患者に対して,3日前より休薬してヘパリン化を行った後に,早期胃癌の内視鏡治療を行った。
④ DOAC(直接経口抗凝固薬)服用中の胃癌が疑われる患者に,検査当日に休薬を指示して,上部消化管内視鏡検査を行った。
解答 1 ①,④
解説 1 2012年に「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」(日本消化器内視鏡学会雑誌 Vol.54(7),Jul.2012)が発刊され,2017年に「直接経口抗凝固薬(DOAC)を含めた抗凝固薬に関する追補版(同 Vol.59(7),Jul.2017)が発刊された。しかし,各ステートメントに関してはエビデンスレベルが不十分なものが多く,今後は臨床現場でのさらなる検証が必要である。
①については,ステートメント3に準じて,休薬による血栓塞栓症のハイリスク群に対して,アスピリン単剤服用下における出血低危険度手技の生検は妥当と考えられる。
②については,ステートメント2に準じて,通常の内視鏡検査は休薬なく施行可能である。寧ろ休薬することは血栓塞栓症のハイリスク群に対して危険である。
③については,追補版ステートメント2に準じて,ヘパリン化は術後出血リスクを上げる可能性があり行うべきではない。ヘパリン置換の代わりに,INR が治療域であればワルファリン継続下で施行あるいは DOAC への一時的変更し,治療当日休薬の上,施行が望ましい。
④については,追補版ステートメント5に準じて,継続下に生検を含めて施行可能と考えられる。あるいはステートメント6に準じて当日休薬で検査を行い,遅くとも翌日までに再開とする。
設問 2 胃癌の内視鏡治療において,正しいのはどれか?すべて選べ。
① 現在本邦では,早期癌の治療法として半数以上は内視鏡的粘膜切除術(EMR)が選択されている。
② 潰瘍瘢痕を有する1cm の未分化型粘膜内癌は外科手術が標準治療である。
③ 83歳の内視鏡治療後の病理診断で,一括切除かつ粘膜内癌,中分化型腺癌,30×25mm,潰瘍瘢痕なし,脈管侵襲なしであったが,側方断端陽性であったため,外科手術の方針とした。
④ 72歳の内視鏡治療後の病理診断で,40×35mm の分化型腺癌で潰瘍所見なく,側方・深部断端陰性,粘膜下層浸潤距離 400µm,脈管侵襲なしであったため,追加外科手術を行った。
解答 2 ②,④
解説 2 「胃癌に対するESD/EMRガイドライン(第2版)」(日本消化器内視鏡学会雑誌Vol.62(2),Feb.2020)および「胃癌治療ガイドライン(2021年7月改訂第6版)」を参照。
①については,Suzuki らによる Short-term outcomes of multicenter prospective cohort study of gastric endoscopic resection:ʻReal-world evidenceʼ in Japan(Dig Endosc. 2019 Jan;31(1):30-39.)によると 2010 ~ 2012 年の全国41施設において,10,821病変の早期胃癌の内視鏡治療の 99%は内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)で行われていた。よって,現在ではより多くの施設においても ESD は標準治療として選択されていると思われる。
②については,内視鏡治療の適応はリンパ節転移の危険性が1% 未満と推定され,外科的胃切除と同等の長期成績が得られている病変が対象となる。未分化型癌においては,JCOG1009/1010 試験の結果を受けて,「長径2cm 以下の UL0 の cT1a」が内視鏡治療の絶対適応病変とされている。しかしながら現在進行中の JCOG1902 試験「早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術の高齢者適応に関する第Ⅲ相単群検証的試験」では高齢者は手術合併症や他病死のリスクが高いことを考慮し,リンパ節転移の危険性を 10% まで拡大した病変までを対象としている。本選択肢もこの対象となるが,今後の結果によっては内視鏡治療の拡大適応になることも考えられる。
③については,eCuraC-1 に該当する。ガイドラインのフローチャートでは,対応として再 ESD,追加外科手術,慎重な経過観察,焼灼術が推奨されている。元が粘膜内病変であることから遺残していたとしても粘膜内病変である可能性が高く,83歳という年齢を考慮すると侵襲の大きい外科手術を選択するよりは,再度内視鏡治療(ESD)を行うのが望ましいと考えられる。
④については,3cm を越える pT1b 癌で eCuraC-2 であったため,72歳という年齢からも追加外科手術は妥当と思われる。
設問 1 骨粗鬆症性椎体骨折に対する保存療法は,何%が予後不良となるか?
① ほぼ0%
② 約 20%
③ 約 40%
解答 1 ②
設問 2 骨粗鬆症性椎体骨折に対する経皮的椎体形成術(BKP)は,複数個所同時に施行できる。
○か×か。
解答 2 ×
設問 1 COPD 診断と治療のためのガイドライン第6版における管理目標のうち正しいものは次のうちどれか。
① 症状および ADL の改善
② 運動耐容能と身体活動性の向上
③ 増悪の予防
④ 疾患進行の抑制および生命予後の延長
⑤ 全身併存症および肺合併の予防と治療
解答 1 ③
解説 1 他は以下のとおり。
・症状および QOL の改善
・運動耐容能と身体活動性の向上および維持
・疾患進行の抑制および健康寿命の延長
設問 2 「COVID-19 流行期日常診療における慢性閉塞性肺疾患(COPD)の作業診断と管理手順」で重視されている項目は次のうちどれか。
① 呼吸機能検査
② 自覚症状
③ 増悪の既往
④ 胸部 CT
⑤ 喀痰検査
解答 2 ②
解説 2 他は以下のとおり。
・喫煙歴
・年齢
・喘息の既往 胸部X線,血液検査など
設問 1 一度リハビリで上がった能力は永続的である?
解答 1 リハビリを続けないと劣化する。続けても多少効果は落ちる。
設問 2 リハビリの効果の有効性が減弱した時はどうする?
解答 2 次の一手が必要。例えば SABA のアシストユースがつかえる。
設問 3 COPD 患者の睡眠は?
解答 3 通常より問題点が多く,また,睡眠薬のマイナス効果も強く積極的な関与が必要である。
設問 1 アルツハイマー病の病態の最上流にある病理学的変化は何か?
解答 1 アミロイドβの蓄積(老人斑)
設問 2 認知症の発症抑制・進行予防のために有効な介入の例を挙げよ。
解答 2 生活習慣病(高血圧症,糖尿病,脂質異常症)の介入,運動の勧奨,睡眠や食事指導など
設問 3 幼少期からできる認知症への対策は何か?
解答 3 頭部外傷に気を付ける,認知予備能の涵養(読書や読み聞かせなど),良い生活習慣を身に着けさせる,など
設問 1 骨粗鬆症に対するテリパラチド投与は四肢骨の骨密度上昇が期待しやすいか?
解答 1 No
腰椎に比較して皮質骨の割合が高い四肢骨の骨密度上昇は乏しい。
設問 2 ロモソズマブは他の骨形成促進剤より骨折治癒が期待しやすいか?
解答 2 No
骨吸収抑制作用のあるロモソズマブは一次仮骨の吸収や仮骨リモデリングも抑制するため,元の構造,強度への復元はむしろ遅くなる。
設問 1 THA 周術期の感染対策で最も関連性が低いものはどれか?
① 術前の CRP 高値
② 機種選択
③ ドレーピング
④ 手術時間の短縮
⑤ 術中洗浄
解答 1 ②
設問 2 THA の機種選択で最も重要度が低いものはどれか?
① 実績
② 手術の容易さ
③ 術中・術後骨折の頻度
④ 骨への荷重伝達
⑤ 抜去の容易さ
解答 2 ②
設問 3 THA 術後の満足度に影響度が最も低いものはどれか?
① 術前の期待度
② 術後の脚長差
③ 術後 Xp の完成度
④ 術後の痛み
⑤ 性格特性
解答 3 ③
設問 1 昼食後,すぐに来院して採血した患者がいた。この患者のトリグリセライドの脂質管理目標値はいくつか?
解答 1 175mg/dL 未満
設問 2 アテローム血栓性梗塞の既往歴がある糖尿病患者の LDL コレステロールの管理目標値はいくつか?
解答 2 70mg/dL 未満
設問 1 高 TG 血症が動脈硬化性疾患のリスクを増加させる機序は?
解答 1 ① レムナントリポ蛋白の増加,small dense LDL の増加,HDL-C の低下,内臓脂肪の蓄積など,背景にあるリポ蛋白代謝異常に留意する必要がある。
② レムナントリポ蛋白はマクロファージの泡沫化,血管平滑筋細胞の増殖促進,内皮機能障害,PAI-1 の産生増加などを介して粥状動脈硬化を進行させる。
③ small dense LDL は動脈の内膜に取り込まれやすく,酸化されやすく,マクロファージを泡沫化させる。
設問 2 スタチンとフィブラート系薬・SPPARM αの併用は原則禁忌ではなくなったが,どのような場合に注意が必要か?
解答 2 ① 腎臓で代謝されるフィブラート系薬(クロフィブラート,ベザフィブラート,フェノフィブラート)は腎機能低下時には要注意。
② SPPARM αに関しては添付文書上,eGFR>30 であれば使用可能であるが,高度腎機能低下や透析患者でも血中濃度の増加は認められていない。
③ 胆石症の合併時には,フィブラート系薬・SPPARM αは原則的に使用しない。
設問 1 次の中から正しいものを一つ選べ。
① ピロリ菌除菌にて胃癌のほとんどは発生を抑制できる。
② ピロリ菌除菌後10年経過すれば,胃癌の発生はほとんどない。
③ ピロリ菌除菌後も PPI/P-CAB は投与継続が望ましい。
④ 腸上皮化生を有する胃粘膜は,ピロリ菌除菌後も胃癌の高リスクである。
解答 1 ④
設問 2 次の中から正しいものを一つ選べ。
① CDH1 病的バリアントによる遺伝性びまん性胃癌は,日本人に多い。
② ALDH2 ヘテロ欠損型の大酒家は,胃癌のリスクとなりうる。
③ 自己免疫性胃炎は胃癌のリスクとはならない。
④ 自己免疫性胃炎とピロリ菌感染の合併はない。
解答 2 ②
設問 1 本邦のがん死亡者数の臓器別ワースト5は?
解答 1 1位:肺がん,2位:大腸がん,3位:胃がん,4位:膵がん,5位:肝がん
設問 2 Sessile serrated lesion に多く認められる分子異常は?
解答 2 BRAF 変異,CpG island methylator phenotype(CIMP)などが挙げられる。
設問 3 マイクロサテライト不安定性,遺伝子変異率が高いなどの特徴をもつ大腸がんは左側,右側いずれに多いか?
解答 3 右側(肓腸,上行結腸,横行結腸)に多い。