2024年4月1日号
1月27日(土),冬の参与会がホテルグランヴィア京都で開催され,参与23名,府医役員25名が出席した。「診療報酬改定と組織力強化の意義」をテーマとして活発な意見交換が行われた後,事前に提出のあった地区からの意見・要望に回答した。
診療報酬改定
令和6年度診療報酬改定率は本体+0.88%に決定した。看護職員等の賃上げの対応に+0.61%,入院時の食費の引き上げの対応に+0.06%を充てる一方,生活習慣病を中心とした管理料,処方箋料等の再編などの効率化・適正化により▲0.25%とされ,これらを除く改定率は,+0.46%となる。なお,+0.46%のうち,0.28%程度は,40歳未満の勤務医や事務職員などの従事者の賃上げに用いられる。
~個別改定項目について~
厚労省は1月26日の中医協総会で2024年度診療報酬改定に向けた「個別改定項目」を提示,具体的な改定内容についての議論が始まった。焦点の「賃上げ」について入院基本料,初再診料,外来診療料,調剤基本料で対応することを明示するとともに,「賃上げに向けた評価」を新設するとして,具体的な点数設定は今後示される予定である。
その他,「医療 DX の推進による医療情報の有効活用,遠隔医療の推進」,「地域で救急患者を受け入れる病棟の評価」,「生活習慣病に係る医学管理料の見直し」,「長期収載品の保険給付のあり方の見直し」などがあり,特に,注目すべき項目として,生活習慣病に係る医学管理料の見直しが挙げられる。特定疾患療養管理料の対象疾患から糖尿病,脂質異常症,高血圧が除外されたことから,その受け皿として,生活習慣病管理料に検査などを別に算定できる(II)が新設される。今後示される通知の内容にもよるが,内科系の医療機関にとって影響が大きい可能性がある。
組織力強化の意義
日医の組織率は2000年を境に年々低下しており,50%を下回るところまできている。京都府においても,勤務医の入会率が低く,全国平均を下回っている現状である。
日医・府医では2015年から初期研修の2年間の会費無料化を実施し,昨年から日医では卒後5年目まで,府医では医籍登録後5年間の会費を無料にし,入会しやすい環境づくりを行っている。
一方で,医師会の入会は,地区医,都道府県医,日医の三層構造になっており,地区医に入らずに都道府県医や日医に入会することはできないなど,入会や異動手続きの煩雑さがあり,入会を躊躇する研修医や入会しても初期研修終了後に退会する研修医が多数いる。
~新たな取組み「KMA.com」~
府医では,令和5年4月から『つながり』をテーマに「KMA.com」という SNS を開始した。様々な情報を,SNS を通じて発信することで,府医の魅力を知っていただくとともに,全国どこにいても,府医と『つながり』を持てる仕組みとなっている。登録は府医会員である必要はなく,研修医・若手勤務医・医学生を対象にしており,手続きも QR コードや WEB サイトの申込フォームから簡単に登録ができるようになっている。このKMA.com から医師会への入会も案内しており,こうした取組みを通じて,医師会入会希望者の増加を図るとともに,中長期的な組織力強化につなげていく考えである。
~組織力強化に向けた新たな仕組みを検討~
三層構造を堅持した上で,会員増強・組織強化に向けた新たな仕組みとして「KMA.com」を活用し,会費減免の対象である研修医,若手医師がどこの都道府県に異動しても会員資格を維持できるよう府医で名簿を管理し,その名簿を地区医や病院にフィードバックするシステムを検討している。切れ目なく医師会のサービス(医師賠償責任保険や医師年金など)にアクセスできるよう「つながり」を維持することで,組織率向上に寄与すると考えている。
~組織強化の意義~
組織率の低下は,医療界が理想とする医療政策の提言にあたって,大きな影響を与え,医師会の存在意義を問われかねない大きな問題である。国民のための医療提供体制を構築していくためにも組織力強化が喫緊の課題である。
府医在宅医療・地域包括ケアサポートセンターでは「在宅医療を実施している非会員医療機関」にも在宅医療推進の一助となってもらうべく府医サポートセンターが実施する研修会の案内等とともに府医・地区医への入会申請書を送付し,府医の活動への理解と協力を求めていきたいと考えているので,地区医においてもご協力をお願いしたい。
各地区医から事前に提出のあった意見・要望について,以下のとおり回答した。
医療機関名称と医療広告ガイドラインについて
昨今,ある特定の疾患を想起させる医療機関の広告をテレビコマーシャルで見かけることが多くなっているが,医療機関名称や広告の仕方に問題はないのか。市民公開講座など講座という名前で広告して,自院への誘導が行われていると思われる事例もあり,これら商業的な手法は医療広告のガイドライン上問題はないのか。
〈回答〉
厚生労働省の医療広告ガイドラインQ&Aでは,「糖尿病」や「高血圧」等の特定の疾患や病状の名称を医療機関名に使用することは可能となっており,その他では,治療方法や診療対象者など法令および医療広告ガイドライン等により広告可能とされたものについては使用可能であるとされている。また,使用可能な例として,ペインクリニック,糖尿病クリニック,高血圧クリニック,腎透析クリニック,女性クリニックなどが示されている。
特定の疾患や病状の範囲については,当該医療機関で提供される医療の内容であれば問題ないとされている。
京都府における医療機関名称については,医療法の趣旨,厚生労働省通知,解釈を踏まえつつ,開設者を明らかにし,安心して患者さんに受診いただくため京都府・京都市・京都府歯科医師会・京都府医師会で協議の上,平成23年に「医療機関名称ガイドライン」を作成しており,行政でもガイドラインに沿わない名称については,指導を行う姿勢を示しているが,法的拘束力がないため,書類上瑕疵がなければ,受理せざるを得ない側面もあり,昨今,美容医療を中心にガイドラインに沿わない医療機関名称が散見される状況である。
その後の意見交換では,地区医より,責任の所在を明確にするため医療機関名称に姓名のいずれかを記載するように義務付けているが,非会員医療機関においては法的拘束力がないため強制できないことは理解できるとしつつ,近年,府医会員の医療機関においても医療機関名称のガイドラインが希薄化していることに懸念を示す意見があった。
府医より,医療機関のガイドラインの申し合わせが曖昧になっているため,今後,新たに別の規定を設ける必要性などを検討すると回答した。
感染症法に基づく「医療措置協定」締結について
感染症法に基づく医療措置協定の締結にあたっては,医療機関にはメリットもなく,何ら協力する理由がないように思われる。日医または府医で意見集約して,交渉していただきたいが,いかがか?
〈回答〉
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律において,国または都道府県および関係機関の連携協力による病床,外来医療および医療人材ならびに感染症対策物資の確保の強化,保健所や検査等の体制の強化,情報基盤の整備,機動的なワクチン接種の実施,水際対策の実効性の確保等の措置を講ずることが定められた。
これに基づき,都道府県等と医療機関等の間で,病床,発熱外来,自宅療養者等への医療の確保等に関する協定を締結することが求められている。
協定締結にあたっての基本的な考え方として,新興感染症発生・まん延時には,その感染症の特性に合わせて,都道府県と医療機関は協定の内容を見直すなど,実際の状況に応じた機動的な対応を行うことも前提に協定協議段階で可能な範囲で締結するとし,都道府県と医療機関の双方の合意のもとに,協定に解除規定を設けることも可能となっている。また,締結した協定の前提・内容とは大きく異なる事態の場合は,国がその判断を行い,機動的に対応するとしている。
医療措置協定の締結に関しては,府医を通して集合契約といった形で行政と締結することも検討したいと考えている。
北部地域の医療体制について
地域中核病院である京都府立医科大学附属北部医療センターの建て替えについて,府医を含めた形で検討を重ねているが,北部医療センターを含めた北部地域の医療体制がどのように想定されているのか,明確でない現状がある。ドクターヘリの配置が検討されているが,3次医療の機能を持たない病院にあるドクターヘリが救急患者を収容した場合,患者は必要に応じてその機能がある京都市に運ばれることになるとも考えられる。車のアクセスで1時間程度の豊岡と2時間以上かかる京都市では利便性に大きな差が生じる。
地域の救急医療体制とドクターヘリの運用等について,どのように想定されているのか。
〈回答〉
北部医療センターは築45年経っており,旧耐震基準で建て替え・整備の必要があるが,整備するにも様々な支障が出ているため予算が縮小されることが予想される。
特に丹後地域の医師にはご尽力いただいているが,3次救急がないため,京都府も懸念している部分である。全国平均で人口100万人対2.7施設であるのに対し,京都府は2.3施設と低い水準であり,救命センター(3次医療施設)の設置を考えなければいけないと考えている。
京都府北部地域の医療提供体制として未確定な要素が多いが,医療従事者の配置に関しては,京都市内から派遣するなど対策が検討されている。
令和4年度における兵庫県豊岡市のドクターヘリの依頼件数は280件,京都府南部が大阪府へ30件,滋賀県へのドクターヘリが36件であり圧倒的に京都府北部が多いことからも,調整が必要である。
また,脳卒中・循環器疾患対策として各医療圏域において,京都市内に搬送される患者数の調整など検証する必要があるが,北部の医療状況を京都府と共有し連携する必要がある。