第156回日医定例代議員会 ならびに第157回日医臨時代議員会 開催

2期目の松本日医執行部がスタート
~城守府医顧問が常任理事(4期目)松井府医会長が監事に就任~

 令和6年6月22日(土)・23日(日)の両日,日医代議員会が開催された。22日の定例代議員会では,令和5年度日医事業報告が行われた後,議事に移り,第1号議案では「令和5年度日本医師会決算の件」が可決された。引続いて役員改選が行われ,会長選挙では,松本吉郎氏(埼玉県)が松原謙二氏(大阪府)を破り,再選を果たした。また,副会長および理事選挙は立候補者数が定数どおりとなったため,投票は行われず,副会長には,茂松茂人氏(大阪府),角田徹氏(東京都),釜萢敏氏(群馬県)の3名が選任された。
 京都府からは,城守国斗府医顧問が常任理事4期目として,松井道宣府医会長が監事として選任された。
 翌23日の臨時代議員会では,第1号議案「令和7年度日本医師会会費賦課徴収の件」について可決された後,各ブロックからの代表質問に対して日医役員による答弁が行われた。

松本日医会長 挨拶

松本 日医会長

 松本日医会長より,当選に際して謝辞を述べた後,2期目の執行部では「地域から中央へ」,「さらなる信頼を得られる医師会へ」,「医師の期待に応える医師会へ」,「一致団結する強い医師会へ」の4本柱のさらなる強化,運営とともに,全国の医師会の意見を聞きながらこれからも「攻防一体」で活動を行うとして,具体的項目について所信を述べられた。

1.「地域から中央へ」

 この2年間で全国の都道府県医会長と対面,電話,メールなどを通じて,連携強化を図ることができた。
 医師会活動は,情報共有,相互理解,コミュニケーション,ともに行動することが重要であり,今後も,現場との連携を深めるため,引続き地域医師会とこれまでのような緊密な連携を図るとともに,地域から上げられた情報を分析・検討し,国の検討会や記者会見を通じて発信していく。
 また,今後も産業保健,学校保健などをはじめとする地域保健・公衆衛生活動や地域医療をかかりつけ医が中心となって担うよう,日医かかりつけ医機能研修制度を進めていく。

2.さらなる信頼を得られる医師会へ
  国民・患者の信頼を得られる医師会へ

 新型コロナウイルス感染症に関して,国際的に見ても,人口あたり死亡者数や陽性者の致死率の低さなど,我が国は特筆すべき医療実績を積み上げてきた。このことをもっと広く,メディアを通じて国民にもお知らせし,今後,発熱外来などで患者をしっかり診ていく姿勢を示すことが,さらに国民・患者からの信頼獲得につながると考えている。
 これまで日医は,日本歯科医師会,日本薬剤師会,日本看護協会,四病院団体協議会をはじめとする医療関係団体と,一体・一丸となって難局に立ち向かってきた。
 引続き,日医は,医師会のみならず,さまざまな職種や立場の方々との関係を発展させ,執行部一丸となって,さらなる信頼を得られる医師会となるため,今後も尽力していく。

3.医師の期待に応える医師会へ

 24年度診療報酬改定は,十分に満足できるものではなかったが,本体改定率プラス0.88%となり,基本診療料を中心に引上げることができた。
 医療財源は,税金による公助,保険料による共助,自己負担による自助の3つのバランスを取ることが大切であり,自己負担のみを上げないことが重要である。
 物価高騰や賃金上昇への対応も,喫緊の課題であり,診療報酬のみならず,補助金や税制措置などあらゆる選択肢を含め,今後も医療政策を提言し,実行していく。
 医師の偏在対策について,年末にかけて丁寧な議論が必要になり,まずは医師が不足している地域の声に耳を傾け,国が必要な財政支援,好事例の横展開,研修などで支えることが基本であり,自主的な機運の醸成や働きやすい環境の整備なども必要と考えている。
 財務省などによる「都市部の診療報酬単価を下げる」といった主張については,ディスインセンティブで行うのではなく,補助金によるインセンティブを設けるのが大前提であり,しっかりと提言していきたい。
 また,医師の働き方改革やサイバーセキュリティ支援制度に対しても取組むとともに,今後も日医生涯教育制度の充実や専門医制度の議論を深めるほか,医療安全対策についても引続き推進していく。

4.一致団結する強い医師会へ

 2年前に会費減免期間の卒後5年間までの延長など,医師会の組織力強化に尽力してきた。
 今後,会費減免期間終了後も,会員として定着してもらうことが重要であるため,都道府県医,郡市区等医師会と一体となって,好事例などを共有しながら,会員であることが実感できる取組みを積極的に進めていく。
 また,会員手続きの簡素化のため,今年10月から始まる新会員情報管理システム「MAMIS(マミス)」を活用した会員情報の一元化などに取組んでいく。
 5月末で終了した能登半島地震に対する日医災害医療チーム(JMAT)の派遣について,会員の先生方に大変なご協力を賜り,改めて深く御礼を申し上げる。
 今回の震災対応の経験を踏まえて,被災県との緊密な連携の下,JMATの統括機能を強化し,迅速な活動ができるよう,訓練や研修の見直し,体制づくり等を行っていく。実際の災害時には,被災地や全国の都道府県医と連携して,多数のJMATを効率的に派遣できるように取組んでいく。

代表質問

 6月23日(日)に行われた第157回日医臨時代議員会では,医療界が抱える喫緊の課題・問題について,出席代議員より様々な角度から質問が寄せられた。
※以下,主な代表質問に対する回答を記載

◇かかりつけ医機能報告制度について
~日医かかりつけ医機能研修制度の活用を~

 宮城県医の金丸代議員から,令和7年度からのかかりつけ医機能報告制度開始に向け,「国民・患者に対するかかりつけ医機能をはじめとする医療情報の提供等に関する検討会」やその分科会にて協議が行われているが,“かかりつけ医の役割”や“基準の明確化”等,かかりつけ医と非かかりつけ医の差別化を求めるような発言が出されていることを受け,日医としての今後の対応と,各医療機関や地域医師会に求められる対策について,質問が出された。
 城守日医常任理事は,現在,かかりつけ医機能報告制度の基準について分科会で激しい議論が行われていることを報告,かかりつけ医機能報告制度に手挙げする医療機関を限定すると,医療機関への受診にさまざまな制約が課されることにつながるとし,日医としては,より多くの医療機関が手挙げして,地域で不足している医療機能を協議により拡充するとともに,患者と医師の信頼関係が壊されないことが,極めて重要との認識を示した。加えて,制度を白紙から作り直すのではなく,これまでの体制を地域の実情に即して発展させる視点が必要とした。
 また,地域における面としてのかかりつけ医機能を発揮していくにあたっては,各医療機関が役目に応じてできることを拡大していく努力が大切であるとし,自己研鑽として日医かかりつけ医機能研修制度などを受講してほしいと訴えた。
 さらに,郡市区医は,引続き,地域を面で支える取組みや自治体と各医療機関との良好な関係構築に尽力するとともに,都道府県医には,郡市区医の取組みへの支援のほか,各種研修会の開催などをお願いしたいと協力を求めた。

◇国民皆保険制度の今後と日医の対応について
~国民皆保険制度,地域の医師・医師会の活動で成り立っている~

 茨城県医の間瀬代議員より,高額医療費・薬剤費の問題から始まり,昨今国民皆保険制度の課題や問題・限界が浮き彫りとなっているが,国民皆保険制度を堅持するための日医の対応,勤務医にも魅力を見いだせる新たな国民皆保険制度の検討について,質問が出された。
 茂松日医副会長は,国民皆保険制度について,日医は,先達の先生方が守り抜いてきた財産として次世代に引き継ぐため,未曽有の超高齢・人口減少社会を迎える中でも堅持していなければならないと考えているとし,国が進める子育て・少子化対策は大変重要な政策であるが,社会全体で関係費用を支えるべきであり,医療保険財源を切り崩すべきではないとの認識を示した。
 また,皆保険制度は,時間外・救急対応,公益活動,地域保健・公衆衛生活動,多職種連携など,地域の医師や医師会の活動の上に成り立っているとした上で,高齢化が進み,かかりつけ医機能の重要性がより高まる中,勤務医の先生には,自身の専門領域の臨床にとどまらず,その機能を支えていただくとともに,日医としても地域を面で支える医師の活動の魅力をしっかり届け,皆保険制度の理念を共有できるよう努めていきたいと意欲を述べた。

◇新専門医制度の専攻医定員と診療科偏在について
~強制的な手法には反対!~

 北海道医の佐古代議員より,平成30年に新専門医制度がスタートし,令和2年からシーリング制度も開始されたが,現時点で医師の地域偏在・診療科偏在は是正される兆しが見られないとして,地域偏在・診療科偏在に対する日医の見解・対策について質問が述べられた。
 釜萢日医副会長は,医師の地域偏在が我が国の医療提供に支障を来すことを強い懸念を示した上で,現行の専攻医シーリングは効果が不確実で撤廃を求める意見も多いが,撤廃によって医師少数県からの他県への流出が加速する不安が拭えないとして,シーリングの影響については日本専門医機構の調査結果を踏まえて検討していく意向を示した。
 一方で,診療科偏在の是正に向けては,地域枠は地元定着率が高く,効果が明確であるため今後も継続していくべきとし,医師の地域,診療科偏在の問題は,配置枠を厳格に設定してもそれぞれの地域の状況の変化によってマッチしないこともあり,強制的な手法による偏在の解消策に対しては容認できないとの考えを示した。
 また,国に対しては,特定の診療科に偏重しないような対策を求めるとともに,都道府県は現場の情報を的確に反映した医師確保計画を策定し,大学,病院,医師会と一体となって医学部入学時から継続した丁寧な支援を行うことが大切であるとした。
 さらに,人口減少にともなう医師需要の減少が予測される中,中堅・シニア医師が期間を限定して異動する取組みを推進する必要があり,そのためには,派遣される医師や派遣元の医療機関にインセンティブを付けるなど,関係者の合意形成や環境整備を行うべきであるとの見解を示した。

◇医師会の組織力強化に向けて
~大学医師会未設置の医科大学・医学部への働きかけをどう考えるか?~

 福井県医の広瀬代議員より,医師会組織力強化に向けて,医学部卒後前の早い時期から医学部組織内に医師会が関わることが大切であることから,都道府県医と医学部組織との連携強化とともに,研修医が卒後6年目以降も継続して医師会入会するメリット等の情報発信等に関する日医の考えについて質問が出された。
 釜萢日医副会長は,医師会への入会促進をはじめとする組織力強化には,大学との緊密な連携が不可欠のため,地域医師会にはそのような関係構築をお願いしているとし,各地域の実情に応じ,大学に対して引続き医師会活動への理解と協力を求めていきたいとした。
 卒後5年の会費減免期間中の医師に対する働きかけは,減免期間終了後も入会を継続してもらうため極めて重要との認識を示し,今年3月には都道府県医の取組み事例をまとめた冊子「医師会入会率の向上に向けて」を都道府県医,郡市区等医に配布するとともに,冊子には減免期間終了後にも入会を定着してもらうための取組みに関する項目も設けているので役立てていただきたいと依頼した。
 また,日医では,郡市区等医師会組織強化担当役職員連絡協議会などの開催費用とともに,若手医師の医師会事業への理解促進や帰属意識醸成に向けた取組みにも支援を用意しているとして,積極的な活用を求めた。
 最後に,組織強化は地域医師会の協力なくして成し得ないものであり,日医は地域医師会の取組みを全力で支援し,組織強化に努めていきたいと意欲を述べた。

◇医療DXに係る医療機関の負担軽減について
~引続き,国への支援を求める~

 北海道医の鈴木代議員より,医療DXに係る医療機関の負担(特にベンダーの請求)について,日医の把握状況ならびに費用負担の軽減への対応・働きかけについて質問が出された。
 長島日医常任理事は,日医の医療DXに対する基本姿勢の一つは,「医療現場の費用負担・業務負担の軽減」であるとし,DXを推進させるには導入や運用のための費用の支援が重要との認識を示した。
 オンライン資格確認導入の費用について,見積額などの情報を会員相談窓口で集約し,厚生労働省と共有して業者への働きかけに活用したことを報告した上で,電子カルテなどの費用も現状の相場全体を把握するために,早期に会員に呼びかけ,価格などの情報収集を行うとともに,国に働きかけると説明した。
 また,業者のコスト削減の恩恵が,保守料・リース料の引下げなど目に見える形で医療機関に還元されるべきだと主張してきたが,今後も国・業界に対し,医療機関の負担が軽減されるよう求めていくとした。
 標準化型電子カルテの普及に向けては,これまでの電子カルテのデータが利用できるようにすることや紙カルテの医療機関も取り残されないために,紙カルテのままでも医療機関に役に立つ情報共有などの機能を利用できるようにすることを,これまでどおり,国に強く要望していくとの意向を示した。

日本医師会 執行部職務分担表

(役員別,敬称略)

2024年8月1日号TOP