2024年2月1日号
福知山医師会と府医執行部との懇談会が12 月9日(土),福知山医師会館にて開催された。福知山医師会から16 名,府医から6名が出席し,「オンライン資格認証・医療DX」をテーマに議論が行われた。
〈注:この記事の内容は令和5年12 月9日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。〉
~資格認証ができない場合の対応~
資格確認ができないケースとして,「機器の不良」と「資格情報の不備」の2種類が想定される。
「機器の不良」の場合は,機器の故障以外であれば,目視モードやシステム障害時モードの利用によって対応できる場合もあるが,「資格情報の不備」の場合は如何ともしがたく,厚労省が示したマイナ保険証によるオンライン資格確認ができない場合の窓口対応に係る通知に沿って対応する必要がある。
まず,現在の保険資格の有無を口頭で確認し,「資格なし」の場合は医療費10 割を徴収するが,「資格あり」の場合は,「患者のスマホ等でマイナポータルを閲覧,確認」できれば,その情報を入力し,保険の自己負担分を徴収することになる。70 歳以上で,自己負担割合に関する患者の申立てが誤っていた場合でも,医療機関にはレセプト返戻されず,保険者から直接患者に返還請求されるため,負担割合がはっきりしない場合,医療機関においては低い割合で徴収すればよいことになる。
「患者のスマホ等でマイナポータルを閲覧,確認」できない場合,過去に受診歴があるときは,資格に変更がないことを口頭確認し,過去の資格情報を利用するというシンプルな方法で対応可能である。たとえ,資格喪失済みの保険情報であっても,新たな保険資格情報に自動的に振り替えられることとなっている。
「患者のスマホ等でマイナポータルを閲覧,確認」できない場合であって,受診歴がない等の場合は「被保険者資格申立書」を書いてもらうという方法が示されている。患者から事後的にも保険情報の提出がなく,医療機関から患者にアプローチしても資格情報が不明である場合は,レセプト摘要欄に「被保険者資格申立書」で把握した患者住所,事業所名等を記載し,保険者番号,被保険者等記号・番号をいずれも「不詳」として請求することが可能としている。
こういった手順を踏むことで,医療機関に未収金の負担は生じないことになっているものの,医療機関にとっては対応の負担が大きいと考えている。
~オンライン資格確認運用にあたっての問題点や保守に係る費用等~
オンライン資格確認の導入によって,会計業務と同時に受付業務を行うことができず,かえって業務が非効率になった,あるいは,場所的な制約があり解決しようがない,といった診療所が抱える問題については,日医が設置しているオンライン資格確認など医療DX 全般の相談窓口に導入や運用全般に係る具体的な案件を集約させ,政府に改善を訴え続けるしかないと考えている。
回線等に係るランニングコストについて日医は,令和5年2月に病院団体との連名で「電子処方箋導入に伴う補助金の拡充に関に関する日医の要望」を厚生労働大臣に提出しており,電子処方箋の最終受益者は,より最適な医療を受けることができる患者と,不要な重複投薬の回避等によって国民医療費の適正化を実現できる国であって,医療機関にとっては電子処方箋の導入が収益増につながるわけではないと指摘した上で,電子処方箋に限らず,国策として医療DX を推進するのであれば,システム導入および維持,それにともない必要となるセキュリティ対策にかかる費用は国が全額負担すべきであるとの考えを明確に主張している。
府医においても会員各位のご協力を得て令和5年6月にアンケートをとり,医療機関に負担がかかっている実態を日医に報告したところである。医療関係者の総力を結集し,日医を通じて政府に理解を強く求めていくことが大事であると考えている。
その後のディスカッションで地区からは,オンライン資格確認の導入によって各医療機関のサイバー攻撃のリスクが増大したにもかかわらず,すべて医療機関の自己責任とする政府の姿勢は無責任であるとして,サイバー攻撃を受けた際の補償や救済制度の創設を求める声や,医療DX の推進により全国医療情報プラットホームを構築してビッグデータを形成し,治療法の確立や製薬につなげていくという政府の考えに対して,医療関係者だけでなく,国民がいかにメリットを感じることができるかが重要であるとの意見が挙がった。
その他,次期診療報酬改定の展望や災害医療対策等について,活発な意見交換が行われた。