2024年6月15日号
令和6年度診療報酬改定にともない,10月から厚労省が定める長期収載品の保険給付のあり方が見直されることとなりました。
具体的には,厚労省が定める基準(※1)に該当する長期収載品を患者が希望する場合(※2),後発医薬品の最高価格帯との価格差の4分の3までを保険給付の対象とし,4分の1は患者負担(選定療養費)となります。
ただし,医療上の必要がある場合や後発医薬品の提供が困難な場合(※3)は従来どおりすべて保険給付の対象(選定療養費対象外)となります。
今般,厚労省より取り扱いの運用や対象品目が示されましたので,下記をご参照ください。
なお,対象薬剤を院内処方する医療機関は本取り扱いにご留意ください。院外処方の医療機関については,選定療養費の取り扱いは調剤薬局にて行われることから窓口での取り扱いに変更はありませんが,10月から院外処方箋の様式が変更され,患者希望欄等が設けられますので,記載方法等にご注意ください。
※1 ①後発品上市後5年を経過した長期収載品(置換率が極めて低く,市場に後発医薬品がほぼ存在しない場合を除く)または,②後発品上市後5年を経過していなくても,置換率が50%に達している場合
対象医薬品は厚労省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39830.html)参照
※2 ①銘柄名処方の場合であって,患者希望により長期収載品を処方・調剤した場合や,②一般名処方の場合
※3 ①医療上の必要性があると認められる場合(例:医療上の必要性により医師が銘柄名処方(後発品への変更不可)をした場合)や,②薬局に後発医薬品の在庫が無い場合など,後発医薬品を提供することが困難な場合
▷「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」の一部改正について
1~29 略
30 長期収載品の処方等又は調剤に関する事項(抜粋)
(1) 創薬力強化に向けて,革新的な医薬品等の開発強化,研究開発型のビジネスモデルへの転換促進等を行うため,イノベーションの適切な評価などの更なる薬価上の措置等を推進することとしているところ,医療保険財政の中で,こうしたイノベーションを推進するため,後発医薬品の安定供給を図りつつ,長期収載品の保険給付の在り方の見直しを行うこととしている。本制度は,こうした政策的な要素を考慮した上で,具体的には,医療上の必要性があると認められる場合等は,保険給付するという前提に立ちつつ,後発医薬品が存在する中においても,薬剤工夫による付加価値等への患者の選好により使用されることがある等の長期収載品の使用実態も踏まえ,長期収載品の処方等又は調剤について,患者の自己の選択に係るものとして,その費用を患者から徴収することとしたものである。
(2) 長期収載品とは,後発医薬品のある先発医薬品(昭和42年9月30日以前の薬事法(現行の医薬品医療機器等法)の規定による製造の承認がされた医薬品であって,価格差のある後発医薬品があるもの(いわゆる「準先発品」)を含む)をいうものであること。
(3) 本制度の対象となる長期収載品は,次の①又は②の要件を満たす医薬品あって,当該長期収載品の薬価が,当該長期収載品の後発医薬品(組成,剤形及び規格が同一であるものに限る。以下同じ)のうち最も薬価が高いものの薬価を超えているものであること。
① 当該長期収載品に係る後発医薬品が初めて薬価基準に収載された日の属する月の翌月の初日から起算して5年を経過した長期収載品(バイオ医薬品を除く)
② 当該長期収載品に係る後発医薬品が初めて薬価基準に収載された日の属する月の翌月の初日から起算して5年を経過しない長期収載品であって,当該長期収載品に係る後発医薬品の数量を,当該長期収載品に係る後発医薬品の数量に当該長期収載品の数量を加えて得た数で除して得た数(以下「後発品置換え率」という。)が50%以上であるもの(バイオ医薬品を除く。)
ただし,①の要件を満たす医薬品であっても,後発品置換え率が極めて低い長期収載品(後発品置換え率が1%未満の長期収載品)は,対象外とする。
なお,対象となる長期収載品の具体的な品目の一覧(長期収載品の薬価,当該長期収載品の後発医薬品のうち最も薬価が高いものの薬価等を含む)は厚生労働省ホームページに掲載(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39830.html)参照
(4) 保険外併用療養費の支給額は,所定点数から次に掲げる点数を控除した点数に,当該療養に係る医薬品の薬価から,先発医薬品の薬価から当該先発医薬品の後発医薬品のうち最も薬価が高いものの薬価を控除して得た価格に四分の一を乗じて得た価格を控除して得た価格を用いて次の各区分の例により算定した点数を加えた点数をもとに計算されるものである。
① C200 に掲げる薬剤 ② F200 に掲げる薬剤 ③ G100 に掲げる薬剤
④~⑥略
(5) 長期収載品の処方等又は調剤を行おうとする医療機関又は保険薬局は,本制度の趣旨を患者に適切に情報提供する観点から,(1)に示す本制度の趣旨及び特別の料金について院内の見やすい場所に患者にとって分かりやすく掲示しておかなければならないこと。
また,当該掲示事項について,原則として,ウェブサイトに掲載しなければならないものとすること。ただし,自ら管理するホームページ等を有しない医療機関又は保険薬局については,この限りではない。なお,ウェブサイトへの掲載について,令和7年5月 31 日までの間,経過措置を設けている。
(6) 本制度が適用されるのは,次の①から③までのすべてを満たす場合に限られるものであること。
① 患者に対して長期収載品の処方等又は調剤に関する十分な情報提供がなされ,医療機関又は薬局との関係において患者の自由な選択と同意があった場合に限られるものであること。なお,今般,本制度の導入にあたっては,院外処方や院内処方等及びそれを踏まえた調剤時における患者の希望による長期収載品の選択を対象とし,入院中の患者については対象外とする。
② 長期収載品を処方等又は調剤することに医療上必要があると認められる場合に該当しないこと。具体的には,処方箋の「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」又は「×」が記載された長期収載品は,医療上必要があると認められるため保険給付の対象となり,選定療養の対象にはならないこと。他方,患者の希望を踏まえ銘柄名処方され,「患者希望」欄に「✓」又は「×」を記載された長期収載品や,一般名処方され,患者が調剤を希望した長期収載品は,選定療養の対象となること。
③ 当該医療機関又は保険薬局において,後発医薬品の在庫状況等を踏まえ,後発医薬品を提供することが困難な場合に該当しないこと。
(7) 患者から長期収載品の処方等又は調剤に係る特別の料金の費用徴収を行った医療機関又は保険薬局は,患者に対し,保険外併用療養費の一部負担に係る徴収額と特別の料金に相当する自費負担に係る徴収額を明確に区分した当該費用徴収に係る領収書を交付するものとすること。
(8) 特別の料金については,医療上の必要性等の場合は長期収載品の薬価で保険給付されることや,市場実勢価格等を踏まえて長期収載品の薬価が定められていることを踏まえ,長期収載品と後発医薬品の価格差の一定割合とすること。また,後発医薬品の使用促進を進めていく観点からも,当該一定割合分を徴収しなければならないとすること。
具体的には,当該長期収載品の薬価から,当該長期収載品の後発医薬品の薬価を控除して得た価格に4分の1を乗じて得た価格を用いて算定告示の例により算定した点数に10円を乗じて得た額とすること。ここでいう当該長期収載品の後発医薬品の薬価とは,該当する後発医薬品のうち最も薬価が高いものの薬価をいうこと。
なお,「選定療養」に係る費用として徴収する特別の料金は消費税の課税対象であるところ,前述で算定方法を示している長期収載品の特別の料金の額に消費税分は含まれておらず,前述の額に消費税分を加えて徴収する必要があること。
(9) 30における取扱については,「厚生労働大臣の定める評価療養,患者申出療養及び選定療養等の一部を改正する告示」(令和6年厚生労働省告示第122号)等における長期収載品の処方等又は調剤に係る規定の適用期日を踏まえ,令和6年 10 月1日より適用するものとすること。
▷長期収載品の処方等又は調剤について(留意事項通知)
1.処方箋様式の改正
医療上の必要性があって処方していること又は患者の希望を踏まえ処方していることが処方箋において明確になるよう,処方箋様式の改正を行うこととしたこと。
① 「変更不可」欄に「(医療上必要)」を追加し,処方医が,処方箋に記載した医薬品(長期収載品)について,医療上の必要性があるため,後発医薬品に変更することに差し支えがあると判断した場合に,「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」又は「×」を医薬品ごとに記載し,かつ,「保険医署名」欄に署名又は記名・押印することとしたこと。
② 「患者希望」欄を新設し,患者の希望を踏まえ,長期収載品を銘柄名処方する場合には,「患者希望」欄に「✓」又は「×」を医薬品ごとに記載することとしたこと。
2.長期収載品の処方箋の交付等に係る基本的な考え方について
(1) 長期収載品について,処方箋が交付され,保険薬局において調剤される場合について,医療上必要があると認められる場合及び後発医薬品の在庫状況等を踏まえ後発医薬品を提供することが困難な場合は,引き続き保険給付としつつ,それ以外の場合に患者が長期収載品を希望する場合は,選定療養の対象とし,保険給付は,長期収載品の薬価と後発医薬品の最高価格帯の価格差の4分の3までとすることとしたこと。
(2) 処方医は,選定療養に係る処方に当たり,後発医薬品が選択可能であること,長期収載品を患者が希望した場合には特別の料金が生じ得ること等に関し,患者に十分な説明を行うこと。また,保険薬局の薬剤師も,調剤時に同様の事項を説明し,患者の希望を確認すること。
3.長期収載品を銘柄名処方する場合における取扱いについて
(1) 銘柄名処方をされた長期収載品であって,「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」又は「×」が記載されたものは,保険給付の対象となること。
また,「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」又は「×」を記載した場合においては,「患者希望」欄には「✓」又は「×」は記載しないこと。
(2) 患者の希望を踏まえ銘柄名処方され,「患者希望」欄に「✓」又は「×」を記載された長期収載品については,選定療養の対象となること。
(3) 銘柄名処方された長期収載品であって,「変更不可(医療上必要)」欄及び「患者希望」欄のいずれにも「✓」又は「×」が記載されない場合には,保険薬局における調剤の段階で後発医薬品を調剤することができる一方で,患者が長期収載品を希望すれば選定療養の対象となること。
(4) (1)から(3)までを踏まえ,保険薬局においては,処方箋に記載のある「変更不可(医療上必要)」欄又は「患者希望」欄の「✓」又は「×」の記載の有無に基づき,長期収載品を調剤した場合に選定療養の対象となるか否か判断すること。
ただし,保険薬局において,次の場合において,次のような判断をすることは差し支えないこと。なお,これらの場合において,患者に対して調剤する薬剤を変更すること等を説明の上,同意を得ること。
(5) なお,医療上の必要性の観点からは処方医が後発医薬品を使用することに差し支えがないと判断し,長期収載品について患者の希望がない場合には,一般名処方がされることが望ましい。
4.一般名処方する場合における取扱いについて
(1) 一般名処方の場合には,「変更不可(医療上必要)」欄及び「患者希望」欄のいずれにも,「✓」又は「×」を記載しないこと。
(2) 一般名処方の処方箋を保険薬局に持参した患者が長期収載品を希望した場合には,選定療養の対象となること。
5.経過措置について
改正前の処方箋については,当分の間,これを手書き等で修正することにより,使用することができるものであること。改正前の処方箋を使用する場合には,医療上の必要性があるため,後発医薬品に変更ができないと処方医が判断した場合には,「変更不可」欄に「✓」又は「×」を医薬品ごとに記載するとともに「医療上必要」の記載をし,かつ,「保険医署名」欄に署名又は記名・押印すること。また,患者の希望を踏まえ,長期収載品を銘柄名処方する場合には,処方薬の近傍に「患者希望」の記載をすること等により,医薬品ごとに,当該判断が保険薬局へ明確に伝わるようにすること。なお,銘柄名処方された長期収載品であって,「変更不可」欄に「✓」又は「×」が記載されておらず,また,「患者希望」の記載がない長期収載品の取扱いについては,3(4)のとおりとすること。
6.院内処方時の留意点について
長期収載品を院内処方する場合においても,医療上必要があると認められる場合及び後発医薬品を提供することが困難な場合は引き続き保険給付としつつ,それ以外の場合に患者が長期収載品を希望する場合は選定療養の対象とすること。院内処方の場合においては,医療機関において,長期収載品に係る「特別の料金」を徴収することとなるため,「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」の一部改正について」に規定する要件等に留意すること。