府医第211回臨時代議員会

 府医では,3月23日(土),府医会館において,89名の代議員の出席のもと,標記代議員会を開催した。
 松井府医会長の挨拶に続き,「令和5年度庶務および事業中間報告」,「令和6年度京都府医師会事業計画」,「令和6年度京都府医師会予算」が報告され,その後地区からの代表質問ならびにその答弁が行われた。
 議事に移り,第1号議案「令和6年度京都府医師会費の賦課徴収および減免に関する件」が上程され,賛成多数で可決された。
 続いての協議では,政府に対し,国民に必要不可欠な社会インフラである「医療提供体制」を維持するため,今後もその原資として診療報酬上の評価を強く求める決議が採択された(決議文は別掲)。

松井府医会長 挨拶

松井 府医会長

 冒頭,本年1月1日に発生した能登半島地震により被災された方々にお見舞いを申し上げるとともに,府医からは,JMAT京都の安全確保を第一に,JMAT調整本部の支援を目的として1月16日から21日までの間,ロジスティクス班を派遣し,その後1月28日から2月7日までJMAT京都として計5隊のチームを派遣したことを報告した。輪島市や珠洲市をはじめとする能登北部地区では安全確保が万全でなく,宿泊施設の確保も困難であったことから,主に金沢以南の1.5次,2次避難所を活動場所として巡回し,地元の医師会,医療機関による医療体制が整いつつあると判断して2月8日で派遣を中断したと説明。今後も石川県医との連携を維持し,必要な支援を継続していく意向とともに,JMATに応募・参加いただいた先生方に謝意を示した。
 今回の震災を経験し,改めて京都で災害が起こったときにどうするかを具体的に決めておく必要があると認識したと述べた上で,被災時には全国から支援に集まった人材や支援物資をどのようにコントロールし,いざというときの指揮系統の原則を明確にすることが重要であるとした。府医において災害時対応マニュアルを整備し,各地区医とも協議を重ねて,いざというときに備えていく考えを示した。
 「医師の働き方改革」,「第8次医療計画」がスタートする2024年を“改革の始まり”と位置付け,ここから2040年に向けて,支え手となる現役世代が急速に減少し,医療従事者の確保が困難になる点を踏まえ,これまで以上に医療従事者の確保,効果的・効率的な医療提供を重視することが求められると展望し,超高齢社会で需要増加が見込まれる中で労働時間制限という改革に取組み,「医師の健康確保」という本来の目的を達成するためには,タスクシェア,タスクシフトを含め,医療界全体で取組む必要があると指摘した。
 府医では,これから予想される大きな変化に対して,今後の医療のあり方を考える議論には,将来の医療を担う若い先生方に参加していただく必要があるとの考えのもと,会費の負担が医師会入会の妨げとならないよう,日医の動きに合わせて2016年度から若手医師の会費減免を実施していることを説明。さらに,2017年から卒後10年目までの勤務医の先生方の会費を減額していることに加え,日医,府医とも2022年からは卒後5年目,医籍登録5年目まで会費全額減免の期間を延長していることを報告し,各地区医においても5年目までの若手医師の会費全額減免,10年目までの会費減額に協力を呼びかけた。
 また,昨年度からは,若手医師との「つながり」をテーマとして「KMA.com」というサイトを立ち上げ,新臨床研修医の段階から医師賠償責任保険や医師年金など医師会の具体的メリットはもちろん,共有すべき情報の継続的な提供を通じて「つながり」を維持することで,将来の医師会活動に繋げていく新たな取組みを開始したことを報告。強い意志をもって中長期的に組織力の強化を図っていく意向を示した。
 最後に,2024年度診療報酬改定が本体+0.88%という結果になったことについて触れ,当初財務省が,コロナ禍において診療所の収益が増加したことを理由に,大幅なマイナス改定を訴えたことに対して,日医は超高齢社会を乗り越えるための医療・介護分野の人材確保には,人件費の原資となる診療報酬の大幅なプラス改定がなければ医療従事者の賃上げを実施できず,結果として医療現場からの人材流出は不可避であると強く反対すると同時に,各都道府県医が地元選出の国会議員等に働きかけ,これからの医療・介護の重要性と,そのためのプラス改定の必要性を強く訴えかけた結果,勝ち得たものであると評価した。しかしながら,財務省は今後も間違いなく社会保障費の削減を強く求めてくるとして,社会保障財源の確保のためには引続き,政府に対して医療・介護の必要性と,質の確保の重要性を訴えていく必要があると指摘し,必要な人が必要な医療を受けられる医療制度を守るためには,政策に影響を与えるための医政活動が重要であるとして,引続き会員各位の理解と協力を呼びかけた。

代表質問

 代表質問では,綴喜,左京の2地区から代議員が質問に立ち,医療が抱える課題について質疑が行われた。質問内容および執行部の答弁(概要)は次のとおり。

◆安田美希生 代議員(綴喜)

〔医薬品の供給不安定な状況の改善に向けて〕

安田 代議員

 新型コロナウイルス感染症が5類感染症へと引下げられたが,インフルエンザの流行もあり,相変わらずカゼ薬の咳止めや抗炎症薬,一部の抗生剤を含む薬品不足状態が続いている。医薬品の供給が不安定な状態が改善されていないのは,ジェネリック医薬品の低価格化と生産調整を含めた薬理行政に原因があるのではないかと考える。
 日本は世界に誇る健康保険制度のもとで,一枚の保険証で全国の医療機関を受診でき,比較的リーズナブルな費用で検査や治療が受けられるのが特長であるが,風邪薬の1つも十分に処方できない状況は問題である。
 結果が出るような改善策を府医から日医,さらに国へ提言し,言葉だけではなく,医療界や患者(国民)が納得できるようにしていただきたい。

◇谷口府医副会長

谷口 府医副会長

 2020年に後発医薬品会社の製造・品質管理の不祥事を契機として医薬品の供給が不安定な状況が発生し,厚労省はその他の製造会社への増産要請や各種対策を講じているものの,世界的に原材 料の調達が滞るなどサプライチェーンの問題もあり,解決に時間を要していると説明。
 さらに,新型コロナやインフルエンザの流行によって,咳止めや抗炎症薬も供給が不安定となり,改善どころか,ますます悪化している印象であると述べ,日医は昨年8月から9月にかけて緊急アンケートを実施し,医薬品の供給停止・限定出荷が院内処方の医療機関の90%,院外処方の74%に影響を及ぼしている他,鎮咳剤や去痰剤が入手困難となっていることなど,全国的に影響が広がってることを中医協等の会議で提示し,改善を強く要望していることを報告した。
 この問題の背景には,企業のコンプライアンスの問題はもちろん,国の行き過ぎた後発医薬品使用促進政策に加えて,後発医薬品が低薬価に抑えられ,毎年の薬価改定で薬価が引下げられるために安定的に収益をあげられないことや,1社が多くの品目を少しずつ製造する「少量多品目生産」という構造的な問題があると指摘。厚労省の「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」が昨年10月に示した「中間とりまとめ」において,「製造管理・品質管理体制の強化」や「持続可能な産業構造とするため少量多品目構造の適正化」,「安定供給能力の確保」等を図る方向性が示されていることを紹介し,構造の変化を促すものであるため即効性は期待できないものの,推進すべき取組みであるとの考えを示した。
 また,本年3月7日に京都府が開催した「後発医薬品安心使用に係る意見交換会」では,府医から後発医薬品不足による医療現場の窮状を訴えたことと併せて,毎年の薬価改定で薬価が下がっていることについてジェネリック製薬協会から国へ要望が行われた結果,令和6年には数種の薬価が引上げられたとの報告があったことを紹介し,これによって後発医薬品の信頼回復に向けた取組みが推進されることに期待を示した。
 府医では,この問題が起きる以前から京都府の会議等で国の強引な後発医薬品促進策に反対してきたと述べ,国が強引な後発品使用促進の数値目標を掲げるのをやめることと併せて,世界と比較しても多すぎる後発医薬品の製造会社を絞り込み,品質や安定供給の確保が可能な企業のみが参入する仕組みにすることが必要であると提言した。最後に,医薬品は安全でいつでも手に入るという常識が揺らいでおり,医療機関や患者に多大な影響を及ぼしていることを引続き日医に具申していく考えを示した。

◆塩見 聡史 代議員(左京)

〔学校医をはじめとする公的役職の処遇改善について〕

塩見 代議員

 地区医は医療的な判断が必要な公的役職(校医・園医,産業医,介護認定審査会委員,保健福祉センター生活福祉課嘱託医等)に医師を推薦し,行政に協力してきたが,その報酬は据え置かれたままである。
 介護認定審査会は,最近ではコロナ禍で件数が少ないことを理由に突然休会になることも多く,役所の都合で休会するのであれば,予定を空けていた分に対して報酬は支払われるべきだと考える。また,審査の簡素化と言いながら,簡素化した分は0.5人と換算され,1回あたりの審査数の上限が35人であったものがそれ以上になっており,負担は増加している。
 また,保健福祉センター生活福祉課嘱託医についても週2日,1日2時間の業務であるが,京都市の報酬は大阪市と比べても低く抑えられている。校医については,運動器検診の追加により手間が増えていることに加え,昨今の着衣での健診等の報道があるように,精神的負担も増大している。
 近年は引き受け手も見つけにくくなってきており,物価高・給与引上げの流れからも処遇改善が必要と考える。府医では行政と待遇・条件等の交渉を行っているのか?

◇禹府医副会長

禹 府医副会長

 4月からの「医師の働き方改革」に向けて,勤務医については勤務環境の改善に係る議論が行われているが,開業医も自院での診療以外に,学校医や介護認定審査会委員,生活保護の嘱託医の他,産業保健や健診,予防接種,休日急病診への出務など,地域に根差した活動に対応し,さらにコロナ禍では自院の発熱外来に加えて,検査センターや宿泊療養施設,電話診療所等への出務にご協力いただくなど多忙を極めており,開業医の先生方の働き方も非常に重要であるとの認識を示した。
 京都市の介護認定審査会では,コロナ禍を経て申請件数の増加が予想される一方,各地区の審査件数にばらつきがあり,申請が多い地区の処理日数が伸びることを防ぐために,令和5年度から審査件数の多い地区の審査分を,審査件数が少なくて休会となる地区に割り当て,休会を回避する取組みが開始されている他,以前より京都市の本庁に府医の役員が審査委員として参画する合議体を作り,各地区の審査委員の負担軽減が図られていることを説明。しかしながら,審査件数が増え,実態として簡素化されていないという指摘については,審査の運用面等で工夫ができないか,京都市に調整を要請する考えを示した。
 また,生活保護に関する保健福祉センターや福祉事務所の嘱託医が行う医療扶助の要否の判定に際しては,主治医が記載した医療要否意見書をもとに審査されることから,府医では毎年12月1日号の京都医報「保険医療部通信」に医療要否意見書の記載にあたっての留意事項を掲載し,会員各位に傷病名や主要症状の他,傷病の経過や今後の見通し,検査データおよび治療方針など,嘱託医の先生が判断する上で参考となる記載の充実を呼びかけていることを紹介した。嘱託医の推薦にあたって地区医からは,週2日の業務では負担が大きく引き受け手の確保が難しいとの意見を頂戴しており,京都市に対し,勤務日数を減らすなど負担軽減ができないか,改めて申し入れを行う意向を示した。
 さらに,学校医についても京都府・京都市に対して,運動器検診の開始以降,例年,報酬の増額を要望しているものの,増額には至っていない現状を説明した。
 最後に,府医では開業医の先生方の働き方改革も重要と認識していると述べ,引続き,行政には公的役職の処遇改善に向けた取組みを促していく意向を示した。

令和6年度 京都府医師会費割当表

賦課割合   A= 100 : B1= 18 : B2=4 : C=0 : D=4

A会員以外の会員の会費月額100円未満は四捨五入

減免額

<参考>
 会費賦課徴収規定第8条第3項
   医業収入が一定額以下かつ医業所得が一定額以下のA会員については、その理由を具した申請により、理事会の議を経てこれを減免することができる。

 会費賦課徴収規定第8条第4項
   満80歳に達したA会員(高齢者A会員)については、その翌月より会費を減免する。

 会費賦課徴収規定第9条第1項
   満80歳に達したB1会員、B2会員およびD会員については、その翌月より会費を免除する。

 会費賦課徴収規定第9条第2項
   前条第4項の会員のうち、医業収入が一定額未満の者については、その理由を具した申請により、理事会の議を経てこれを免除することができる。

決議

 2024年度診療報酬改定では,特定疾患療養管理料や処方箋料等の見直しなど,医業経営の根幹をなす医療者の技術料が,「適正化」の名のもとに引き下げられた。特に全人的に疾病管理をしてきた医療機関にとっては,プラス改定とは到底感じられない。改定率が固まる段階で,財源の使途や適正化対象が既に決定している近年の傾向は,中央社会保険医療協議会(以下中医協)での個別項目の議論を形骸化に導くものである。また,中医協において,本来中立・公正な立場で調整役として参画している公益委員が,個別の審議項目に関して,自らの意見を発信することは,その目的に合致しない。
 改定率決定前に財務省が,恣意的な調査によって「コロナ関連の補助金等で診療所の経営状態は総じて堅調であり,診療所の基本診療料の引き下げなど報酬単価を5.5%程度引き下げるべき」と主張したことは,これまで真摯にコロナ対応に尽力した医療従事者への冒涜以外の何物でもない。今後構築すべき新たな感染症対策にも多大な影響を与えることは必至である。
 昨年8月に公表された人事院勧告では,年収で約3.3%の給与改善を求めているところであり,他産業の状況を見ると,連合が公表した2024年の春闘基本構想では,「定期昇給相当分を含め5%以上の賃上げを目安とする」とされている。既に医療・介護分野の賃金上昇は他産業に大きく遅れを取っており,当分野からの人材流出に歯止めがかからず,深刻な人材不足に直面している。
 全ての医療機関に人材確保が必要である中,令和6年度ベア+2.5%・令和7年度ベア+2.0%を実施していくためには,今後も基本診療料に必要な人材確保分の報酬が必要となることは言うまでもない。
 国民にとって重要な社会インフラである医療提供体制を維持していくためには,充分な財源が今後も必要不可欠である。
 よって,以下を要望する。

一.国民に必要不可欠な社会インフラである「医療提供体制」を維持するため,今後もその原資として診療報酬上の評価を強く求める。

2024年3月23日

京都府医師会 第211回臨時代議員会

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