令和6年6月診療報酬改定において,特定疾患療養管理料の対象疾患から,「脂質異常症」,「高血圧症」,「糖尿病」が除外され,その受け皿として,生活習慣病管理料(Ⅱ)が新設されました。
今般,告示,通知,疑義解釈資料が発出されたことを踏まえて,日医が点数設定・包括範囲,療養計画書,患者署名などをあらためて下記のとおり整理しましたのでご参照ください。
なお,算定要件など詳細は4月下旬ごろに送付しました診療報酬点数早見表や日医参考資料(白本)などでご確認ください。また,府医ホームページの診療報酬改定に関する専用ページから院内掲示例や療養計画書がダウンロードできますのでご活用ください。
1.今回改定のポイント
- 従来の生活習慣病管理料は,包括点数で月1回以上の治療管理と,詳細な療養計画書の交付が4か月に1回求められるなど,算定に当たってハードルが高かった。今回の診療報酬改定では,このハードルが緩和されるとともに,従来の生活習慣病管理料は「生活習慣病管理料(Ⅰ)」にあらためられ,検査等が出来高算定できる「生活習慣病管理料(Ⅱ)」が新設された。
- 上記3疾患以外に主病があり,特定疾患療養管理料の対象疾患に入っているようであれば,引き続き特定疾患療養管理料が月2回算定できる。ただし,生活習慣病管理料は併算定できない。
- (Ⅱ)は,月1回算定できる出来高点数で,検査,注射,処置などが別に算定できる。(Ⅰ)(Ⅱ)を算定した診療日には外来管理加算は併算定できないが,同月の他の診療日であれば算定できる。
- 療養計画書(初回用,継続用)が,従来のものから大幅に簡素化された。
- 患者の治療管理で必要な項目のみの記載でよく,血液検査結果を別に交付している場合はその部分の記載は省略できることとされた。
- 初回用は患者署名が必要であるものの,医師の診察・説明の後,看護職員等の医師以外が診察室以外で取得可能とされた。継続用では療養計画書の内容を患者に対して説明した上で,患者が当該内容を十分に理解したことを医師が確認し,その旨を療養計画書に記載(チェック欄にチェック)した場合は,患者署名を省略できることとされた。
2.点数および算定要件(抜粋)
<生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)共通>
- 治療計画を策定し,当該治療計画に基づき,栄養,運動,休養,喫煙,家庭での体重や血圧の測定,飲酒,服薬及びその他療養を行うに当たっての問題点等の生活習慣に関する総合的な治療管理を行った場合に算定できる。
- 栄養,運動,休養,喫煙,飲酒及び服薬等の生活習慣に関する総合的な治療管理を行う旨,患者に対して療養計画書(厚労省が定める様式又はこれに準じた様式)により丁寧に説明を行い,患者の同意を得るとともに,当該計画書に患者の署名を受けた場合に算定できる。
- 療養計画書は府医ホームページの令和6年6月診療報酬改定専用ページからWord版,Excel版をダウンロード可能
- 交付した療養計画書の写しはカルテに添付する。
- 継続して算定する月においても療養計画書を交付するが,内容に変更がない場合はこの限りでない。ただし,その場合においても,患者又はその家族等から求めがあった場合には交付し,概ね4月に1回以上は交付する。
- 患者の状態に応じ,28日以上の長期の投薬を行うこと又はリフィル処方箋を交付することについて,当該対応が可能であることを院内掲示するとともに,患者から求められた場合に,患者の状態を踏まえて適切に対応する。
- 府医ホームページの令和6年6月診療報酬改定専用ページからダウンロード可能
- 脂質異常症,高血圧症,糖尿病を主病とする患者について,当該管理料を算定するものと算定しないもの,また,(Ⅰ)を算定するものと(Ⅱ)を算定するものが混在することができる。
【生活習慣病管理料(Ⅰ)(月1回)】
脂質異常症:610点 高血圧症:660点 糖尿病:760点
- 外来管理加算,医学管理料等(※を除く),検査,注射,病理診断の費用は含まれる。
- 併算定できる医学管理料等糖尿病合併症管理料,がん性疼痛緩和指導管理料,外来緩和ケア管理料,糖尿病透析予防指導管理料,慢性腎臓病透析予防指導管理料
- 同月の他の診療日に外来管理加算は算定できる。
【生活習慣病管理料(Ⅱ)(月1回)】
333点(特定疾患療養管理料:225点+外来管理加算:52点+特定疾患処方管理加算:56点)
- 外来管理加算,医学管理料等(※を除く)の費用は含まれる。
- 併算定できる医学管理料等外来栄養食事指導料,集団栄養食事指導料,糖尿病合併症管理料,がん性疼痛緩和指導管理料,外来緩和ケア管理料,糖尿病透析予防指導管理料,慢性腎臓病透析予防指導管理料,ニコチン依存症管理料,療養・就労両立支援指導料,プログラム医療機器等指導管理料,診療情報提供料(Ⅰ),電子的診療情報評価料,診療情報提供料(Ⅱ),診療情報連携共有料,連携強化診療情報提供料,薬剤情報提供料
- 同月の他の診療日に外来管理加算は算定できる。
- (Ⅰ)を算定した日の属する月から起算して6か月以内の期間においては(Ⅱ)は算定できない。
3.その他(参考)
- 従来,脂質異常症,高血圧症,糖尿病を有する患者に対して特定疾患療養管理料を算定してきた場合,今後は,生活習慣病管理料(Ⅰ)または(Ⅱ)で算定することになるが,別に特定疾患療養管理料の対象疾患を有する患者(主病管理が行われている場合)は,引き続き,特定疾患療養管理料を算定することができる。
- 生活習慣病管理料は月1回の算定で,(Ⅰ)は検査,注射,病理診断など包括範囲が多く,(Ⅱ)は(Ⅰ)より出来高算定できる項目が多い。特定疾患療養管理料も含めて,個々の患者の状態に応じて選択することができる。
- (Ⅱ)は,月1回,特定疾患療養管理料を算定していた時と比べて点数差が少ないため,患者自己負担の変化が小さい。併算定可能な点数も多い。検査も出来高算定できることから,例えば糖尿病で検査が多い患者などに対応できる。
- (Ⅰ)は,高血圧症,脂質異常症を有する患者で,比較的症状が安定して検査実施が少ない患者に対する評価として整理された。2,3か月に1回の算定も可能となったため,患者自己負担の観点からも算定のハードルが下がっている。
- 特定疾患療養管理料(他の対象疾患,胃炎,胃潰瘍,喘息等がある場合)は,口頭説明でも十分に理解し,自己管理ができるが,胃炎や喘息等の主病管理が必要な患者で,生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)の要件に該当しない患者に対する評価。月2回算定できる。看護に当たる家族等を通して療養上の管理を行った時も算定できる。