労災保険の社会復帰促進等事業としてのアフターケア実施要領の一部改正について

 アフターケアは,労働者災害補償保険法(以下,「労災保険法」という)第29 条第1項第1号に基づき,社会復帰促進等事業の「業務災害,複数業務要因災害及び通勤災害を被った労働者の円滑な社会復帰を促進するために必要な事業」のひとつとして実施されているものであり,その実施にあたっては,「社会復帰促進等事業としてのアフターケア実施要領」において,対象傷病および措置範囲等を具体的に定め,運用されているところです。
 今般,下記のとおり一部改正されましたので主な改正点をお知らせします。

1 傷病別アフターケア実施要綱の改正について
 「令和5年度 アフターケアに関する検討会報告書(令和6年2月)」を踏まえ,以下の改正を行う。
(1)「第13 外傷による末梢神経損傷に係るアフターケア」について

ア  対象者の範囲
 反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)及びカウザルギーの診断がなくとも,障害等級第12 級と認定した疼痛が残存した者のうち,外傷による「末梢神経障害性疼痛」等と診断され,末梢神経損傷があることが医学的に判断できる場合は,アフターケアの対象とする。
 また,反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)及びカウザルギーという傷病名は,現在では,複合性局所疼痛症候群(CRPS)として広く認識されていることから,アフターケアの対象となる傷病名として,「複合性局所疼痛症候群(CRPS)」を明記する。

イ  措置範囲(保健のための処置)
 疼痛の治療や処置に効果があると認められている向精神薬を支給できることとする。
 また,疼痛の治療等に効果がある「神経障害性疼痛治療薬」を明記する。

(2)「第14 熱傷に係るアフターケア」について

ア  対象者の範囲
 障害等級の要件を第14 級以上の醜状障害が残存した者とする。

イ  措置範囲(保健のための処置)
 内用薬を支給できることとする。
 また,そう痒や疼痛に効果がある薬剤を支給できることとする。

2 複数業務要因災害について
 「雇用保険法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第14 号)により複数業務要因災害についても保険給付を行うこととなったところであるが,複数業務要因災害に係る疾病の範囲は,労働者災害補償保険法施行規則第18 条の3の6により,労働基準法施行規則別表第1の2第8号及び第9号に掲げる疾病その他二以上の事業の業務を要因とすることの明らかな疾病とされ,現時点においては,脳・心臓疾患,精神障害が想定されていることを踏まえ,脳・心臓疾患および精神障害に関連すると考えられる「第10 虚血性心疾患等に係るアフターケア」,「第12 脳の器質性障害に係るアフターケア」及び「第16 精神障害に係るアフターケア」について,関連する箇所を改正する。
 また,複数事業要因災害と認定した者から今回改正の対象とした上記の3つの傷病以外の対象傷病に係る手帳の交付申請があった場合は,本省との協議を経て決定することとする。

3 手帳の名称について
 労働者災害補償保険法施行規則の改正により,アフターケアの対象者に交付する手帳の名称が変更となったことに伴い,関連する箇所を改正する。

4 手帳の返納の取り扱いについて
 期間満了等により不要となった手帳については返納させることとしていたが,事務簡素化の観点から,原則として不要とする。

5 様式の改正について
 上記3及び4に関連する様式について改正するほか,「アフターケアの実施期間の更新に関する診断書」(様式第3号別紙)について,労働局からの交付の可否の判断に必要となるため,実施期間の更新の必要性がない場合の理由の記載を求める様式に変更する。

2024年5月15日号TOP