2024年9月1日号
6月15 日号にて既報のとおり,10 月から長期収載品の保険給付のあり方が見直されることとなり,厚労省が定める基準(※1)に該当する長期収載品を患者が希望する場合,後発医薬品の最高価格帯との価格差の4分の3までを保険給付の対象とし,4分の1は患者負担(選定療養費)となります。
ただし,医療上の必要がある場合や後発医薬品の提供が困難な場合(※2)は従来どおりすべて保険給付の対象(選定療養費対象外)となります。
今般,厚労省より,医療上の必要性があり長期収載品を選定療養の対象としない場合などのレセプトへの記載事項や,院内処方で選定療養とした場合の患者負担金等の具体的な計算方法,さらに,取り扱いに関するQ&Aが示されましたので,お知らせします。
※1 ①後発品上市後5年を経過した長期収載品(置換率が極めて低く,市場に後発医薬品がほぼ存在しない場合を除く)または,②後発品上市後5年を経過していなくても,置換率が50% に達している場合。対象医薬品は厚労省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39830.html)参照
※2 ①医療上の必要性があると認められる場合(例:医療上の必要性により医師が銘柄名処方(後発品への変更不可)をした場合)や,②薬局に後発医薬品の在庫が無い場合など,後発医薬品を提供することが困難な場合
1.レセプト記載について(投薬・注射)
<院内処方の場合>
長期収載品について,選定療養の対象とはせずに,保険給付する場合
別表Ⅰ 診療報酬明細書の「摘要」欄への記載事項等一覧(医科)
<院内処方の場合>
長期収載品を選定療養として処方した場合(処方箋を交付する場合を除く)は,当該医薬品名の後に「(選)」を記載し,所定単位につき,選定療養に係る額を除いた薬価を用いて算出した点数を記載すること。
〔記載例〕
●●●錠(選) 1錠
△△△錠 1錠 17 ×5
<院外処方の場合>
長期収載品について,医療上の必要性があるため「変更不可」欄に「レ」又は「×」を記載して処方箋を交付する場合は,理由について,上記別表Ⅰに示す項目を参照して記載すること。
2.長期収載品の処方等に係る選定療養における費用の計算方法について
※計算方法の詳細は12 ページ参照
※厚労省マスタはhttps://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39830.html を参照
3.長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する疑義解釈について(その1/7月12 日付)【医療上の必要性について】
問1 医療上の必要があると認められるのは,どのような場合が想定されるのか。
(答) 医療機関の医師又は歯科医師(以下,医師等)において,次のように判断する場合が想定される。
また,保険薬局の薬剤師においては,
①,②及び③に関して,医療上の必要性について懸念することがあれば,医師等に疑義照会することが考えられ,また,④に関しては,医師等への疑義照会は要さず,薬剤師が判断することも考えられる。なお,この場合においても,調剤した薬剤の銘柄等について,当該調剤に係る処方箋を発行した医療機関に情報提供すること。
問2 治療ガイドライン上で後発医薬品に切り替えないことが推奨されている場合については,長期収載品を使うことについて,医療上の必要性が認められるということでよいか。例えば,てんかん診療ガイドライン2018(一般社団法人日本神経学会)では,「後発医薬品への切り替えに関して,発作が抑制されている患者では,服用中の薬剤を切り替えないことを推奨する。」,「先発医薬品と後発医薬品の治療的同等性を検証した質の高いエビデンスはない。しかし,一部の患者で,先発医薬品と後発医薬品の切り替えに際し,発作再発,発作の悪化,副作用の出現が報告されている」とされているところ,この場合に医療上の必要性は認められるか。
(答) 医師等が問1の③に該当すると判断し,長期収載品を処方等する医療上の必要があると判断する場合であれば,保険給付となる。
問3 使用感など,有効成分等と直接関係のない理由で,長期収載品の医療上の必要性を認めることは可能か。
(答) 基本的には使用感などについては医療上の必要性としては想定していない。
なお,医師等が問1の①~④に該当すると判断し,長期収載品を処方等する医療上の必要があると判断する場合であれば,保険給付となる。
【薬局における医療上の必要性の判断について】
問4 「長期収載品の処方等又は調剤について」(令和6年3月27 日保医発0327 第11 号)において,「処方の段階では後発医薬品も使用可能としていたが,保険薬局の薬剤師において,患者が服用しにくい剤形である,長期収載品と後発医薬品で効能・効果の差異がある等,後発医薬品では適切な服用等が困難であり,長期収載品を服用すべきと判断した場合には,医療上必要がある場合に該当し,保険給付とすることも想定されること。」とあるが,このような場合には処方医へ疑義照会することなく,薬剤師の上記判断に基づいて,従来通りの保険給付が可能という理解でよいか。
また,医師等が後発医薬品を銘柄名処方した場合であって,「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」又は「×」が記載されていない場合に,長期収載品を調剤する医療上の必要があると考えられる場合は,処方医へ疑義照会することなく,薬剤師の判断で従来通りの保険給付は可能か。
(答) それぞれの場合について,考え方は次のとおりである。
〇医師等が長期収載品を銘柄名処方し,「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」又は「×」が記載されていない場合に,薬剤師として長期収載品を調剤する医療上の必要があると考える場合
・医療上の必要性の判断の観点から,問1において保険薬局の薬剤師について記載するとおりの取扱いとなる。
〇医師等が後発医薬品を銘柄名処方し,「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」又は「×」が記載されていない場合に,薬剤師として長期収載品を調剤する医療上の必要があると考える場合
・変更調剤に該当するところ,「現下の医療用医薬品の供給状況における変更調剤の取扱いについて」(令和6年3月15 日厚生労働省保険局医療課事務連絡)において,当面の間,疑義照会なく,変更調剤できることとしている。
・その上で,医療上の必要性の判断の観点から,問1において保険薬局の薬剤師について記載するとおりの取扱いとなる。
【一般名処方について】
問5 「長期収載品の処方等又は調剤について」において,「一般名処方の処方箋を保険薬局に持参した患者が長期収載品を希望した場合には,選定療養の対象となること。」とあるが,一般名処方された患者が薬局で長期収載品を希望し,薬剤師がその理由を聴取した際に,患者希望ではあるものの,患者の疾病に関し,長期収載品と後発医薬品における効能効果等の違いがある等の医療上の理由と考えられる場合には,保険薬局の判断で従来通りの保険給付とすることは可能か。
(答) 問1の後段に記載する通り。
【院内処方その他の処方について】
問6 院内処方用の処方箋がない医療機関において「医療上の必要性」により長期収載品を院内処方して保険給付する場合,単に医師等がその旨の判断をすれば足りるのか。あるいは「医療上の必要性」について,何らかの記録の作成・保存が必要なのか。
(答) 診療報酬を請求する際に,「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について」(令和6年7月12 日保医発0712 第1号)の別表Ⅰを踏まえ,レセプトの「摘要」欄に理由を選択して記載すること。 ※5ページ参照
問7 院内採用品に後発医薬品がない場合は,「後発医薬品を提供することが困難な場合」に該当すると考えて保険給付してよいか。
(答) 患者が後発医薬品を選択することが出来ないため,従来通りの保険給付として差し支えない。 なお,後発医薬品の使用促進は重要であり,外来後発医薬品使用体制加算等を設けているところ,後発医薬品も院内処方できるようにすることが望ましい。
問8 長期収載品の選定療養について,入院は対象外とされているが,入院期間中であって,退院間際に処方するいわゆる「退院時処方」については,選定療養の対象となるのか。
(答) 留意事項通知において「退院時の投薬については,服用の日の如何にかかわらず入院患者に対する投薬として扱う」とされているところであり,入院と同様に取り扱う。
問9 在宅医療において,在宅自己注射を処方した場合も対象となるか。(答) そのとおり。
【後発医薬品を提供することが困難な場合について】
問10 「当該医療機関又は保険薬局において,後発医薬品の在庫状況等を踏まえ,後発医薬品を提供することが困難な場合」について,出荷停止,出荷調整等の安定供給に支障が生じている品目かどうかで判断するのではなく,あくまで,現に,当該医療機関又は保険薬局において,後発医薬品を提供することが困難かどうかで判断するということでよいか。(答) そのとおり。
【公費負担医療について】
問11 医療保険に加入している患者であって,かつ,国の公費負担医療制度により一部負担金が助成等されている患者が長期収載品を希望した場合について,長期収載品の選定療養の対象としているか。
(答) 長期収載品の選定療養の制度趣旨は,医療上必要があると認められる場合等は,従来通りの保険給付としつつ,それ以外の場合に患者が長期収載品を希望する場合は,選定療養の対象とすることとしたものであることから,今般,対象外の者は設けておらず,国の公費負担医療制度の対象となっている患者が長期収載品を希望した場合についても,他の患者と同様に,長期収載品の選定療養の対象となる。
なお,医療上必要があると認められる場合に該当する場合は,従来通りの保険給付として差し支えない。
問12 医療保険に加入している患者であって,かつ,こども医療費助成等のいわゆる地方単独の公費負担医療の対象となっている患者が長期収載品を希望した場合について,長期収載品の選定療養の対象としているか。
(答) 長期収載品の選定療養の制度趣旨は,医療上必要があると認められる場合等は,従来通りの保険給付としつつ,それ以外の場合に患者が長期収載品を希望する場合は,選定療養の対象とすることとしたものであることから,今般,対象外の者は設けておらず,こども医療費助成等のいわゆる地方単独の公費負担医療が対象となっている患者が長期収載品を希望した場合についても,他の患者と同様に,長期収載品の選定療養の対象となる。 なお,医療上必要があると認められる場合に該当する場合は,従来通りの保険給付として差し支えない。