京都循環器医会からのお知らせ血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版について

 今般,日本心不全学会で「血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版」が作成されましたのでお知らせします。
 心臓機能障害があるが,心不全症状や徴候がない状態を「前心不全」と表記し,スクリーニングの観点からもBNP/NT-proBNPの測定は有用な検査となります。カットオフ値を上回る患者は,精査または循環器専門医への紹介をご検討ください。

2023年改訂版の主な2つの変更点

  1. BNP/NT-proBNPのカットオフ値
    (心不全診断,循環器専門医への紹介基準)に関する変更
  2. BNP/NT-proBNPを用いた心不全管理(ガイド下治療)に関する内容
  1. BNP/NT-proBNP を用いた心不全診断や循環器専門医への紹介基準のカットオフ値
    本改定版での主な変更点は以下の3点である(図1)。
    • 心不全の可能性がある BNP のカットオフ値の変更:BNP 値 40pg/mL を 35pg/mL とした。
    • BNP 値 100pg/mL に対応する NT-proBNP カットオフ値の変更:NT-proBNP 値 400pg/mLを 300pg/mL とした。
    • 心不全診断や循環器専門医への紹介基準の変更:BNP100/NT-proBNP400pg/mL から BNP35/NT-proBNP125pg/mL とした。
図1 BNP/NT-proBNPを用いた心不全診断や循環器専門医への紹介基準のカットオフ値
  1. BNP/NT-proBNPを用いた心不全管理について
    • 心不全診療においてBNP/NT-proBNP値に応じたガイド下治療が実際に予後を改善するかは個々の研究により結果は一貫していないが,最近のメタ解析では,死亡率の低下や心不全再入院の抑制が示唆されている。
    • 急性心不全による入院患者では退院時のBNP/NT-proBNP値が入院時の30%以上低下(改善)していれば,退院後の予後(死亡や心不全の再入院などの心血管イベント)が良好であることが報告されている。
    • 慢性心不全においては過去のBNP/NT-proBNP値を参照しつつ,個々の症例に最適なBNP/NTproBNP値を見つけ,その値を目標として,定期的に測定をし心不全管理を行うべきである。前回に較べてBNPが40%以上,NT-proBNPが30%以上上昇した時には,心不全の増悪の可能性を考慮し,その原因を探索し,早期介入することが必要である(図2参照)。
    • 心不全管理においてはBNP/NT-proBNP値を参考に最新の心不全診療ガイドラインに準じた標準治療薬の強化を含めた適切な治療介入,生活習慣の是正(禁煙,断酒,減塩,食事や運動の適正化など),多職種による介入などを含めた包括的な疾病管理が重要である。
図2 BNP/NT-proBNPを用いた慢性心不全管理

詳細は,日本心不全学会ホームページをご覧ください。
「血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版」
https://www.asas.or.jp/jhfs/topics/bnp20231017.html

2024年9月15日号TOP