1月15日号,5月1日号にて既報の「かかりつけ医機能報告制度」について,厚生労働省が実務を担う都道府県向けの「かかりつけ医機能の確保に関するガイドライン」を作成しました。
報告を行う医療機関や,地域でかかりつけ医機能を確保するための取組に参画する医療関係者等の理解を深めるものとなるよう作成されていますので,抜粋してお知らせします。
なお,今後のスケジュールとしては,11月頃に都道府県から各医療機関に案内がなされ,令和8年1月~3月に報告することとなります。また,秋頃に「かかりつけ医機能報告マニュアル(仮称)」が示される予定であり,詳細はあらためてお知らせします。
かかりつけ医機能の確保に関するガイドライン(第1版)
令和7年6月(抜粋)
第2章 かかりつけ医機能報告
第1節 総論
- かかりつけ医機能報告制度の目的
- かかりつけ医機能報告は,医療機能情報提供制度の刷新と相まって,地域において必要とされるかかりつけ医機能の充実強化を図り,国民の医療機関の選択に資する情報を提供することを通じて,国民・患者にとって医療サービスの向上につなげることを目指すものである。
- その上で,本制度は,一部の医療機関を優良なものとして認定したり,患者の受療行動に制限を加えるといったものではなく,必要なときに迅速に必要な医療を受けられるフリーアクセスの考え方のもとで,国民・患者がそのニーズに応じてかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるための情報提供を強化し,地域の実情に応じて,各医療機関が機能や専門性に応じて連携しつつ,自らが担うかかりつけ医機能の内容を強化することで,地域において必要なかかりつけ医機能を確保することが目的であることに留意が必要である。
- 複数の慢性疾患や医療・介護の複合ニーズ等を抱える高齢者が増加する一方,医療従事者確保の制約が大きくなる中で,多くの医療機関が参画して,地域で必要なかかりつけ医機能を確保することが重要であり,各医療機関からの報告を受けて,地域の協議の場において地域の医療関係者等が協議を行い,地域で不足する機能を確保する方策(プライマリケア研修や在宅医療研修等の充実,夜間・休日対応の調整,在宅患者の 24 時間対応の調整,後方支援病床の確保,地域の退院ルール等の調整,地域医療連携推進法人制度の活用等)を検討・実施していくことが特に重要である。
- かかりつけ医機能報告制度の概要(詳細後述)
- 慢性疾患を有する高齢者その他の継続的に医療を必要とする者を地域で支えるために必要なかかりつけ医機能について,各医療機関から都道府県知事に報告する。
- 都道府県知事は,報告をした医療機関が,かかりつけ医機能の確保に係る体制を有することを確認し,外来医療に関する地域の関係者との協議の場(以下「協議の場」という。)に報告するとともに,公表する。
- 都道府県知事は,協議の場で,地域で必要なかかりつけ医機能を確保するための具体的方策を検討・公表する。
- かかりつけ医機能報告制度の対象医療機関
- かかりつけ医機能報告を行うかかりつけ医機能報告対象病院等は,特定機能病院及び歯科医療機関を除く,病院及び診療所である。
- かかりつけ医機能報告制度の報告方法
- かかりつけ医機能報告の報告は,医療機能情報提供制度に基づく報告と同時期に,医療機関等情報支援システム(以下「G-MIS」という。)又は紙調査票により行うものとする。
※原則として G-MIS による報告が望ましい。紙調査票は,各都道府県において地域の実情も踏まえて運用する。
第2節 かかりつけ医機能報告制度のスケジュール
-
かかりつけ医機能報告制度の年間スケジュール(主なもの)
- かかりつけ医機能報告は,医療機能情報提供制度に基づく報告と同時期に行うこととなっており,概ね以下のようなサイクルを想定している。
年間サイクルのイメージ
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制度施行後の当面のスケジュール
- かかりつけ医機能報告制度の施行後の当面のスケジュールは以下のとおりである。
① 令和7年4月~ 令和7年度報告及び協議の場の開催に向けた体制整備等
- 都道府県は,令和7年度報告に向けた庁内体制を整備する。
※医療機能情報提供制度の現行のスキームや人員体制等を踏まえて検討
- 都道府県は,医療機関へかかりつけ医機能報告制度の施行に関する周知を行う。
- 都道府県は,市町村と調整しながら協議の場の開催に向けた調整等を行う。
- 既存の協議の場等の体制確認,活用可能な会議体の検討
- 協議を進める際のキーパーソンの確認
- コーディネーターの配置体制や役割等の検討
- 協議テーマ案の検討
- 圏域・参加者の検討
- 上記を踏まえた都道府県担当者や体制の検討 など
② 令和7年 11 月頃~ 医療機関への定期報告依頼
- 都道府県は,医療機関に対し,令和7年度かかりつけ医機能報告の案内(依頼)を行う。
※医療機能情報提供制度の報告案内と併せて行うことも可能
③ 令和8年1~3月 医療機関による報告及び都道府県による体制の有無の確認
- かかりつけ医機能報告対象病院等は,所在地の都道府県に,かかりつけ医機能報告を行う。
(医療法第 30 条の 18 の4第1項)
- 都道府県は,報告をした医療機関(2号機能のいずれかを有する旨の報告をしたもの)が,かかりつけ医機能の確保に係る体制を有することを確認する。(医療法第 30 条の 18 の4第2項)なお,当該確認は報告事項から体制を有することを確認し,必要に応じて,担当者等の体制を確認すること。
- 体制に変更があった場合
2号機能の体制の確認を受けたかかりつけ医機能報告対象病院等の管理者は,当該確認を受けた体制について変更が生じたときは,その旨を都道府県知事に報告しなければならない。この場合において,当該報告を受けた都道府県知事は報告事項で体制を有することを確認する。必要な場合は担当者等の体制を確認する。
(医療法第 30 条の 18 の4第4項)
- ③の報告期間内に報告を行わない医療機関がある場合には,都道府県が当該医療機関に対して報告の催促等を行うこと。なお,都道府県は,かかりつけ医機能報告対象病院等の管理者が報告をせず,又は虚偽の報告をしたときは,期間を定めて,当該かかりつけ医機能報告対象病院等の開設者に対し,当該管理者に報告を行わせ,又はその報告の内容を是正させることを命ずることができることとされている。7(医療法第 30 条の 18 の4第6項)
④ 令和8年4月~ 報告内容の集計・分析及び報告内容等の公表
- 都道府県は,報告された内容及び体制の有無の確認結果を都道府県ウェブサイト等において公表する。(医療法第 30 条の 18 の4第3項及び第7項)
- 都道府県は,報告された内容を集計・分析し,地域のかかりつけ医機能の確保状況を把握するとともに,分析の結果抽出された課題を整理し,協議の場の開催に向けた準備を行う。
⑤ 令和8年7月~ 協議の場での協議
- 都道府県は,医療関係者や保健所,市町村等との協議の場を設け,かかりつけ医機能の確保に関する事項について協議を行い,協議結果をとりまとめ公表する。(医療法第 30 条の18 の5第1項)
- なお,当該協議にあたっては,④における分析結果や国から提示される基礎データ等も活用し,協議すべきテーマ(課題)等について検討を行うこと。
- その上で,協議の結果(とりまとめ)も踏まえつつ,地域の関係者等とも連携しながら,地域において必要なかかりつけ医機能を確保するための具体的方策を講じる。
7 医療法第30 条の18 の4第6項の規定に基づく命令に違反した者は,三十万円以下の過料に処するとされている。(医療法第92 条)
第3節 報告を求めるかかりつけ医機能
-
かかりつけ医機能とは
- かかりつけ医機能報告制度において報告を求める「かかりつけ医機能」とは,慢性疾患を有する高齢者等の継続的な医療を要する者を地域で支えるために確保すべき機能であり,いわゆる「1号機能」と「2号機能」で構成される。具体的には以下の機能である。(医療法第30 条 18 の4第1項第1号及び第2号)
-
かかりつけ医機能の要件と報告項目
- 各機能の具体的な内容や背景等は以下のとおりである。
<1号機能>
- 1号機能を有する医療機関であるかは,(★)が付記されている報告事項について,「実施している」あるいは「実施できる」ことが要件となることに留意されたい。
8 (参考)平成 25年8月の日本医師会・四病院団体協議会合同提言「かかりつけ医は,日常行う診療においては,患者の生活背景を把握し,適切な診療及び保健指導を行い,自己の専門性を超えて診療や指導を行えない場合には,地域の医師,医療機関等と協力して解決策を提供する。」
9 今後,かかりつけ医機能に関する研修の要件を設定し,該当する研修を示す予定。
- 院内掲示様式(例)については,P 12 で示しているため適宜活用されたい。また,G-MIS においても報告内容が記載された院内掲示用の様式を出力できるようにシステム開発を行うこととしている。
- 17 の診療領域
皮膚・形成外科領域,神経・脳血管領域,精神科・神経科領域,眼領域,耳鼻咽喉領域,呼吸器領域,消化器系領域,肝・胆道・膵臓領域,循環器系領域,腎・泌尿器系領域,産科領域,婦人科領域,乳腺領域,内分泌・代謝・栄養領域,血液・免疫系領域,筋・骨格系及び外傷領域,小児領域のこと。
- 一次診療を行うことができる疾患
患者調査による推計外来患者数が多い傷病を基に検討して設定された疾患のこと。
- オンライン資格確認を行う体制,オンライン資格確認等システムの活用により診療情報等を診察室等で閲覧・活用できる体制,電子処方箋により処方箋を発行できる体制,電子カルテ情報共有サービスにより取得される診療情報等を活用する体制のこと。
図5 一次診療に関する報告ができる疾患
【上記例の設定の考え方】
- 一次診療に関する報告ができる疾患は,患者調査による推計外来患者数が多い傷病を基に検討して設定する。
- 推計外来患者数が 1.5 万人以上の傷病を抽出。該当する傷病がない診療領域は最も推計外来患者数の多い傷病を追加。
ICD-10 中分類を参考に類似する傷病を統合。
- XXI 健康状態に影響を及ぼす要因及び保健サービスの利用,その他の大分類の疾患,歯科系疾患は除く。
出典:かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会 報告書
令和6年7月 31 日資料(一部改)
<2号機能>
- 1号機能を有する医療機関は,2号機能に係る報告を行う。
- 2号機能を有するかどうかについては,2号機能に係る各報告事項のうち,いずれかについて「実施している」あるいは「実績がある」ことが要件であることに留意されたい。
※その他の報告事項
- 健診,予防接種,地域活動(学校医,産業医,警察業務等),学生・研修医・リカレント教育等の教育活動 等
- 1号機能及び2号機能の報告で「当該機能有り」と現時点でならない場合は,今後担う意向の有無
留意事項
- 1号機能を有する医療機関は,2号機能に係る報告を行う。
- 各報告事項については,原則として,毎年1月1日時点の体制や状況について報告を行うこととするが,実績に関する報告事項については直近1年分(前年1月1日から 12 月 31 日)が報告対象となる。ただし,診療報酬に関する報告事項については,NDB データ16からG− MIS への自
動取込を行うため,前年度4月から3月までの1年度分の実績(合計値)が報告対象となることに留意すること。(前年度4月から3月診療分の電子レセプトによる診療報酬請求がある医療機関では,厚生労働省において必要な項目の集計を行い,集計結果があらかじめ反映(プレプリント)される。医療機関において,集計内容について確認の上,必要に応じて修正を行うこと。)
- 報告基準日である1月1日時点において休院している医療機関はかかりつけ医機能報告対象病院等から除外されるが,再開した時点からかかりつけ医機能報告対象病院等となる。また,報告期間中に廃院した医療機関についてはかかりつけ医機能報告対象病院等から除外して差し支えない。さらに,報告期間中に新規開設された医療機関については次年度からかかりつけ医機能報告対象病院等として取り扱うこと。
- なお,かかりつけ医機能報告の具体的な運用や各報告事項の詳細については,令和7年度中に「かかりつけ医機能報告マニュアル(仮称)」を厚生労働省より発出予定であるため,そちらを参照されたい。
10 患者が早期に自宅に帰れるように,治療を受けるすべての医療機関で共有する診療計画のこと。厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001239485.pdf
11 医療法により,地域医療を担うかかりつけ医等を支援する能力を備え,地域医療の確保を図る病院としてふさわしい医療機関について,都道府県知事が個別に承認する病院のこと。主に各地の急性期病院の中核を担う医療機関。厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001239485.pdf
12 高度な入院治療を受ける前後の外来や特殊な治療機器を使用するような一般的に受診するには紹介状が必要とされる医療機関として都道府県が公表した病院のこと。厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001239485.pdf
13 市町村等が主催し,地域包括システムの深化・推進に向けて,高齢者個人に対する支援の充実とそれを支える社会基盤の整備のための地域の関係者による会議。①個別課題解決機能,②ネットワーク構築機能,③地域課題発見機能,④地域づくり・資源開発機能,⑤政策形成機能を有する。厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001236582.pdf
14 介護支援専門員が居宅サービス計画の作成のために,利用者及びその家族の参加を基本としつつ,居宅サービス計画の原案に位置付けた指定居宅サービス等の担当者を招集して行う会議。または,相談支援専門員がサービス等利用計画の作成のために,利用者及びサービス利用計画案に位置付けた福祉サービス等の担当者を招集して行う会議。指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準より改編:https://laws.egov.go.jp/law/411M50000100038
15 Advance Care Planning(人生会議)。もしものときのために,患者自身が望む医療やケアについて前もって考え,家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い,共有する取組のこと。厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html
16 厚生労働省保険局が管理している「レセプト情報・特定健診等情報データベース」のこと。保険者から収集したデータで構築されている。厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001258154.pdf
第4章 かかりつけ医機能の協議について
第1節 総論
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協議の目的
- かかりつけ医機能報告により収集したデータ等によって明らかとなった医療・介護資源の実情や地域で不足するかかりつけ医機能に係る課題について,地域における医療関係者や市町村等とも認識を共有しながら,地域で不足するかかりつけ医機能を確保するための具体的方策について検討を行う。
-
協議の場の立ち上げに向けたポイント
- 協議の場の立ち上げに際しては,都道府県,市町村,医師会等主体は問わず,既存の場で同様の趣旨・内容を協議している,または協議可能な会議体がないか確認する。
- その際,医療分野だけではなく,都道府県・市町村の介護・福祉分野を含めた会議体の現状把握が重要となる。
(例)地域医療構想調整会議,在宅医療・介護連携推進会議など
- 活用できる既存の会議体がある場合,参加者についても追加・変更する必要があるか検討する。その際,地域の具体的な課題や具体的方策について協議が可能かどうか精査することが必要である。
- かかりつけ医機能を協議するにあたって適切な会議体がない場合は,都道府県の介護部局,市町村や医療・介護関係者等と相談しながら,協議の場の在り方を検討し,新たな協議の場の立ち上げを含め検討する。
- 協議を円滑に進めるにあたっては協議の目的・内容に応じた「地域のキーパーソンが誰か」ということを都道府県介護部局,市町村,医療・介護関係者等と相談し,協議の場に参加してもらうことが重要である。
※地域医療構想調整会議との関係について
- かかりつけ医機能に関する協議の場について,その対象区域が構想区域等と一致する場合には,当該構想区域等における協議の場を活用することが可能である。
- なお,新たな地域医療構想においては,2040年頃を見据え,外来・在宅医療,介護との連携等を含む地域における将来の医療提供体制全体の課題解決をするものとしている。外来医療・在宅医療については,かかりつけ医機能報告や外来機能報告等のデータを基に,地域の外来・在宅・介護連携などに関する状況や将来の見込みを整理して課題を共有し,地域において必要なかかりつけ医機能の確保・強化等,必要な外来医療・在宅医療の提供のための取組を行うこととしている。
図6 協議の場の開催に向けた流れ
第5章 患者への説明
第1節 総論
-
目的
- インフォームド・コンセントの理念等を踏まえ,医療従事者等が診療情報を積極的に提供することにより,患者等が疾病と診療内容を十分理解し,医療従事者と患者等が共同して疾病を克服するなど,医療従事者と患者等とのより良い信頼関係を構築する。
- また,患者が積極的に自らの健康管理を行っていく上でも,患者と医療従事者が診療情報を共有していくことが重要である。
- 医療法において,かかりつけ医機能(2号機能)の確保に係る体制を有することについて都道府県知事の確認を受けた医療機関は,慢性疾患を有する高齢者等に在宅医療を提供する場合,その他外来医療を提供するに当たっておおむね4ヶ月以上継続して医療を提供することが見込まれる場合であって,患者又は家族から求めがあったときは,正当な理由がある場合を除き,疾患名,治療計画等について適切な説明が行われるよう努めなければならないこととされている。
-
制度の概要
- 対象医療機関
かかりつけ医機能(2号機能)の確保に係る体制を有することについて,都道府県知事の確認を受けた医療機関
- 対象患者
慢性疾患を有する高齢者等の継続的な医療を要する患者
- 対象となる場合
在宅医療を提供する場合その他外来医療を提供するに当たっておおむね4カ月以上継続して医療を提供することが見込まれる場合で,患者やその家族から求めがあったときは,正当な理由がある場合を除き(※),説明を行うことについて努力義務が生じる。
- 正当な理由がある場合として,説明の努力義務が免除される場合
- 説明を行うことで,当該患者の適切な診療に支障を及ぼすおそれがある場合
- 説明を行うことで,人の生命,身体又は財産に危険を生じさせるおそれがある場合
- 説明方法
説明は,いずれかの以下の方法により行う。
- 書面により提供する方法
- 電子メール等により提供する方法
- 磁気ディスクの交付により提供する方法
- 患者の同意を得て電子カルテ情報共有システムにおける患者サマリーに入力する方法
- 説明の内容
説明にあたっては以下の項目について説明を行うこと。
- 疾患名,治療に関する計画,当該病院又は診療所の名称,住所及び連絡先
- 「当該患者に対して発揮するかかりつけ医機能」
※当該患者に対する1号機能や2号機能,2号機能を連携して確保する場合は連携医療機関
- 「病院又は診療所の管理者が患者への適切な医療の提供のために必要と判断する事項」
※P 13 ~ 16 において,「患者説明様式(例)」を示しているので,適宜活用されたい。
院内掲示様式(例)
当院におけるかかりつけ医機能について
当院は,発生頻度の高い疾患についての診療を行い,日常的な診療において,患者様の生活背景を把握し,適切な診療・保健指導を行い,必要な場合には,地域の医師・医療機関と協力して解決策を提供します。この他,患者さんが適切な医療機関の選択ができるように,当院の有する「かかりつけ医機能」に関する体制を以下のように報告します。
〇〇病院/診療所
20XX 年 XX 月 XX 日
- かかりつけ医機能に関する研修の修了者および総合診療専門医について
- 一次診療の対応について
(1) 一次診療の対応ができる領域
(2) 一次診療を行うことができる発生頻度が高い疾患
3.医療に関する患者からの相談への対応について可 不可
患者説明様式(例)
かかりつけ医機能に関する療養計画書
令和 年 月 日
注) 上記内容は,現時点で考えられるものであり,今後,状態の変化等に応じて変わり得るものである。
(主治医⽒名)
参考(医療機関向け)
かかりつけ医機能の体制を有する医療機関の患者等への説明
- 患者説明の概要
- かかりつけ医機能の体制を有することについて都道府県知事の確認を受けた医療機関は,患者やその家族からの求めに応じて,疾患名や治療計画,医療機関の情報に加え,かかりつけ医機能に係る情報を適切に説明するよう努めることとされています(努力義務)。説明は書面や電子メール等を通じて行われ,患者が理解しやすい形で提供されることが求められます。
- 対象となる医療機関
- かかりつけ医機能報告を行う対象医療機関(特定機能病院及び歯科医療機関を除く病院及び診療所)のうち,2号機能の体制を有していることを都道府県より確認を受けた医療機関が対象になります。
- 取組みの開始時期
- かかりつけ医機能報告制度は令和7年4月より施行されましたが,2. に記載の通り,その対象はかかりつけ医機能の体制を有している確認を受けた医療機関になります。そのため,実際にかかりつけ医機能に関する患者説明が努力義務になるタイミングは,報告開始以降(令和8年1月以降)になります。
- 説明が必要となるケース(努⼒義務が発生するケース)
- 以下に当てはまる患者又はその家族から求めがあった場合に,説明が必要になります。
- 在宅医療や外来医療を受けており,概ね4ヶ月以上継続して医療を提供することが見込まれる者
- 患者に対する説明内容
- 医療法において,疾患名,治療に関する計画,当該病院又は診療所の名称,住所及び連絡先,その他厚生労働省令で定める事項について,適切な説明が行われるように努めなければならないこととされています。
- 疾患名
- 治療に関する計画
説明内容イメージ(診療報酬で療養計画を説明する場合は,説明内容で代替可)
- 現在の症状(症状,ADL の状況,体温・脈拍・排便・⾷事などの状況や疼痛の有無など)
- 治療方針・計画・内容(スケジュール,目標,治療内容(検査・服薬・点滴・処置などの予定)など)
- その他(生活上の配慮事項など)
- 当医療機関の名称,住所及び連絡先
- その他厚生労働省令で定める事項
- 当該患者に対して発揮するかかりつけ医機能(当該患者に対する1号機能や2号機能,2号機能を連携して確保する場合は連携医療機関の名称と連携内容)
説明内容イメージ
- 1号機能の内容 ※院内掲示している自院のかかりつけ医機能について説明
- 2号機能の内容 ※機能を有するもののみの説明でも可
- 通常の診療時間外の診療
- 自院又は連携による通常の診療時間外の診療体制の確保状況,連携して確保する場合は連携医療機関の名称及び連絡先
- 入退院時の支援
- 自院又は連携による後方支援病床の確保状況,連携して確保する場合は連携医療機関の名称
- 自院における地域の退院ルールや地域連携クリティカルパスへの参加状況
- 在宅医療の提供
- 自院又は連携による在宅医療を提供する体制の確保状況,連携して確保する場合は連携医療機関の名称
- 自院における在宅看取りの実施状況
- 介護サービス等と連携した医療提供
- 介護サービス等の事業者と連携して医療を提供する体制の確保状況
- 介護保険施設等における医療の提供状況(協力医療機関となっている施設の名称)
- 地域の医療介護情報共有システムの参加・活用状況
- ACP の実施状況
- 病院⼜は診療所の管理者が患者への適切な医療の提供のために必要と判断する事項
- 患者に説明する方法
- 患者又はその家族に対する説明として,以下の方法があります。
- 書面により提供する方法
- 電子メール等により提供する方法
- 磁気ディスク等の交付により提供する方法
- 患者の同意を得て電子カルテ情報共有システムにおける患者サマリーに入力する方法
※電子カルテ情報共有システムは開発中
- 説明の努⼒義務が免除されるケース
- 患者又はその家族から説明の求めがあっても,以下の場合には説明の努力義務は免除されます。
- 説明を行うことで,当該患者の適切な診療に支障を及ぼすおそれがある場合
- 説明を行うことで,人の生命,身体又は財産に危険を生じさせるおそれがある場合
- 説明作成に当たっての留意事項
- 患者又はその家族が理解できるように,なるべく分かりやすい⽂章で記載して下さい。また,必要に応じて図表を使用してください。
- 可能な限り専門用語や難解な言葉を使用しないで下さい。使用する場合は,これらの後にカッコをつけて解説を加えて下さい。
- 印字される患者⽒名欄は誤認防⽌のため,強調かつ目立つ大きさで記述して下さい。
かかりつけ医機能に関する療養計画書(記載例)
令和 年 月 日
注) 上記内容は,現時点で考えられるものであり,今後,状態の変化等に応じて変わり得るものである。
(主治医⽒名)
かかりつけ医機能報告制度 Q&A集(第1版)(抜粋)
厚生労働省医政局総務課
令和7年6月
1 かかりつけ医機能報告
Q1.かかりつけ医機能報告制度の目的は何か。
本制度は,地域で必要とされるかかりつけ医機能の充実・強化を図り,国民の医療機関の選択に資する情報を提供することを通じて,国民・患者に対する医療サービスの向上につなげることを目指すものです。
各医療機関からの報告を受けて,地域で協議を行い,不足する機能を確保する方策を検討・実施していくことが重要です。
Q2.病床機能報告・外来機能報告との関係について教えてほしい。
病床機能報告は,医療機関の病床機能の現状と今後の方向について報告し,その報告データに基づいて地域での議論を進めるものであり,また,外来機能報告は,地域の医療機関の外来機能の明確化・連携に向けた議論を地域で進めるものです。一方,かかりつけ医機能報告は,医療機関からかかりつけ医機能について報告いただき,地域で不足する機能を確保する仕組みです。
Q3.本制度により,医療機関にはどのようなメリットがあるのか。
時間外診療や入退院支援,在宅医療等のかかりつけ医機能を報告いただき,それが公表されることで,地域の医療機関が有するかかりつけ医機能や連携状況等について把握できるようになります。また,各医療機関から報告されたかかりつけ医機能の情報は,医療情報ネット(ナビイ)を通じて,国民・患者にも広く情報提供することができます。
Q5.1号機能を有する医療機関として,2号機能の報告を行う医療機関の要件は何か。
1号機能に係る以下の事項に該当する場合には,1号機能を有する医療機関として,2号機能の報告を行うことになります。
・ 1号機能に係る具体的な機能を有すること及び1号機能に係る一定の「報告事項」について院内掲示による公表をしていること
・ いずれかの診療領域について一次診療を行うことができること
・ 医療に関する患者からの相談に応じることができること(継続的な医療を要する者への継続的な相談対応を含む)
Q6.1号機能の報告事項のうち「かかりつけ医機能に関する研修の修了者の有無」があるが,どのような研修が該当するのか。
厚生労働科学研究班での検討結果を踏まえて改めてお示しする予定です。
Q7.1号機能の報告事項のうち「17 の診療領域ごとの一次診療の対応可否」や「一次診療を行うことができる疾患」があるが,対応可能な日時等が限定的であっても,「対応できる」として報告することは可能なのか。(例:毎月第2水曜の午前のみ,対応可能な医師がいるなど)
可能です。各報告事項に係る詳細については,令和7年度秋頃に厚生労働省において作成予定の「かかりつけ医機能報告マニュアル(仮称)」を参照ください。
2 住民への普及啓発・理解促進
Q9.本制度により,国民や患者にはどのようなメリットがあるのか。
地域の医療機関が有するかかりつけ医機能が見える化されることにより,国民・患者が自らのニーズに応じた医療機関をさらに選択しやすくなります。また,本報告に基づき,それぞれの地域においてかかりつけ医機能を地域全体で確保するための協議を通じて,地域のニーズに沿って必要な医療提供体制を強化することにつながり,医療サービスの向上につなげることを目的としています。
3 協議の場について
Q11.協議の場の圏域について,単位は市町村となるイメージか。
かかりつけ医機能の協議の場の圏域は,例えば,時間外診療や在宅医療,介護等との連携等は市町村単位等(小規模市町村の場合は複数市町村単位等)で協議を行い,入退院支援等は二次医療圏単位等で協議を行うことが考えられます。ただし,各自治体の規模や地域の実情等によって適当な圏域は異なるものであり,協議テーマや取組状況等を踏まえて,実施主体である都道府県が市町村と調整して決定することが重要です。なお,政令指定都市等において,区単位で協議を行うことも考えられます。
Q13.協議について,地域医療構想調整会議や在宅医療・介護連携推進会議等,既存の協議の場を活用することは可能なのか。また,その場合において,時間を分けて開催するのではなく,同じ協議の中で議題を分けて実施しても良いか。
既存の協議の場を活用することも可能です。医療分野のみならず,都道府県や市町村の介護・福祉分野を含む既存の協議の場で同様の趣旨・内容について協議している,または,活用可能な協議の場がないかを検討ください。活用できる既存の協議の場がある場合には,参加者の追加や変更等の必要があるかを検討いただくようお願いします。なお,かかりつけ医機能については,既存の協議の場を活用する場合であっても,医療法に基づく外来医療に関する協議の場として開催する必要がある点にご留意ください。
また,議題の設定等の具体的な運用については,各都道府県の実情に応じて検討いただいて差し支えありませんが,かかりつけ医機能の協議の場として適切に議題設定がなされているか,必要な論点が網羅されているか等についてご留意ください。
Q14.協議について,市町村が実施主体である既存の協議の場に,都道府県がかかりつけ医機能に係る議題提供を行い実施することでも差し支えないか。
各都道府県の実情に応じて,協議の開催事務について市町村と役割を調整して運用することは差し支えありませんが,具体的な議題の決定や具体的方策の検討,協議後の検討や関係者間の調整等については,あくまでも,医療法上の実施主体である都道府県において中心的な役割を担う必要がありますのでご留意ください。
Q15.新たな地域医療構想との関係性について教えて欲しい。
新たな地域医療構想においては,2040 年頃を見据え,外来・在宅医療,介護との連携等を含む地域における将来の医療提供体制全体の課題解決をするものとして検討しています。このうち,外来・在宅医療については,かかりつけ医機能報告のデータ等を踏まえ,地域の外来・在宅医療,介護連携などに関する現状や将来の見込みを整理して課題を共有した上で,地域の協議を通じて取組を進めていくことを検討しています。
このため,先行して開始されるかかりつけ医機能に関する協議についても,2040 年頃の医療提供体制を見据えて議論を進めていただくことが重要です。
4 患者への説明
Q20.患者説明の様式は,医療機関が任意で作成したものでも良いのか。
医療法に定める事項について記載している場合には差し支えありません。なお,ガイドラインの別冊として,患者説明様式(例)をお示ししておりますので,適宜ご活用ください(P 13 ~ 16 参照)。
Q21.患者説明を行うことが努⼒義務とされる「都道府県知事の確認を受けた医療機関」とは具体的にどういうことか。
1号機能を有する医療機関が2号機能について報告を行うこととなりますが,患者説明が努力義務となるのは,2号機能に係る体制を有することについて都道府県知事の確認を受けた医療機関が対象となります。