2025年12月1日号
府医では,府民・市民向け広報誌「BeWell」,VOL.109「帯状疱疹」を発刊しました(本号に同封)。
各医療機関におかれましては,本紙を診療の一助に,また待合室の読み物としてご活用ください。
本誌に関するお問い合わせは,府医総務課(電話:075-354-6102,FAX:075-354-6074)までご連絡ください。
小西皮膚科クリニック 院長 小西 啓介
帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルス(水ぼうそうウイルス=VZV)による感染症です。VZVはすべての人が感染し皮膚に水ぼうそうを発症すると,その部位の感覚神経を上行し,その神経節に一生潜伏している。我々は,主に細胞性免疫でウイルスを抑制しているが,加齢,様々な疾患,ストレスなどの影響で免疫が低下すると神経節でのVZVの増殖を何度でも許し,神経節で増殖したウイルスは感覚神経の中を移動し,皮膚に帯状に紅斑や水疱を形成する。治癒しても瘢痕となり傷痕が残る。移動時に神経に傷がつくことで神経痛や感覚麻痺などを引き起こす。
痛みは時間とともに消退することが多いが,後遺症として痛みや異常感覚が残ってしまう帯状疱疹後神経痛は痛みの中でも最も痛いものの一つと言われている。また神経根で運動神経へ感染が波及すると部位によってさまざまな運動麻痺を生じる。顔面では顔面神経麻痺や眼球運動障害などを起こすことがある。また眼神経や内耳神経に傷害が及ぶと視力障害や聴力低下,平衡感覚障害を起こす。躯幹でも腹筋麻痺により腹部片側の膨隆,仙骨部では排尿・排便障害を起こすことがある。神経因性膀胱では膀胱炎や腎盂腎炎などの泌尿器系感染症の続発の危険性もある。また全身の神経節でウイルスが増殖しているため,どの部位に生じた帯状疱疹でも脳炎や髄膜炎の危険性がある。
帯状疱疹の主因は自らの免疫の低下と言える。従って発症予防には日頃からストレスを溜めず,働き過ぎに注意し食生活にも気を止めて免疫を保つことが重要である。
発症した場合,できるだけ早く抗ウイルス剤を投与することが最も重要である。抗ウイルス剤も複数の薬剤の中で,それぞれの患者さんに合ったものを適量投与する。帯状疱疹関連通の痛みには十分な痛み止めを使用することが後遺症を残さないためにも重要である。
帯状疱疹から帯状疱疹への感染はないが,水疱内には水ぼうそうウイルスがいるため同居人を中心に2週間の潜伏期間を経て水痘をうつすことがある。
自らの免疫を保つために,加齢によるVZV免疫低下対策として,50歳以降に自己負担でワクチン接種が可能になった。特に令和7年度から65歳での定期接種に公費負担制度ができた。65歳以降も5年刻みで公費負担されるので,この機会にぜひワクチン接種をご検討ください。ワクチンには国産の生ワクチンと外国製の不活化クチンがあるが,それぞれ長所,短所があるので,それぞれの患者に合ったものを接種してください。