保険医療部通信(第411報)– 令和8年度 診療報酬改定の論点<その2>

 8月下旬から社会保障審議会医療保険部会・医療部会で改定の基本方針の議論が開始される中,中医協では10月から第2ラウンドとして診療報酬改定項目の具体的な議論が開始された。
 外来医療では,機能強化加算と生活習慣病管理料が議論され,支払側は機能強化加算をかかりつけ医機能を評価する点数に作り変えるべきと提案した。また,生活習慣病管理料(Ⅰ)は検査の頻度などに応じて点数を適正化することや,前回改定に続き,算定要件である丁寧な問診や詳細な診察があいまいとして外来管理加算の廃止を主張した。
 こうした発言に対して,江澤日医常任理事は,機能強化加算がすでにかかりつけ医機能を発揮する役割を果たしていることを説明したほか,生活習慣病管理料は療養計画書の記載内容や提供頻度,包括範囲の緩和を求めた。また,外来管理加算は計画的な医学管理のもと適切な治療を行っていることから廃止には全く容認できないと反論した。
 また,入院医療では,急性期,包括期,慢性期それぞれの議論が行われ,急性期一般入院料1を救急搬送件数等の実績に応じて見直すことや,入院料2~6と地域包括医療病棟の患者像が似ていること,療養病棟入院基本料の医療区分2・3の患者割合の引上げなどが議論の俎上に上がっている。江澤日医常任理事は厳しい病院経営の中で大きな見直しや適正化は厳に慎むべきと釘をさすとともに,重症度,医療・看護必要度において内科疾患を適切に評価する仕組みや地域包括医療病棟の施設基準の緩和などを要望した。
 一方で,診療報酬改定の財源を巡っては,11月に財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会が2026年度予算編成に向けた議論を開始した。その中では,診療所は病院に比べて高い利益率を維持していることから,診療所の報酬の適正化が不可欠と主張。さらに個別の診療報酬の見直しにまで言及し,かかりつけ医機能を有しない医療機関の初・再診料の減算や外来管理加算,機能強化加算の廃止,特定疾患療養管理料と特定疾患処方管理加算の併算定不可など,医療側からするとおよそ看過できない提案がされた。
 これに対して,松本日医会長は「人材流出と経営悪化により医療・介護提供体制が維持できなくなるという危機感が全く感じられない」と述べ,「極めて遺憾であり,強く抗議する」と即座に反論した。診療所の報酬の適正化は必要との主張に対しても「怒りでしかない」と発言し,病院だけでなく診療所の利益率も年々悪化していることを指摘した。さらに,今回はインフレ下での『今後の道しるべ』となる極めて重要な改定であり,デフレ下における10数年間の「適正化」名目による誤った医療費抑制策を踏襲せず,骨太の方針2025に記載されたとおり,高齢化による増加分に,経済・物価動向等に対応する増加分を着実に加算することを求めた。
 また,個別の診療報酬の内容に言及していることに,「財政的観点のみから財政審が個別の診療報酬まであげつらうことは越権行為と言わざるを得ず,看過できない」と強く批判した。
 本号では,10月1日号保険医療部通信「令和8年度診療報酬改定の論点<その1>」の続報として,8月下旬以降の改定関連情報について,主に中医協総会の議論の論点を整理し,お知らせする。

2025年12月1日号TOP