2025年12月15日号
京都第一赤十字病院 副院長
沢田 尚久
「いよいよ始まる新専門医制度(2018/3)」,「コロナに明け暮れた2年・そして将来へ(2022/2)」に続く3度目の勤務医通信となります。医療関連は厳しい話題が多いので趣を変えます。
フランス北東部のシャンパーニュ地方は発泡性ワイン生産で知られ,この地域で定められた製法で生産されたものだけがChampagneの呼称を許されています。Reims(日本語はランスですが,鼻に抜けるrが発音できないと現地で全く通じず),Epernay はこの地域の中心であり,泡好きの聖地です。
10数年前のパリ学会中に日帰り訪問したシャンパーニュ地方が忘れられず,いつか夫婦で再訪をと考えていました。最近の日本は台風による航空路障害が心配なため,今回は令和7年GWに計画しました。パリで1泊,翌朝日帰りツアーを半行程利用して Epernay に入り醸造所見学,Reims 市内ホテルで下車。2泊して醸造所見学・市内散策。その後TGVでパリに戻り2泊予定としました。完璧なプランでしたが,出発直前に国鉄ゼネストが発覚しました。TGV停止時のプランBとして高速バスを予約,スーツケースをパリのホテルに残し,着替等必需品のみ携行してシャンパーニュに向かいました。毎日晴天で最低14℃~最高20℃,京都より相当寒く感じました。
事前予約でセラー見学・試飲した醸造所は,Moët&Chandon,G.H.Mumm,Taittingerの3施設です。醸造所・ショップ散策は,Perrier-Jouet,Pommery,Veuve Clicquot,Ruinartの4施設,醸造所玄関のみ訪問のLouis Roederer,Krug,G.H.Martelを含めて合計10施設を巡りました。葡萄品種と圧搾量・瓶内二次醗酵・オリ抜き・糖分添加などの製造過程は成書に任せますが,僅か34,200ha(フランス全体のワイン用葡萄栽培面積の4.3%,京都市は82,800ha)で栽培された葡萄で造られたChampagneが世界で確たる地位を得たか,ブランド保護・経営戦略に驚かされます。Pommeryは群青,Krugはエンジ,Ruinartは白地に金など,各醸造所はアイコン色で装飾され,Taittingerツアー担当者の「ChampagneはKing of Winesです。日本は米国・英国に次ぐ世界3位の輸出先として大切なお客様です」との解説が印象的でした。
Reims には歴史的建造物が数多くあります。ノートルダム大聖堂はフランス国王の戴冠式が代々行われた歴史上重要な施設で,ユネスコ世界文化遺産に登録されています。大聖堂正面3枚扉のうち,左脇の「微笑みの天使」彫像は有名で,少し右向きでニコッと微笑んでいます。ステンドグラスは,真っ青なMarc Chagall作品や,葡萄栽培から収穫・圧搾・Champagne造りの複雑な工程を表現した造形が見事です。G.H.Mummに隣接するフジタ礼拝堂は日本人画家・藤田嗣治の名作で,建物設計から壁画まですべてを手掛けました。小さな礼拝堂に入ると,四面の壁が淡い色調と柔らかな線で描かれたフレスコ画で覆われ,最後の晩餐,ブドウ収穫の聖母マリア,フジタ自画像などが必見です。この他にも,サン・レミ聖堂,トー宮殿などが徒歩圏内で訪問可能です。
軽装のため何本も泡を購入することは不可でしたが,市内にはワインショップが数軒あり,ほぼ泡のみ販売でした。日中は醸造所巡りで飲み歩き,夕食は1泊目を宿泊先で,2泊目はデルロン広場の老舗店・GluePotでアラカルト料理を堪能しました。どの店も泡が数種開栓されており,グラスで色々楽しめました。
以上,浪漫紀行報告です。日帰りツアーも多いので,パリ滞在の際は是非訪れてください。私事ですが,令和8年1月からJCHO神戸中央病院に異動となります。京都での経験を活かして地域医療に貢献する所存です。今後ともどうぞ宜しくお願いします。
Information
病 院 名 京都第一赤十字病院
住 所 京都市東山区本町 15-749
電話番号 075-561-1121(代)
ホームページ https://www.kyoto1.jrc.or.jp