2025年2月1日号
亀岡市・船井医師会と府医執行部との懇談会が令和6年11月9日(土),亀岡市立病院で開催され,亀岡市医師会から12名,船井医師会から6名,府医から9名が出席。「今後の政府の構想とそれに対する医師会の対応と心構え」,「MAMIS導入後の入退会等手続き」,「府立学校医等の年齢制限の撤廃」をテーマに議論が行われた。
※この記事の内容は令和6年11月9日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。
与党が過半数割れという政局が不安定な中であるが,現時点では,石破内閣の社会保障や医療政策は岸田内閣を踏襲するものと想定され,令和6年7月に閣議決定された「骨太の方針2024」と令和5年12 月に閣議決定された「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」に基づき,「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」,「医師の偏在是正」,「医薬品の安定供給」,「医療DX」,「地域医療構想」,「75歳以上の窓口負担の見直し」などの取組みが進められる見込みである。
「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」については,財務省が新型コロナウイルス流行初期にかかりつけ医機能が十分に機能しなかったとして,かかりつけ医機能の要件を法制上明確化することによってかかりつけ医を登録制とする「かかりつけ医の制度化」を主張したことに対して,これらはフリーアクセスを著しく制限し,多くの医療機関に多大な影響を及ぼすとともに,その先に患者一人あたりの定額制の導入を見据えた医療費抑制を目的としたものであるとして,日医が政府や国会議員等に積極的に働きかけた結果,「かかりつけ医の制度化」ではなく,「かかりつけ医機能が発揮される制度」を整備する法改正がなされたものである。具体的には,「かかりつけ医機能報告の創設」や「医療機能情報提供制度の刷新」などを行うこととなり,財務省が狙っていた法制上の明確化や認定制,事前登録制は阻止した形である。
かかりつけ医機能報告制度は,令和7年4月からの施行であるが,実際に医療機関が報告するのは令和8年1月~3月の見込みである。これまでの議論において,報告医療機関には「一定の疾患や症状に対応できること」や「研修を修了した医師がいること」を要件とすることが財務省等から提案されたが,かかりつけ医機能を地域で面として支えるためにできるだけ多くの医療機関がかかりつけ医機能を持てることを最優先とするよう日医が主張した結果,研修の修了も要件化には至らず,かかりつけ医は「かかりつけ医機能の向上に努めている医師であり,病院の医師か,診療所の医師か,あるいはどの診療科かを問うものではない」というこれまでの日医の主張に沿って幅広い診療科の医療機関が報告するものとなっている。
医師の偏在是正については,厚労省が総合的な対策のパッケージを令和6年中にまとめる予定であり,現在は令和6年8月末に示された,人口や医療アクセス状況を踏まえた都道府県における医師偏在是正プランの策定,医師少数区域での勤務経験を求める管理者要件の大幅な拡大,外来医師多数区域での新規開業希望者に求める医療機能の要請の強化,開業・承継の支援や経済的インセンティブ―等を内容とする骨子案について,様々な会議体で検討されているところである。
日医は,厚労省の骨子案に先立って,政府に対して,医師少数地域で開業する医師への経済支援や全国レベルの医師マッチング支援,保険医療機関の管理者の要件として卒後一定期間の保険診療実績の追加,さらに偏在対策に特化した1,000億円規模の基金の創設―等を提言している。財務省は医師の地域偏在対策の手段として,医師多数区域の点数を下げる「地域別診療報酬」の設定を求めていたが,府医代議員会で採択された決議文でも指摘したとおり,そもそも偏在対策に寄与しないことは明らかであり,今回の骨太の方針や厚労省の骨子案にもその点は明記されていない。
医薬品の安定供給に関しては,製薬メーカーのGMP(製造管理・品質管理基準)違反を発端として,その後のコロナ禍のロックダウンによる原薬入手の問題など,様々な要因が絡んで現在の状況を引き起こしているが,供給を不安定化させている最大の要因は,国の数値目標による強引な後発医薬品の推進と毎年の薬価改定にあると考えている。
医療人材の不足については,悪質な人材紹介業者に対する厚労省の監督・規制が強化される見通しであるが,令和6年度の春闘基本構想においては,他産業と医療・介護との賃上げの格差は依然として大きいため,今回の診療報酬改定で新設されたベースアップ評価料を広く算定していただき,賃上げの原資として活用いただきたいと考えている。
国民皆保険制度の存続に関して,風邪などの低額医療や,令和6年10月から開始された長期収載品の選定療養など,保険給付の範囲に焦点が当てられているが,厚労省はイノベーションの進展を踏まえた医療技術・医薬品へのアクセスの確保として,民間保険の活用も含めた保険外併用療養費制度のあり方について検討を進める考えを示している。その他,医療DX,地域医療構想についても適宜議論が行われており,今後,「75歳以上の窓口負担の見直し」についても議論される見込みである。
与党が過半数を割り,政策実現には野党の協力が必要となることから,野党の提案にも一定対応が求められることが予想される。例えば,国民民主党が掲げる年収が103万円を超えると所得税が課される「103万円の壁」の見直しなどに対応する場合,7~8兆円程度の減収が見込まれるため,財源の捻出のために医療費を抑制することが懸念され,予断を許さない状況である。
財務省は常に社会保障関係費の削減を目指しており,今回の診療報酬改定と同様に診療所をターゲットとした主張が繰り返されることが懸念される。今回の診療報酬改定について,当初の財務省の主張は,診療所の報酬単価を初・再診料を中心に5.5%程度,改定率でマイナス1%程度の引下げるという極めて厳しいものであったが,日医が即座に反論し,政治家への働きかけを行った結果,改定率は診療報酬本体がプラス0.88%となった。当初財務省が主張していたマイナス1%からプラス0.88%まで押し戻したとも言える内容であるが,この財源確保のために生活習慣病を中心とした管理料,処方箋料等の再編等の効率化・適正化によるマイナス0.25%が大臣折衝で決められたことは大変残念な結果であったと捉えている。いずれの医療政策においても,医政活動が何より重要となるため,引続き各地区のご協力をお願いしたい。
~意見交換~
その後の意見交換で,改定のたびに複雑化・煩雑化する診療報酬に関して意見が上がり,府医からは,これから人口減少のフェーズを迎え,対応すべき医療の様態も変遷していく中で,従来どおりの診療報酬体系でよいのかという議論はあるものの,国としても抜本的な変更に踏み切れないのが現状であり,その議論に優先して社会保障費を抑制する方策等が議論されていると説明。また,今回の長期収載品の選定療養をはじめ,今後さらに給付範囲の見直しが行われ,高額医療については高額療養費の上限額見直しや民間保険との2階建てとすること等が議論されていくのではないかと推察した。
医業経営の観点からは,諸物価の高騰に応じて診療報酬の引上げを要望していかなければ,医療従事者の賃金を上げることができず,医療業界から人材が流出し,医療が成り立たなくなると危機感を示した上で,今回の改定で新設されたベースアップ評価料を「過渡期」として捉え,多くの医療機関での算定を呼びかけながら,引続き医療を守るための財源として診療報酬の引上げを要望していく必要があるとした。
地区からは,国民の理解を得るためには,医師会として無駄な医療を削減する取組みをしながら,適正な医療に対する適正な診療報酬を求めていくという姿勢が重要であるとの意見が挙がった。
日医の新会員情報管理システム「MAMIS」は,全国すべての医師会に所属する医師を対象とし,三層構造の流れに則って,従来の紙の流れと同様の手続きフローをWeb上で行うシステムである。これまで地区医,都道府県医,日医それぞれに届出書を提出していたものを,会員が自らMAMISに入力することで,システムを通じて,まず郡市区医に「申請」があがり,地区で承認されると次に都道府県医,その次に日医へと従来の流れに沿ってシステム上で申請・承認する仕組みとなっており,手続きに係る会員の負担軽減を図るものである。
10月30日の公開に先駆けて,日医会員にはMAMIS運営事務局よりログインの案内ハガキが送付されており,ハガキのQRコードもしくはURLからアクセスの上,ハガキに記載の仮ID・仮パスワードでログインし,自身のマイページの登録内容をご確認いただきたい。
各医師会事務局には,9月30日付の事務連絡にて日医から医師会事務局用の管理者アカウント通知が送付されているため,まずはMAMISの管理画面等をご確認いただいた上で,会員管理データベースとしてご活用いただければと考えている。今後の具体的な手続きとしては,MAMIS管理画面で申請状況をご確認いただき,先生方から手続きがあった際には,MAMIS上で承認していただければ府医に申請が届くようになっている。会員自身によるMAMISへの入力が難しい場合には,代行入力等のサポートをお願いしたいところであるが,地区においても対応が難しい場合には,府医にご相談いただきたいと考えている。
今後,当面は紙ベースでの届出とMAMISによるWeb申請の両方が混在し,会員情報の管理についても従来の方法と併存することになると思われるが,府医としても,各地区医とのやりとりにおいては,従来の紙ベースの届出書とMAMISの両方に対応する考えである。将来的にはすべての医師会がMAMISを利用することにより,完全なペーパーレス化を実現するとともに,先生方の利便性向上につながり,さらには,医師会としても医師本人がデータを入力するため,医師会ごとに作成していたデータを一元化することで,入力の手間・時間など事務負担の軽減が期待できる。
また,退会等の手続きがないまま転居先も不明の会員については,府医では連絡がつかないからといって自動退会となる規則にはなっておらず,現状としては,地区や周りの先生からの情報によって,何とか連絡をつけて退会等の手続きを行っている状況である。今後は,自動退会等の規則についても検討が必要になると考えている。
府医では「外部委員等の推薦年齢の要件を定める規則」において,行政および関係団体等が設置する各種審議会や委員会等に,府医から委員を推薦する際の年齢要件を定めており「外部委員等の推薦は,原則として75歳未満の者に限るものとする」としている。
例えば,府立学校の学校医の推薦にあたっては,この規定に基づき,府医から各地区医に対して,当該地区に所在する府立学校の学校医として「75歳未満」の先生のご推薦をお願いしている。
ご指摘のとおり,近年は学校医等の推薦についても「担い手不足」の問題に直面しており,推薦にあたっては特定の先生に負担がかかる等,各地区でのご調整が難しくなってきていると認識している。
学校医については,原則として学校所在地区内から75歳未満の先生のご推薦をお願いしているものの,地域の実情により調整が難しい場合はこの限りではなく,その他,推薦をお願いしているものについても各担当課にご相談いただきたいと考えている。
府医としては,医療提供体制の持続可能性を担保するためにも,若手医師に対して医師会活動への理解や地域医療への関心を持っていただけるよう,組織強化の取組みを進めていきたい。
・ベースアップ評価料について
外来・在宅ベースアップ評価料(1)の届出方法について手順を解説し,広く算定することを呼びかけた。
・日医未入会会員への日医入会促進について
日医では,「医師会の組織強化」を課題に挙げ,さらなる組織率の向上に取組んでいることを紹介し,日医未入会者に対する日医への入会促進に地区医,府医,日医が一丸となって取組む必要があるとして,日医への入会促進に協力を依頼した。
基金・国保審査委員会連絡会合意事項について解説するとともに,個別指導における主な指摘事項について資料提示した。また,療養費同意書の交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書の発行に理解と協力を求めた。