かかりつけ医機能報告制度について-診療科に関わらず報告可能-

 令和5年5月に成立した「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」により,令和7年4月から「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」が施行されることとなり,その後,厚労省の分科会において議論が行われ,昨年7月末に「議論の整理」が取りまとめられました(京都医報令和6年9月1日号保険医療部通信にて既報)。
 この「議論の整理」を受けて,現在厚労省ではガイドラインを作成しており,詳細が公表され次第あらためてお知らせしますが,本号ではかかりつけ医機能報告制度のポイントをまとめましたのでご参照ください。

ポイント
 ○ かかりつけ医機能は診療科に関わらず報告できる
 ○ かかりつけ医機能に関する研修を修了していなくても報告できる
 ○ 第1回目の報告は令和8年1月~3月予定

※以降,スライドはすべで日医作成のものを一部改変

1.概要
 かかりつけ医機能が発揮される制度整備の主旨は,①国民・患者が,そのニーズに応じてかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるための情報提供を強化する,②地域の実情に応じて,各医療機関が機能や専門性に応じて連携しつつ,自らが担うかかりつけ医機能の内容を強化することで地域において必要なかかりつけ医機能を確保することとされ,制度整備に当たっては日医の考え方が基となっている。

 また,以下の枠組みで行うこととされている。

  • 医療機能情報提供制度の刷新
    ・国民・患者がかかりつけ医機能を十分に理解した上で,自ら適切に医療機関を選択できるよう,医療機能情報提供制度による情報提供の充実・強化を図る。
  • かかりつけ医機能報告の創設
    ・慢性疾患を有する高齢者その他の継続的に医療を必要とする者を地域で支えるために必要なかかりつけ医機能について,各医療機関から都道府県知事への報告を求める。
    ・都道府県知事は,報告をした医療機関が,かかりつけ医機能の確保に係る体制を有することを確認し,外来医療に関する地域の関係者との協議の場に報告,公表するとともに,協議の場で必要な機能を確保する具体的方策を検討・公表する。
  • 患者等に対する説明
    ・医療機関は,慢性疾患を有する高齢者等に在宅医療を提供する場合など外来医療で説明が特に必要な場合であって,患者や家族が希望する場合に,かかりつけ医機能として提供する医療の内容について電磁的方法または書面交付により説明するよう努める。

2.報告を求めるかかりつけ医機能の内容
 報告する具体的な機能,項目は,1号機能と2号機能に分かれており,1号機能を報告した医療機関が2号機能も報告できる仕組みとなっている。
 1号機能にある「②かかりつけ医機能に関する研修の修了者の有無,総合診療専門医の有無」は,あくまで有無を報告するものであり,研修を修了していないと報告できないものではない。なお,該当する研修は今後示される予定であり,現在ある日医かかりつけ医機能研修制度も含めて整理される見込みである。
 また,「③17の診療領域と一次診療を行うことができる疾患」も,17の診療領域は「皮膚・形成外科領域,神経・脳血管領域,精神科・神経科領域,眼領域,耳鼻咽喉領域,呼吸器領域,消化器系領域,肝・胆道・膵臓領域,循環器系領域,腎・泌尿器系領域,産科領域,婦人科領域,乳腺領域,内分泌・代謝・栄養領域,血液・免疫系領域,筋・骨格系および外傷領域,小児領域」であり,幅広い診療科が対象となっている。一次診療を行うことができる疾患も,患者調査による推計外来患者数が多い傷病を基に検討して設定することとなっている。
 当初,財務省からは「一定以上の症状(20項目以上)に対して一次診療を行うことができる」医療機関を報告対象とすることが提案された。かかりつけ医機能を持つ医療機関を限定し,かかりつけ医と非かかりつけ医に分断する狙いがあり,その先には,非かかりつけ医を受診する場合は,まずはかかりつけ医を受診することや,選定療養として患者負担を増やすなど,フリーアクセスに制限をかけるものである。さらには,診療報酬でかかりつけ医を包括点数によりコントロールすることも可能となる。
 これに対して,日医は多くの医療機関が報告できることが重要で,これまで築き上げてきた患者と医師の信頼関係をこの報告制度が壊すことがあってはならないと主張し,最終的には多くの医療機関が報告できる制度になっているため,診療科に関わらず積極的な報告を求めている。

3.今後の予定
 先述のとおり,今後具体的な報告方法などが示される予定であり,初回の報告は,1年後の令和8年1月~3月頃の見込みである。詳細が示され次第あらためてお知らせする。

2025年1月15日号TOP