「日本医師会新会員情報管理システム(MAMIS)」「薬価選定療養費および出荷制限」,「医療DXの概要」,「ベースアップ評価料と内科系の減収」について議論

 下京西部医師会と府医執行部との懇談会が10月21日(月),下京西部医師会事務所にて開催され,下京西部医師会から10名,府医から6名が出席。「日本医師会新会員情報管理システム(MAMIS)」,「薬価選定療養費および出荷制限」,「医療DXの概要」,「ベースアップ評価料と内科系の減収」をテーマに活発な議論が行われた。

※この記事の内容は10月21日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。

日本医師会新会員情報管理システム(MAMIS)について

 MAMISは,これまで書類で行ってきた日医の入会・異動等の手続きをWEB上で行うことで,先生方の事務手続きの負担軽減を目指して構築されたシステムである。医師会の三層構造の流れに則って,従来の紙の流れと同様の手続きフローをWEB上で行うシステムで,すべての医師会に所属する医師を対象としている。日医入会希望者または会員がMAMISに入力すると,システムを通じて郡市区医師会に申請が上がり,地区で承認がなされると,次に都道府県医,日医と従来の流れに沿って,申請・承認するシステムである。日医では令和6年10月30日からの公開後もMAMISの機能追加を継続的に行うとしており,2025年度には研修管理機能をスタートさせる予定である。認定産業医・認定スポーツ医関連,生涯教育,かかりつけ医機能関連などについても機能拡張し,医師の学習支援と取得単位の可視化,認定制度の申請や証明書発行などを簡便化するとされている。また,会員ポータルサイトとして,改良を重ねて情報提供にも力をいれていくとのことである。
 これを契機として,各地区において,会員管理のデータベースとしてのMAMIS利用を検討いただきたい。

薬価選定療養費および出荷制限について

 長期収載品の選定療養費制度については,医療費に占める薬剤費が約10兆円で,諸外国と比較しても後発品のシェアが低く,逆に長期収載品のシェアは高い傾向にあるというデータをもとに,「骨太の方針2023」にて医療保険財政の全体のバランスの中で,長期収載品等の自己負担のあり方の見直しが決定された経過がある。
 日医としては,薬価収載された医薬品はすべて保険給付すべきと考えているが,「骨太の方針」に記載されると,政府からの圧力が強く働くことになり押し戻すことが難しく,医療上の必要があれば保険給付が可能という形にして,医師の処方権と絡めて保険給付を確保していると説明している。府医としても,安易な選定療養化の拡大には反対の姿勢である。
 また,9月30日に厚労省が安定供給の確保を基本として,後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップを公表したが,すでに「2029年度末までにすべての都道府県で80%以上」という数値目標がある中で,後発医薬品産業が未だに品質や安定供給の観点から脆弱性を抱えている状況を踏まえ,今後の取組みを整理したものとなっており,長期収載品の一部選定療養費化もこの中に含まれている。そもそもこの問題は,法令順守を怠った企業の責任もあるが,国の強引な推進政策が引き起こした面もある。後発医薬品を推進するのであれば,物事の順序として,後発医薬品の安定供給,その品質に対する国民の信頼が前提となることは当然であり,それができていない状況で数値目標を定めてほとんど手段を選ばず実現を目指すというやり方はおかしいと日医は以前から指摘してきたところである。こういった政策の矛盾や後発医薬品業界の問題点が顕在化し,国もようやく本腰を入れて対応を始めており,国の対策が効果を発揮することを期待する。

医療 DX の概要について

 医療DXとは保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防,受診,診察・治療・薬剤処方,診断書等の作成,診療報酬の請求,医療介護の連携によるケア,地域医療連携,研究開発など)において発生する情報やデータを,全体最適された基盤を通して,保健・医療や介護関係者の業務やシステム,データ保存の外部化・共通化・標準化を図り,国民自身の予防を促進し,より良質な医療やケアを受けられるように,社会や生活の形を変えることと定義されるが,情報基盤の整備により医療の効率化を目指す一連の政策である。
 医療DXの中核となる取組みが,全国医療情報プラットフォームの構築であり,医療機関,介護施設,公衆衛生機関,自治体で個別に管理されている患者の医療関連情報の一元化が可能になると示されている。
 政府は,電子処方箋を実施する医療機関や薬局を順次拡大して,2025年度には「概ねすべての医療機関で導入」と示しているが,現時点ではオンライン資格確認を導入している薬局のうち,電子処方箋の導入率は50.38%と5割を超えているものの,病院では2.17%,診療所では5.63%,歯科については0.39%との現状であり,ほど遠い状況である。その他,電子カルテ情報共有サービス等も計画どおりに進むかは不明であるとともに,新たな取組みに対する手間や費用の多くが医療機関の負担となっていることが大きな問題であり,医療現場でメリットも感じられず,コストだけ押し付けられる状況が続けば導入は進まない。
 医療DXに対する総論として,より良い医療の提供につながる医療DXには賛成であるが,拙速に進めて,医療提供体制に混乱・支障が生じてはいけないことが大前提であり,国民・医療者を誰一人取り残してはならない。医療DX推進のための導入や維持にかかる費用は,国が全額負担すべきと日医は国に主張しているが,政府の政策に影響を与えるには医政活動が極めて重要である。

ベースアップ評価料と内科系の減収について

 令和6年度診療報酬改定の基本方針では「医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取り組み」が重点課題の1つとされ,ベースアップ評価料の新設や初・再診料が引上げられた。
 改定の議論において,財務省は自ら行った調査をもとに,診療所は極めて良好な経営状況であり,診療所の報酬単価を適正化することなどにより,従事者の処遇改善に対応しつつ診療報酬本体をマイナス改定とすることが適当であり,さらに,「診療所の報酬単価を初・再診料を中心に5.5%程度(改定率でマイナス1%程度)引下げるべき」と主張した。これに対して,日医は財務省の調査は,コロナ禍で一番経営が落ち込んでいる時と比較しており,医療機関が儲かっているという印象を与える恣意的なものであると批判した。
 結果的に改定率は診療報酬本体がプラス0.88%で,当初財務省が主張していたマイナス1%からプラス0.88%まで押し戻したが,改定率決定に至る大臣折衝で,0.61%分が看護師などの賃上げ対応,0.28%分が40歳未満の医師や事務職員などへの賃上げ対応となり,ほとんどが処遇改善に充てられた。
 さらに,生活習慣病を中心とした管理料,処方箋料等の再編等の効率化・適正化によるマイナス0.25%が大臣折衝で決められたことは非常に問題である。その後の中医協の議論を経て,特定疾患療養管理料の対象疾患の見直しや処方箋料の引下げなど,特に内科系の診療所の減収につながる改定となったことは到底納得できないが,日医も医療機関への影響をできるだけ緩和するために,検査等を出来高算定できる生活習慣病管理料Ⅱの新設や療養計画書の大幅な簡素化を実現したほか,外来管理加算の廃止を主張する支払側にも真っ向から反論し,外来管理加算は死守したところである。
 また,賃上げ対応に関しては,ベースアップ評価料の新設に加えて,初・再診料が消費税対応を除くと18年ぶりに引上げられたことは非常に大きいと考える。ベースアップ評価料については診療所の届け出状況が全国的に少ないことから日医が厚労省に要請し,9月11日付で様式の簡素化が行われた。府医としても,本点数について,公定価格で運営する医療機関は,物価高騰・賃上げに対応するための手当てを価格に転嫁することができないため,賃上げ等に対応するための必要な財源として新設されたことは評価しており,従業員の賃上げをする際に医療機関の持ち出しでされるよりはこの点数を原資として活用いただきたい。
 但し,従業員の賃金引上げを診療報酬で評価することも議論が分かれるところであり,補助金など別の財源で確保する必要があるが,医政活動の重要性が明らかになるとともに,日医の発言力をあげるためにも日医の組織力強化は非常に重要である。

府医からの連絡事項

◇日医未入会会員への日医入会促進について
 日医では,医師会が医師の診療・生活を支援し,国民の健康と生命を守るという使命を果たし続けていくためには,現場に根差した提言をしっかりと医療政策の決定プロセスに反映していく必要があるとの考えのもと,「医師会の組織強化」を課題に挙げて,さらなる会員数の増加,組織率の向上に取組んでおり,今般,日医より,日医未入会者に対する日医への入会促進に地区医,府医,日医が一丸となって取組む必要があるとし,改めて協力依頼があった。これを受けて,府医では10月はじめに,府医会員のうち日医未入会の先生宛に,日医への入会を検討いただく案内を送付しているが,改めて,各地区においても日医への入会促進にご協力をお願いしたい。

◇京あんしんフォンについて
 府医では,「京あんしんネット」のユーザーを対象として,「京あんしんネット」をより安全・安心に,より便利にご活用いただけるよう,専用の医療用ビジネスフォン「京あんしんフォン」を導入した。
 携帯端末に「京あんしんネット(MCS)」をはじめ,必要なアプリケーションをあらかじめインストールしており,すぐに利用が可能である。従来の「京あんしんネット」による連携に加えて,携帯電話として利用できるため,通話による,より充実したコミュニケーションと連携の促進が期待できる。
 また,「京あんしんフォン」には,MDM(モバイルデバイス管理)サービスを付加し,万一の端末の紛失時には,遠隔から端末のロックが可能であるため,より安全に,より安心して利用いただけるので導入を検討いただきたい。

2025年1月15日号TOP