「マイナンバーカードの保険証利用」,「ベースアップ評価料」,「新規開業に介入しているコンサルタント」について議論

 伏見医師会と府医執行部との懇談会が10月28日(月)伏見医師会館で開催され,伏見医師会から13名,府医から6名が出席。「マイナンバーカードの保険証利用」,「ベースアップ評価料」,「新規開業に介入しているコンサルタント」をテーマに活発な議論が行われた。

※この記事の内容は10月28日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。

マイナンバーカードの保険証利用について

 令和6年12月2日をもって新規の保険証発行が廃止され,基本的にはマイナ保険証に移行することになるが,移行期においては複数の資格確認方法が併存する。医療機関窓口における資格確認方法としては,①マイナ保険証(カードリーダーによる確認),②資格確認書,③保険証(最長で令和7年12月1日まで),④マイナ保険証+資格情報のお知らせ(またはマイナポータルで確認)の4つの方法となる。
 マイナ保険証と公費の紐づけについては,令和5年度から全国の一部自治体で実証事業が行われており,京都府内の一部の市でも実施予定となっている。現時点では限られた自治体での実証事業の段階だが,政府の工程表では令和8年度以降に全国展開するとされている。
 また,京都市消防局が実施している救急搬送時の実証実験(マイナ救急実証実験)については,2024年9月6日の開始以降,10月24日現在で,245例に実施(全搬送件数の3%弱)。効果については,今後検証されることになるが,意思疎通が難しい患者の場合は有用な面もあるが,病院への伝達が結局のところ口頭になること,会話が可能な患者の場合は口頭で確認した方が早いことなどから,救急現場での有効性も一長一短ではないかと考えられる。
 さらに,電子処方箋については,全国(診療所)の導入率は4.2%,京都府では3.3%となっており,進んでいない。薬局では,全国43.3%,京都府47.1%で医療機関より導入が進んでいる。電子処方箋導入の補助金もあるが,補助を受けるためには現在のところ,令和7年3月31日までに導入する必要があり,全額補助ではなく,補助率は診療所で1/2となっている。
 日医は以前より政府に対して,医療DXに係る費用は国が全額負担すべきと主張しており,少なくとも補助金の期限延長や補助率の拡大など,より一層の促進策がなければ,医療機関の電子処方箋導入は進みづらいと推測される。

〜意見交換〜
 オンライン資格確認について,カードリーダーを設置していない医療機関はどうなるのかとの質問が出された。
 府医からは,療養担当規則では2023年4月までにオンライン資格確認導入の原則義務化されていることから,カードリーダーの設置が必要になるが,紙レセプト請求の医療機関や経過措置を受けている医療機関は義務化の対象外となり,資格確認書や保険証(最長で令和7年12月1日まで)で資格確認を実施することになると説明。また,日医は医療DX推進に対して,「患者・医療者」の誰一人,日本の医療制度から取り残さないことが大前提であると主張しており,日医を後押しするためにも,会員増強・組織強化が重要であるとした。

ベースアップ評価料について

 京都府における外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の届出状況は9月末現在,病院で88.8%,診療所は22.6%となっている。当初より手続きが煩雑との指摘があったことから,日医が厚労省に働きかけを行い,解説動画や支援ツール等が公表されてきた。さらに,診療所の届出が全国的に少ないことから日医が厚労省に要請し,9月11日付で様式の簡素化が行われた。公定価格で運営する医療機関は,物価高騰・賃上げに対応するための手当てを価格に転嫁することができないことから,賃上げ等に対応するための必要な財源としてベースアップ評価料が新設されたことは評価できる。
 この点数の継続性に対する懸念について,日医は10年以上前から維持されている介護分野の「介護職員等処遇改善加算」を例に挙げ,今後の診療報酬改定でベースアップ評価料が単純に廃止されることは考えづらいとの見方を示し,「ベースアップ評価料が幅広く活用されることが継続の強い後押しになる」として,届出を推奨している。
 一方で,他産業の春闘の水準を踏まえるとベースアップ評価料だけでは不十分であり,従業員の賃金引上げを診療報酬で評価することも議論が分かれるところで,補助金など別の財源で確保することも検討する必要がある。
 医療界が理想とする医療政策を実現するためには,現場に根差した提言をしっかりと国に届けなければならず,そのためには日医が医療政策の決定プロセスに深く関与する必要がある。医療界の意見により説得力を持たすためにも,医師会の組織力強化とともに,医政活動が非常に重要となる。

〜意見交換〜
 受付などの事務方からは,自分たちの給与を上げるためのベースアップ評価料(Ⅰ)を患者から徴収することへの説明がはばかれるとの声があることが紹介された。
 府医からは,公定価格により運営する医療機関は価格に転嫁することができないことから,今回の点数が設けられた背景を厚労省が作成したリーフレット等を活用し,患者等に説明した上で,積極的に算定するべきであるとの考えを示した。
 また,「加算ではなく,初診や再診料で手当されるべきではないか」との意見が出された。
 府医は,今回の改定の議論において,当初,財務省は自ら行った調査をもとに,医療機関は極めて良好な経営状況であり,1%程度改定率を引下げるべきとの主張が展開されたことを受け,日医の要請のもと全国の医師会では地元選出の自民党国会議員に対して,公定価格により運営する医療機関は価格に転嫁することができないことから,診療報酬で何らかの手当てがなければ職員の給与アップもできず,医療分野から人材が流出し,現状の医療提供体制を維持できなくなると訴えた結果,今回のベースアップ評価料が新設されるとともに,初再診料が消費税対応を除くと18年ぶりに引上げられた背景があると説明。
 この点数を積極的に医療機関が算定することによって,必要なものであることを改めて国に示すことにつながるとの考えを示し,こういったことを積み重ねた上で,引続き初診や再診料などの基本診療料で手当することも訴えていく必要があるとした。一医療機関の算定が日医の発言力の後押しにもなるので,積極的な算定が重要であると訴えた。

新規開業に介入しているコンサルタントについて

 新規開業時にコンサルタント会社が介入するケースについて,正確に割合を把握していないが,近年の新規開業時には多くの先生方にコンサルタントが付いていると感じている。
 新規開業時には,開業場所や建物や医療機器の選定,医療機関の開設に係る行政関係の書類や,職員の雇い入れなど様々な調整や手続きが必要であり,多忙な勤務医が一人で開業準備することは困難をともなうことから,多くの先生方がコンサルタントを付けていると推察される。
 新規開業時には,本来,地区医に事前相談があり,場所や診療科など周辺医療機関との関係性,医療機関名称など様々な調整が行われた後に,新規開業に向けた準備が進められることが望ましいが,コンサルタント(ディベロッパー),金融機関,事業主(地主)の思惑が先行して,医師会に事前相談なく,医療モールなどの箱ものが先に出来上がる事例がある。後から医師を探す場合,必ずしも地域の事情を把握している医師が管理者になるとは限らず,その結果,不適切な医療機関名称や,事前の調整がなされず,同じ専門科の医療機関が乱立するなど地域医療の混乱も懸念される。
 また,医師会に入会せず,入会金分の資金を設備投資などに使うよう指導を行っているコンサルタントもあると聞いている。府医では行政書類の代行提出など一部開業支援を行っているが,コンサルタントのように開業場所の斡旋などを実施することは難しく,ワンストップサービスの提供が検討課題である。

〜意見交換〜
 医療機関名称ガイドラインに則っていないことのみで入会しないという選択になっても困るため,地区としては容認した上で,医師会の中で活動してもらうべきと考えているが,過去に名称を変更して入会されている先生もいるため,悩ましいところであるとの意見があった。
 また,コンサルがどういった考えのもと,開業支援を行っているかが分からないこともあるため,開業を考えている先生にはコンサルも一緒に来てもらうようにお願いし,役員等が面接を行い,助言を行うことにより,コンサルの質が上がっているとの事例が紹介された。

府医からの連絡事項

◇日医未入会者に対する日医への入会促進について
 ※ 下京西部医師会との懇談会参照

保険医療懇談会

 基金・国保審査委員会連絡会合意事項について解説するとともに,個別指導における主な指摘事項について資料提示した。また,療養費同意書の交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書の発行に理解と協力を求めた。

2025年1月15日号TOP