2025年1月15日号
愛生会山科病院
兼子 裕人
クモが嫌いです。害虫を捕食するらしいとは言え何年かに一度,ギョッとする大きさのクモ(アシダカグモ)と遭遇して文字どおり震え上がるのですが,先日はサッシのレールの隙間に綿の塊のようなアシダカグモの巣を見つけました。気力を振り絞って多くの卵や生まれて間もない超小型グモを拭い取り,敵基地先制攻撃を果たしたと浮かれたのも束の間,少し離れたレールの隙間に2匹の親グモ本体が長い足を折りたたむようにして亡くなっておられました。まるで「自分たちの役割は終わったから子どもたちよ,後はそれぞれ独り立ちしなさい」とひっそり死に場所へ移動したかのようです。昆虫などを捕獲して何とか命をつなぐ厳しい生活を終え,ようやく安らかな居場所に収まったその姿にこれまでのような恐さは感じませんでした。考えてみれば自分も今年還暦。懸命に生きた者に対して共感できるようになったということでしょうか(遅いですか?)。それだけではありません。「年齢とともにこんなに好みが変わった」シリーズを列挙します。箱根駅伝が感動的,大相撲中継を観て面白い,紅白歌合戦が少し気になる,蕎麦が大好き,天下一品を食べた5~6時間後に軽い腹痛が起きる,などなどです。これを昨今の勤務医部会の情勢に当てはめると,などと上手に続けたいところですが全くつなぎ方がわかりません。
2015年に勤務医部会委員を拝命頂いて以降,勤務医の医師会加入率の低さが毎回の幹事会で課題として挙げられてきました。また弁護士会の様な100%入会の強制力を医師会が持つことは法的に不可に近いとも伺いました。もし自分が医師会の委員を仰せつかっていなければ,と仮定して考えると医師会の先生方の奮闘ぶりを見る機会がなくても日常が過ごせてしまうことが組織率の低下に直結していることがわかります。昔のアニメ「妖怪人間ベム」の最終回。ラストシーンの「悪い出来事が気づかぬうちに解決していたら,それは妖怪人間たちが密かに活躍したからかも知れない」という火災現場でのナレーションに例えるとわかりやすいでしょうか。知らないうちに庇護されているのですよ,と言いたいのですがこの例えしか浮かびませんでした。解決のカギはやはり医学教育と同じく早期曝露,early exposureではないかと考えています。研修医時代から,いや学生時代から医療は医学だけでは成立しないことを学んでいただく作戦です。ただ医師会各委員とて本業がありますので,なかなかPR活動に全力で邁進するわけにもいきません。医師会職員の方々の中から選抜あるいは交代メンバーで,または安めの芸能人でも構いません,医学生や研修医に対して活動紹介や入会勧誘,メリット広報などなど執拗に発信や営業回りをしていただくことはできないでしょうか。「知らないと損!」「入会遅れがもたらす三大地獄!」などYouTube風,あるいは「こんな医師会はイヤだ」「医師会あいうえお作文」など大喜利動画もインパクト大かもしれません。
しかし,こんな案しか出てこないのに勤務医部会委員で申し訳ありません。
Information
病 院 名 愛生会山科病院
住 所 京都市山科区竹鼻四丁野町19 番地の4
電話番号 075-594-2323
ホームページ https://www.aiseikaihp.or.jp/