府医第214回定時代議員会

 府医では,6月15 日(日),府医会館において,96 名の代議員の出席のもと,標記代議員会を開催。
 冒頭の松井府医会長の挨拶に続き,地区からの代表質問ならびにその答弁が行われた。
 議事では,第1号議案として「令和6年度事業報告及び決算」が上程され,松井府医会長からの総括報告の後,担当副会長から総務,保険医療,地域医療,学術・会員業務,看護専門学校に係る各事業報告,内田府医理事による会計決算報告を受けて,大坪府医監事より監査報告が行われ,賛成多数で可決承認された。
 また,第2号議案「会長の任期満了に伴う改選」,第3号議案「理事の任期満了に伴う改選」,第4号議案「監事の任期満了に伴う改選」,第5号議案「裁定委員の任期満了に伴う改選」に第6号議案「選挙管理委員会委員及び予備選挙管理委員会委員の任期満了に伴う選任」,第7号議案「顧問の選任」がそれぞれ上程され,賛成多数で可決承認された。
 協議では,米林府医理事から決議案が上程され,採択された(決議文は8頁)。

松井府医会長 挨拶

松井 府医会長

 挨拶の冒頭で,経済財政諮問会議の答申を経て6月13 日に閣議決定された「骨太の方針2025」について触れ,減税政策よりも賃上げ政策を重視し,経済全体の規模の拡大を通じて成長型経済の実現を目指すべく,賃上げこそが成長戦略の要であるとして,29 年度までの5年間で実質賃金の年1%程度の上昇を定着させる目標を掲げ,雇用の7割を占める中小企業が賃上げ原資を確保できるよう,取引価格への人件費の価格転嫁や生産性向上を目的とした投資を促進させることと併せて,医療や介護などの公定価格を引上げる方針が示されたことを紹介した。
 日医はこれまで政府に対し,物価高騰や賃金の上昇によって医業経営が大変厳しい状況にあり,他業種に比べ十分に賃金を上げることができず,医療・介護の現場から人材が流出する事態がすでに散見される中,ますます進展する社会の高齢化に対応するための人材確保の重要性を強く訴えてきたと説明し,4月18 日に自民党本部において開催された「医療・介護・福祉の現場を守る緊急集会」では,京都選出の国会議員にも力強い賛同を得て,自民党の国会議員や医療関係団体合わせて700 名以上が参集し,議員の署名とともに石破総理へ要望書が手交されたことを報告した。
 その結果,今回の骨太の方針では,持続可能な社会保障制度を構築するための改革を継続し,将来にわたって国民皆保険制度を維持して次世代に継承することが必要であることから,「医療・介護・障害福祉等の公定価格の分野の賃上げ,経営の安定,離職防止,人材確保がしっかり図られるよう,コストカット型からの転換を明確に図る必要がある。」と明記されたと説明し,松本日医会長はじめ日医執行部の尽力に謝意を示しつつ,石破内閣の決断を高く評価した。
 次期診療報酬改定に向けて,2024 年度診療報酬改定による処遇改善・経営状況等の実態を把握・検証し,2025 年度末までに結論が得られるよう検討されることについて,具体的には「ベースアップ評価料」がどれだけ算定されているかが検討の対象となるとの見解を示し,算定が少なければ,医師会は医療機関の経営が厳しく賃上げができないと訴えているものの,現場はそうでもないのではないかと捉えられてしまうと述べ,現場は本当に大変なのだという声を上げ,医療を守るためには人材確保が必要であるという意思表示をする必要があると訴え,ベースアップ評価料の算定に理解を求めた。
 最後に,次期診療報酬改定までの間に行われる参議院選挙の結果が診療報酬改定に大きく影響するとの認識を示した上で,高齢化にともない医療・介護を取り巻く環境がますます厳しくなる中で,国民に寄り添って医療を提供している我々医師が,国民皆保険制度のあるべき形を守り,そして将来を担う若い医師たちに繋いでいくという強い意思表示が必要であると強調し,日本の医療の将来を決める大切な選挙になると述べ,強い関心を持って選挙に臨んでいただくよう呼びかけた。
 本日の代議員会をもって現執行部の任期が満了するため,2年間のご支援,ご協力に深く謝意を示し,挨拶を締めくくった。

代表質問

 代表質問では,舞鶴,東山,福知山の3地区から代議員が質問に立ち,直面する課題について質疑が行われた。質問内容および執行部の答弁(概要)は次のとおり。

◆隅山 充樹 代議員(舞鶴)

〔医師偏在への対応と「特定オンライン診療受診施設」が地域医療に及ぼす影響について〕

隅山 代議員

 当地区では,医師の偏在(専門医の不在)が救急医療の現場で問題になっており,市外搬送が増え,地域住民の不安材料になっている。今後,さらに医師数削減が実施されると,全国的には京都府は医師過剰地域であるため,郡部への医師派遣はさらに厳しい状況になり,ますます医師の偏在が加速することが危惧される。府医として,今後,地域枠のコントロールなど医師派遣に対する働きかけをどのように行っていくのか。
 また,「特定オンライン診療受診施設」が認められると,へき地医療には朗報と言える一方で,地域医療や既存の医療機関に大きな混乱をもたらすことが懸念される。府医としての今後の見通しをご教示いただきたい。

◇谷口府医副会長

谷口 府医副会長

 医師偏在対策については大変切実な問題であると,重く受け止めている。
 府医では,医師偏在対策の課題として,医師の絶対数の不足,診療科別の偏在,地域別の偏在―の3つが挙げられると考えている。
 まず,「医師の絶対数」について,日本は世界的に見て医師が少ないと言われているものの,「いつでも,どこでも,だれでも」という国民皆保険制度が機能しているため,医療へのアクセスは大変優れていると評価されてきた。しかし近年は,医療の高度化・専門化やインフォームドコンセントなどの事務手続きの増加により,医師一人の仕事量が増えていることから,相対的には不足していると考えている。また,近年は女性医師の増加が顕著で大変喜ばしいことであるが,妊娠・出産というイベントを無視することはできず,これも相対的な不足の一因となる可能性がある。一方で,日本の人口が減少に転じている中,現時点で医師養成数を増加させることは,将来の医師過剰に繋がりかねないという点を考慮する必要がある。
 次に,「診療科別の偏在」については,近年,医師の価値観が変化し,専門分化が進む一方で,外科・内科といった包括的な分野の医師が減少しているというデータもあり,労働条件や訴訟リスクなども影響していると考えられる。昨年4月からの医師の働き方改革により,特定の診療科において医師不足をもたらす可能性が懸念されており,もしそうなると国全体としての医療の質の低下につながる恐れがある。
 3つ目の「地域別の偏在」については,医師に限らず,そもそも人口移動の傾向として,都市部への集中が生じているため,人口減少地域に医師だけを配置することは非常に難しい課題である。若い医師は,自身の働く環境として,症例が多く集まり,収入が見込め,同時に優れた指導医がいて診療経験を積み重ねることができるところを選ぶ傾向がある。
 医師偏在対策の目指すべきアウトプットとして,「いつでも,どこでも,だれでも」という日本の国民皆保険制度の下で守られてきた医療の基本を持続可能なものとすることを念頭に考えていく必要がある。今後の人口減少,都市部への人口集中を前提にすると,各医療圏にすべての診療機能を同様に整備することは難しく,例えば,各医療圏に基幹病院を設置し,必要な医療機能を検討した上で,指導医と医療資源を集約し,症例の確保とスキルアップのための指導機能の強化を図ることで,「若手医師が働きたくなる環境の整備」につなげる方策が実現できないかと考えている。その際の「必要な医療機能」とは,救急はもちろん,脳卒中,心筋梗塞など発症から治療までの時間が予後に大きく影響する疾患に対応する病院と,慢性疾患など日常の診療,健康管理を行う病院,診療所との役割分担を明確にし,地域で勤務する若手医師は専門的な診療と「かかりつけ医」としての診療の両方を担う形が望ましいと考える。さらには,その基幹病院から医療圏内の診療所等に必要な医師を日単位,月単位で派遣することで日常診療の維持を図る仕組みも一考の価値があると考えている。
 その土壌として,医学教育に「かかりつけ医」養成の視点を盛り込むことが重要であると同時に,医師少数地域で医療に従事する医師には,所得やキャリアの保証等のインセンティブが必要になる。これらの解決策を現場に合ったものにするために,地域医療構想や医師偏在対策を検討する場に地区医の先生方が関与し,その声を行政に届けることが大変重要になる。
 また,地域枠も重要ではあるが,専門医研修制度の定員上限(シーリング)の設定見直しも京都府は大変厳しい状況に追い込まれているため,5月19 日に松井府医会長,京大病院・髙折病院長,府立医科大学附属病院・佐和病院長,京都府健康福祉部・井原部長が厚生労働省まで赴き,厚労省・森光医政局長と面会の上,激変緩和に向けた陳情を行っていただいたところである。
 京都府北部地域での課題はすでに出尽くしているため,ここからは京都府がいかに覚悟をもって地域枠のコントロールや義務年限の遵守徹底など,医師偏在対策に取組んでいくのかにかかっている。府医としても,地区医からのご意見をいただきながら,より一層働きかけを強めていく所存である。
 続いて,「特定オンライン診療受診施設」について,府医としても,オンライン診療はへき地や離島などで定期的に医療機関を受診することが困難な方が対面診療の補完として活用するには有効なツールになると考えている。
 一方で,都市部で医療機関を受診できるにもかかわらず,利便性のみを追求して安易に活用されれば,安全性が担保されないばかりか,例えば東京の医師がオンライン診療で京都の患者を診察するなど,既存の地域医療に混乱をもたらすことが懸念される。
 これまでの課題を踏まえ,適切なオンライン診療を推進すべく,オンライン診療の法制上の位置づけの明確化を図る医療法改正案が提出されたところである。この法改正により,これまでオンライン診療を行える場所は原則として医療機関または患者の居宅であったが,都道府県に届出を行うことで,医師が常駐しない公民館や郵便局,介護事業所等を「特定オンライン診療受診施設」としてオンライン診療が実施できる場所とする規定も定められる予定である。へき地等でパソコン操作に不慣れな高齢者にとっては,公民館等の職員が準備を手伝うことが可能となる。施設には容態悪化時に受診できる医療機関の確保や都道府県の指導監督を受けることなどが求められる。改正案が成立次第,日医役員も参画する厚労省の社会保障審議会等で実際の運用に向けた具体的な規定について検討される見込みである。
 これまでも安易なオンライン診療の活用には問題提起してきたが,引続き府医からも近医連の会議等を通じて日医に現場の問題点などを意見具申していく考えである。

◆手越 久敬 代議員(東山)

〔府医代議員の定数について〕

手越 代議員

 東山医師会は,A会員が40 人と非常に少なく,ほぼ全員が何らかの役割を担っており,人員の割り振りに難渋している。基幹病院の研修医や閉院された先生方も会員として所属してくださり,総会員数は118 人(2025年4月現在)と比較的保たれている。
 府医の代議員の定数は,当該地区の府医会員総数から決定されるため,今年度の代議員数が2人から3人へと変更になった。本来なら議席が増えることは喜ばしいことであるが,会務に動ける会員が少ないため,代議員定数をA会員数で算定いただきたい。

◇禹府医副会長

禹 府医副会長

 各地区においては,会員数の増加にご尽力いただき,敬意を表するとともに,感謝申し上げる。
 代議員の員数については,一般社団法人京都府医師会定款第32 条に「概ね会員40 名につき1名の割合をもって選出する」とあり,ここで言う「会員」とは,同じく定款第6条に,本会会員は,「京都府内の郡市区医師会の会員たるものとする」,同第2項に,会員はA会員ならびにB1,B2,C,D会員で構成されるとしている。よって定款上,第32 条における会員とは,A会員以外の会員もすべて含まれることになる。
 令和7年6月1日現在,府医の会員数は4,478名で,その内訳は,A会員2,082 名,B1会員1,663名,B2会員195 名,C会員274 名,D会員264名である。A会員が全体の46.5% で,それ以外が過半数を占めている。なお,日医の会員17 万8,000 人のうちA1会員が46.1% であるため,府医とほぼ同じ割合となっている。他府県医も同様,あるいは勤務医会員の多い都道府県医もあり,医師会の構成はA会員,すなわち管理者の多くである開業医よりも病院勤務医の方が多いことになる。代議員の先生方は,これらの会員の代表として,定款第42 条に掲げる決算,会費に関することや,理事,監事,会長の選定など,極めて重要な事項を決議することとされ,同第44 条にある特定の事項について説明を求めることを今回の代表質問として行っていただいている。
 また,京都府内26 の地区医のうち,京都大学医師会と京都府立医科大学医師会の2つの大学医師会は,B2会員とC会員のみで構成されており,この大学医師会の代議員の先生方は勤務医の代弁者としての代議員ということになる。
 以上のことから,代議員の員数をA会員数のみから算定することは極めて難しいということをご理解いただければ幸いである。
 医師会は,日医,府医,地区医それぞれに極めて多くの業務を抱えており,担当する先生方には日常診療以外に医師会の会務等の負担がかかっていること,また,会員数の少ない地区では,役員一人あたりの負担がさらに大きくなることも十分理解している。この代議員会は,府医において最も重要な会議であり,通常は年2回の開催であるため,この2回には勤務医の先生方を含めた会員の代弁者として代議員会にご出席いただきたいと考えている。
 最後に,6月1日現在の府医会員数4,478 名のうち,日医の会員は3,349 名である。日医の代議員は,都道府県医から会員数500 名に対して1名の割合で算定されており,現在,府医からの代議員数は7名である。府医会員の声を日医に届けるのは,この府医からの日医代議員であり。一人でも多くの代議員が選出されると,日医における府医の発言力が増すことになる。あと約150 名増えると,日医会員数が3,500 名になり,府医からの日医代議員が8名になる。各地区医での会員数の増加,組織率向上について,引続き,今まで以上にご尽力いただくようお願い申し上げる。

◆冨士原 正人 代議員(福知山)

〔国の医療費の決定プロセスについて〕
〔看護師の需給バランスについて〕

冨士原 代議員

 国の医療費の決定プロセスは,医療費総額を閣議決定し,それをどう配分するかを中医協で決めるという形になっているが,総額が最初に決定されているため,それを医療界の中で取り合う形にならざるを得ない。この方式では,医療界の中で分断が起き,力を結集することができず,あるべき診療報酬を実現できなくなっている。医療機関の未曽有の経営危機に対し,どのように対処されるのかご教示いただきたい。
 最近,京都府内だけでなく,全国的に見ても看護学校の閉校が増加している。看護師の養成数が減少すると,看護師の需給バランスが崩れる可能性が増大する。看護師の数で診療報酬の多寡を決定する現在の診療報酬体系では,医療崩壊に繋がることが必至と思われる。今後,どのように対応されるのかご教示ください。

◇濱島府医副会長

濱島 府医副会長

 医療費の決定プロセスについては,従来であれば,厚労大臣の諮問機関である中医協を中心に,実態調査のデータを分析しながら次世代の医療について話し合い,約4~5か月の間,喧々諤々の議論を経て厚労大臣に答申を出すという形であったが,1997 ~ 98 年の医療法改正,小泉内閣の医療費抑制政策のあたりから,内閣の閣議決定の力が強くなってきた。
 昨今は,財務省の諮問機関である財政審が,財政面のみを重視した春と秋の「建議」などを出して発言力を強めており,新型コロナで診療所が黒字になったという恣意的なデータを用いて診療報酬の引下げを主張したことは,皆さんの記憶に新しいところである。
 こういった状況は大変憂慮すべきことであり,医療や福祉に関する議論の中心はあくまでも厚生労働省を中心とした我々医療界であるべきだと考えている。ご指摘のとおり,医政活動が大事であるということには,全く同感である。府医顧問である城守日医常任理事がかつて中医協の委員を務められた時,診療側である2号側委員が1号側委員の指摘をことごとく論破していても,いざ蓋を開けてみると,財政審や財務省の元々の筋書どおりになっており,政治力が強い方の言い分が通るということを実感したところである。
 一昨日公表された「骨太の方針2025」は,財政審の主張をかなり押し戻したものとなったが,今回,府医の推薦議員が国会議員を集めて非常に政治力が発揮されたことで,医療界の言い分が通ったものだと考えている。医療従事者全体の代表議員を出すことが理想であるものの,やはり他の医療関係職種も各団体の主張をよりはっきりさせたいと考えて代表者を擁立しているため,そこは医師会として,医療界が一緒にまとまっていこうという考えで活動を展開しているところである。
 次に,看護師の養成について,1990 年代頃から4年制の看護大学が増加してきたことにともない,キャリアアップを目指す看護師が増加し,医師会が運営してきた3年課程や2年課程,准看課程などの希望者が減少しているという厳しい現実がある。ただ,我々医師会が運営する看護学校は,地元に密着した看護師を養成するというという重要な役割を担ってきたところである。
 日本看護協会の統計によると,病院勤務の看護師数はこの10 年間で,92 万人から102 万人と,およそ1割増加しているが,いわゆる機能分化政策で,病床あたりの看護師数が増えたことにより看護師の争奪戦が起こるなど,病院勤務の看護師も非常に不足してきた経過がある。
 看護師の地域偏在について,二次医療圏ごとのデータを見ると,北部地域では人口が少ないため,人口10 万人あたりの看護師数では大きな格差は見られないが,やはり地元の看護学校の養成者数が減っているため,就業する看護師・准看護師は50 歳以上が半数を占め,10 年後には急に看護師数が減少することが懸念される。こちらも医師偏在の問題と同じく,決定的な方策を見出すのは難しいのが現状である。
 府医としては,行政や看護協会,各看護大学に働きかけて,看護師の配分の問題について協議していきたいと考えている。

次期診療報酬改定に向けて,医療機関の経営安定化に必要十分な財源の確保を要望
 続いて行われた協議では,光熱水費や材料費等の諸物価に加えて人件費が高騰しているにもかかわらず,診療報酬が抑えられているため医業経営が逼迫し,医療従事者の賃上げもままならず,他業種への人材流出に歯止めがかからない状況にあるとして,医療・介護の窮状を訴えるとともに,次期診療報酬改定では,医療機関が物価高騰・賃金上昇に対応し,医業経営を安定化させるために必要十分な財源の確保を強く政府に求める決議が採択された。

退任役員の尽力に謝意を示し,感謝状・記念品を贈呈
 本代議員会をもって退任となった濱島高志府医副会長,三木秀樹府医理事,畑雅之府医理事,角水正道府医理事,大坪一夫府医監事の5名の先生方に対し,長きにわたる府医の活動へのご尽力とその功績を称え,松井府医会長から労いの言葉とともに感謝状と記念品が贈呈された。

決議

 厚生労働省より医療機関の2024 年度経営状況分析が公表され,病院・診療所の区別なく赤字となり経営がひっ迫している機関が最も多いというデータが示された。近年の材料費・光熱水費などの諸物価に加え,人件費が高騰しているにもかかわらず診療報酬が抑えられてきたことが要因である。
 春闘の結果,2年連続で大企業を中心に5%超の賃上げが実施され,医療従事者とのさらなる賃金格差が拡大し,他業種への人材流出に歯止めがかからない状況である。いかにICT が発達しようとも,「人」が現場にいなければ,医療・介護は成立しない。公定価格により運営する医療機関は,諸経費の上昇分を価格に転嫁することができないため,診療報酬の大幅な引き上げが必要である。
 過去数年の骨太の方針における「社会保障関係費を高齢化の伸びの範囲内に抑制する」という「目安対応」は,諸経費上昇や医療技術の進歩や新薬など医療の高度化を視野に入れたものではなかった。
 今般示された「骨太の方針2025」では,社会保障関係費は「高齢化による増加分に相当する伸び」に加えて「経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する」と明記されたものの,医療の高度化への対応には言及しておらず,また「予算編成全体は歳出改革努力を継続する」との文言は残されている。さらに,賃上げ,経営の安定に向け,次期診療報酬改定で的確な対応を行うとしているが,その結論は2025 年末に先送りされており,財務省からの厳しい対応が懸念される。
 「賃上げこそが成長戦略の要」とし,全国民に2029 年度まで物価上昇を1%上回る賃金上昇をノルムとして定着させるのであれば,医療関係者全ての賃金を5%超上昇させなければならない。
 医療機関が物価高騰・賃金上昇に対応し,経営を安定させるためには,診療報酬の大幅な引き上げが必要であり,以下を強く主張する。

一.次期診療報酬改定では,医療機関の経営を安定させるための必要十分な財源を確保せよ。

 2025 年6月15 日

京都府医師会 第214 回定時代議員会

2025年7月15日号TOP