勤務医通信

COVID-19 流行5年後に思うこと

京都済生会病院 消化器内科
大野 智之

 府医の先生方には平素よりお世話になりありがとうございます。今回執筆担当にあたり,前回の原稿を見直してみました(2020 年6月頃に本通信に掲載いただきました)。当時COVID-19 の初期の流行が少し落ち着きつつあるものの,外出控えの真っ只中でした。仕事の機会を失われた方々に比べれば病院で仕事ができるのは恵まれているとは分かっていながらも,重症化症例を目の当たりにして感染への恐怖や,リモートワークの人々を少しうらやましくも思ったりしていた記憶があります。それから5年弱経過し勤務環境,世の中,私生活の様々なことが変わりました。

写真1 前回の写真(土曜夕方の新幹線ホーム)。非常事態宣言中,外出するのにきちんとした理由が必要な時代でした。

 現在の勤務先は2022 年に新築移転,名称のマイナーチェンジを経て新しくスタートを切りました。私自身は以前の勤務先(市立奈良病院)でも新築移転を経験しており,2度目となる働きやすい環境で働いています。旧病院では手術室横の倉庫を改造した,音が筒抜けの薄いカーテンで区切られた狭いスペースで内視鏡診療を行っていましたが,現在は内視鏡センターとして独立した場所を確保でき,プライバシーの保たれた検査室となり,放射線透視室も当科独自で運用可能となりました。一方新築の病院には多額の建築費等の返済が発生します。全国の病院の8割近くが赤字らしいですが当院もその例に漏れません。経営効率や稼働率などの話を気にしないといけない世代になったからなのかもしれませんが,施設認定やDPC 係数等に関連する約束事(委員会,会議,カンファランスの運営など)のための仕事も多くなっています。中にはブルシット・ジョブ的な性格のものも存在しており(あくまでも個人の感想です),何とか簡略化してほしいものです(David Rolfe Graeber「ブルシット・ジョブークソどうでもいい仕事の理論」岩波文庫 2018)。
 個人としての病院での立ち位置も少しずつ変わりつつあります。勤務医部会に参加させていただくことになったのもそうですし,地区医の会合への出席も最近増えています。診療時間等が削られることは残念ですが,1診療科の勤務医が院内業務では得ることのできない様々なことを日々勉強させてもらっています。当然ながら各々の会議で議案となるような内容なので様々な問題があります。勤務時間の格差,人員不足への対応は病院や診療科毎に異なりますし,自己研鑽と業務の線引きなどは未だに自分の中でクリアにできません(自身は学会発表を自己研鑽として考えるほどきちんとした医師ではありませんので)。世代間や職種での考え方の相違も最近感じてますが,院内の方に情報を伝えてより良い病院にすることが現在の任務かと思います。
 私的な環境も変化しつつあります。卒後32 年になりますが,幸い大病せずこの5年を過ごすことができました。しかしながら体力の低下,膝や腰の痛み,老眼など老いを確実に感じるようになりました。長時間の睡眠継続も難しく,頻尿なるものも気になります。子育ても概ね終了し(ATM としての役割はもうしばらく続きますが),もう少し自分の時間を持てるはずなので,健康に気をつけながら日々過ごしていこうと思います。
 勤務医の独り言,大変失礼いたしました。今後ともよろしくお願いいたします。

写真2 先日の京都マラソンへ向かうランナーでごった返す地下鉄駅構内より。小生は病院日直に向かう数少ない私服姿でした。

Information
病 院 名 京都済生会病院
住   所 長岡京市下海印寺下内田101 番地
電話番号 075-955-0111(代) 
ホームページ https://www.kyoto.saiseikai.or.jp/

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