「かかりつけ医機能報告制度」の報告事項の1つとして掲げられている「かかりつけ医機能に関する研修の修了者の有無」にかかる研修について,報告対象となる全ての医療機関が適切に当該研修修了を報告できるようにするため,日医が新たに「かかりつけ医機能報告制度にかかる研修」を創設しましたので,その概要をお知らせします。
1.趣旨
2025年4月から施行される「かかりつけ医機能報告制度」については,地域に根差して活動している医師の実績が可視化され,地域に必要なかかりつけ医機能が確保されるよう,多くの医療機関に手を挙げ参画してもらうことが必要不可欠である。
同制度の報告事項の1つである「かかりつけ医機能に関する研修の修了者の有無」についても,報告対象となる全ての医療機関から確実に報告がなされる必要がある。
そのため,同制度の施行および令和8年1月からの報告開始に先んじて,本会において「かかりつけ医機能報告制度にかかる研修」を創設し,同制度の報告対象に該当する研修として位置付けられるよう厚生労働省に申出を行うとともに,研修修了者に対する修了証の発行等,報告にあたって必要な環境を整備するものである。
2.対象者
原則,地域に根差して活動し,臨床に従事する医師。
3.研修内容
- 座学研修(知識)
現行の日本医師会生涯教育制度における取得単位(11頁参考1)を本研修における座学研修(知識)の取得単位とする。なお,単位のみを対象とし,カリキュラムコードは用いない。
- 実地研修(経験)
- 地域住民を守るため,それぞれの地域を面として支える活動(12頁参考2)であって,郡市区医師会長または都道府県医師会長が承認したものについて,1つの活動につき5単位を付与する。
- 医師会や大学のシミュレーションラボやトレーニングセンター等へ参加し,郡市区医師会長,都道府県医師会長または日本医師会長が承認したものについて,1つの活動につき5単位を付与する。
4.修了要件および修了証の発行
研修者は,上記の座学研修および実地研修について,それぞれ(必須)研修を行ったうえで単位を申請,取得し,その合計が10単位以上の者に対して,日本医師会長名の修了証を発行する(14頁参考3)
修了証は,修了者が医師会会員情報システム(MAMIS)(以下,「MAMIS」という)マイページにて確認できる状態に置くことをもって発行したものとする。
修了者は,MAMISマイページより修了証のダウンロードおよび印刷が可能である。
5.他の制度との違い
- 日本医師会生涯教育制度との違い
日本医師会生涯教育制度は,臨床医のみならず,基礎医学を研究する等臨床を行っていない医師を含めた医師全体を対象としており,主に「座学」が中心である。
一方,かかりつけ医機能報告制度にかかる研修は,主に地域を面として支える臨床医を対象としたもので,「実地(経験)」が必須であり,それを重視している。
- 日医かかりつけ医機能研修制度との違い
かかりつけ医機能報告制度にかかる研修は,ほぼ全ての医療機関(約11万3千)の臨床医を対象とするものである。
一方,日医かかりつけ医機能研修制度は,地域で中心的にかかりつけ医機能の役割を担えるようさらなる研鑽に励む医師である。このため,日医かかりつけ医機能研修制度の修了者は,かかりつけ医機能報告制度にかかる研修の修了要件を既に満たしている。
参考1 座学研修(知識)における具体例
参考2 実地研修(経験)における具体例
1.地域の時間外・救急対応
- 平日夜間・休日輪番業務
- 平日夜間・休日輪番業務に参加したことを証明できるもの。地域広報誌,休日・全夜間診療事業実施医療機関一覧など。
- 地域行事の救護班
- お祭りや運動会,花火大会など,地域で行うイベントにおいて救護班とした参加した写真など。
- 在宅当番医
- ホームページや地域広報誌等に掲載されている在宅当番医実施状況表など。
- 休日夜間急患センター
- 休日夜間急患センターに出務したことを証明できるもの。地域広報誌など。
- 電話相談業務
2.行政・医師会等の公益活動
- 行政等(国・都道府県・保健所・市区町村・自治会等)の委員
- 医師会・専門医会の委員
- 警察業務への協力
- 防災会議への出席
- 地域における防災会議に出席したことを証明できるもの。議事録など。
- 地域医療に関する会議への出席
- 地域医療に関する会議に出席したことを証明できるもの。議事録など。
- レセプトの審査委員会への出席
- 地域ケア会議への出席
- 障害者認定審査会への出席
- 介護保険認定審査会への出席
3.地域保健・公衆衛生活動
- 母子保健(産科健診)
- 集団予防接種や母親・両親学級など母子保健に関わる活動への依頼状,地域広報誌など。
- 乳幼児保健(1歳6か月児健診・3歳児健診)
- 学校保健(学校健診,学校医活動)
- 学校健康教育(性教育,がん教育,禁煙・薬物教育等)
- 開催案内プログラム,開催案内が掲載されているホームページの内容を印刷したもの,講義中の写真など。
- 産業保健(地域産業保健センター活動,職場の健康相談,産業医活動)
- 地域産業保健センターへの参画を証明できる依頼状,企業との契約書,契約先企業が労働基準監督署に提出する産業医選任報告書など。
- 事業主健診(特定健診・特定保健指導)
- 医療保険者から依頼されたことが分かる書類等の写しなど。
- 高齢者保健(高齢者健診・認知症検診)
- 予防接種(定期・その他)
- がん・成人病検診
- 市民公開講座(健康講座・介護教室)
- 講座を担当したことが分かるポスターや依頼状,または,実施の様子が分かる写真など。
- 精神保健
- 精神保健指定医として緊急措置入院を行った実績など。
- 健康スポーツ医活動
- 認定健康スポーツ医の認定証,スポーツクラブや競技大会等における救護所への派遣依頼状,または,活動の様子が分かる写真など。
4.多職種連携
- 訪問診療等の在宅医療ネットワークへの参画
- 訪問診療等の在宅医療ネットワークへの参加実績など。
- 介護保険関連文書の作成(主治医意見書等)
- 多職種との会合(ケアカンファレンス等)
- ACP の策定
- アドバンス・ケア・プランニングシート策定実績など。
5.その他
- 看護師・准看護師養成所に関する業務
- 看護師・准看護師養成所での役員名簿や講演などの様子が分かる写真など。
- 医学部等における地域医療等についての講義・講演
- 医師会共同利用施設への参画
- 高齢者の運転免許に関する診断書の作成
- 成年後見制度における診断書の作成
- 死体検案
- 医療 DX(地域医療情報連携ネットワーク等への参画等)
- 医療 GX(医療機関等における温室効果ガス削減等の取組等)
- 地球温暖化対策自主行動計画策定書などの取組み実績など。
- 論文執筆等の学術活動
- 高齢者・障害者施設への対応
- 配置医師または協力医療機関として高齢者・障害者施設への協力など。
- 地域における症例研究(J-DOME 等)
参考3 研修の申請・承認および研修のフロー