2025年5月1日号
京都府立医科大学医師会と府医執行部との懇談会が2月 27 日(木),京都府立医科大学附属病院で開催され,京都府立医科大学医師会から7名,府医から 13 名が出席。「京都府立医科大学附属病院救命救急センターの開設」をテーマに議論が行われた。
※この記事の内容は2月 27 日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。
京都府立医科大学医師会から,令和6年4月に開設された同大学附属病院救命救急センターについて,概要や実績等の説明が行われた。
現在,同センターでは,救急科専門医師6名を含む専従医師12名体制で対応し,夜間・休日については様々な診療科の医師で当直体制を維持していることを報告。現在,センターの運営体制としては,救急医療科の医師に加えて,初期研修医を準夜帯に4名,深夜帯に2名の2チーム制で配置するとともに,一部の診療科を除く各診療科の医師が輪番で救急医療科の医師をサポートする体制を整備し,4~5名体制で対応していることが紹介された。
続いて,開設後の実績として,救命救急センター指定前に比べて,①救急車の受入が増加,②応需率が改善,③重篤患者が増加,④病床稼働率が向上したことがデータとともに示された。
センター開設前後の月平均の比較で,救急受入件数は216件から664件へと従前の3倍以上に増加し,ベッドが空いていない場合や処置中である場合を除き,「断らない救急」をポリシーとして対応しているため,応需率についても従前の60%未満から97.6%へと大幅に改善したことが報告された。また,重篤患者数は約200件と従前から倍増し,疾患別では意識障害,呼吸不全,脳血管障害の順に多いことを紹介した上で,入院全体に対する高齢者の割合が約半数であること,重篤患者の割合が入院全体の3割程度と高い傾向にあることが紹介された。救急の受け入れ件数の増加にともない,病床稼働率は平均で約70%から80%以上に上昇し,多い時では一般病床で95%になることもあり,病院全体としての仕事量が増加したと説明がなされた。
救急応需した患者はすべて大学病院に入院しているわけではなく,関連病院をはじめとする50以上の病院に協力を依頼し,早期に転院させる連携体制を構築していることを紹介した上で,救急応需した当日に搬送する件数も多く,入院患者についても多くは入院3日目までに連携病院へ搬送するなど,患者を抱え込まず,多くの病院と連携しながら対応しているとした。
今後の救命救急センター専用病棟の整備として,令和7年5月中を目途に,集中治療系の病床を増設するとともに,専用病棟の集約化を図り,現在はEICU,C5病棟の他,各病棟で受け入れている状況から,現在整備中のD5病棟ですべて受け入れる予定であると説明。今後,高度急性期医療を支える中核病院の機能を維持するとともに,近隣の連携病院と連携強化に努め,役割分担をしながら,救急医療体制の向上を図っていく考えが示された。
~意見交換~
府医は,ますます高齢化が進展し,救急医療のニーズが高まっている中で,令和6年度から医師の働き方改革がスタートしたことにより,市中の民間病院では宿日直許可を受けて医師の勤務時間が制限されたため,医療の「量」という観点からマイナスとなることが懸念されたものの,府医大,京都大学の両大学に救命救急センターが開設されたこともあり,表面的には大過なく救急医療が提供されている状況にあるとの認識を示した。府医大救命救急センターにおいて,救急受入件数が多い中で非常に高い応需率が維持されていることで,救急医療を担う市内の病院の意識にも影響を与え,結果として全体として応需率が高まり,救急のニーズが増加する中でも搬送困難事例が増えなかったとして,同センターの対応に謝意が示された。
府医大からは,医師の働き方改革の中で持続可能性を維持すべく,医師の勤務時間を管理した上で,基準を超えそうな医師に対して健康チェックを実施する体制を整えているが,同センターの医師の時間外労働の時間が病院全体で見ても特に上位にあるわけではないと説明がなされた。受入件数の多さと高い応需率の中で,スタッフのモチベーションを維持するためには,しっかりとビジョンを示すことが大事であると同時に,救命救急センターの指定を受けたこと自体がモチベーションに繋がっているとして,今後,新しい救急病棟の整備によって各科の負担が軽減できるとの見通しが示された。現在の課題としては,外国人患者の対応が挙げられた。
府医は,新型コロナ流行時には,発熱患者が救急の受入れを断られた事例が発生したことについて触れ,今後,#7119等の啓発により,適切な受診行動を促していくことも大事であるとの考えを示すとともに,疾病構造が変わっていく中で,新たな救急医療体制を作り上げていく必要があるとの認識を示した。また,新型コロナの経験から,高齢者施設と病院との連携を進めていくことを課題の一つに挙げ,今後の新興感染症の流行に備えて体制整備していくことが重要であるとした。
・日医未入会会員への日医入会促進について
日医では,「医師会の組織強化」を課題に挙げ,さらなる組織率の向上に取組んでいることを紹介した上で,日医未入会者に対する日医への入会促進に地区医,府医,日医が一丸となって取組む必要があるとして,日医への入会促進に協力を依頼した。
・京あんしんフォンについて
府医では,「京あんしんネット」のユーザーを対象として,「京あんしんネット」をより安全・安心に,より便利にご活用いただけるよう,専用の医療用ビジネスフォン「京あんしんフォン」を導入したことを報告。「京あんしんネット(MCS)」をはじめ,必要なアプリケーションをあらかじめインストールし,従来の「京あんしんネット」による連携に加えて,携帯電話としても利用できるため,より充実したコミュニケーションと連携の促進が期待できると説明した。
また,「京あんしんフォン」には,MDM(モバイルデバイス管理)サービスを付加しており,万一の端末の紛失時には遠隔から端末のロックが可能であるため,より安全・安心に利用いただけるとして,導入を呼びかけた。