2025年5月1日号
綾部医師会と府医執行部との懇談会が3月8日(土),料理旅館現長で開催され,綾部医師会から9名,府医から5名が出席。「日本医師会新会員情報システム(MAMIS)」,「京都府医師会防災業務計画」,「かかりつけ医機能報告制度」をテーマに議論が行われた。
※この記事の内容は3月8日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。
昨年10月末に公開された「医師会会員情報システム(MAMIS)」は,すべての医師会に所属する医師,研修会に参加する非会員の医師,すべての医師会事務局を利用対象として,三層構造(地区医,府医,日医)の流れに則って,入退会や異動の手続きを従来の紙の流れと同様のフローをWeb上で行うシステムである。
~4月からの認定医に係る単位取得・管理および各種手続きの変更について~
1月末に日医より,認定産業医および認定健康スポーツ医(以下,「認定医」という)に関する単位の取得・管理,認定医資格の更新申請について,MAMIS上で行うと説明があり,会員各位にはMAMISのマイページ登録を行うよう周知を図っているところである。
MAMIS構築の目的は,組織強化に係る取組みの一環として,医師が都道府県をまたいだ異動の場合にもWeb上でワンストップで手続きが行えるようにすることで各種手続きのハードルを下げ,会員の負担軽減を図ることである。また,このようにMAMISへの移行を急ぐ理由としては,数年前に産業医の単位シールがフリマサイトで売買されていたことが発覚したことを受けて,その対応のためにデジタル化が急務であったとの背景がある。
~地区医における会員管理とMAMIS の利用について~
会員の入会・異動・退会に際して,これまで地区医,都道府県医,日医それぞれに届出書類を提出していたものを,MAMISでは会員がWeb上のフォームに入力することで,ワンストップで手続きが可能となる仕組みである。会員が入力すると,システムを通じて,まずは郡市区医に申請が挙がり,地区で承認されると,次に都道府県医,日医へと三層構造を維持する形で,従来の流れに沿って申請・承認する形となっている。各地区においては,MAMISの医師会事務局用管理画面を定期的にご確認いただき,会員の先生からの申請の有無をご確認いただきたいと考えている。その上で,地区としても会員管理データベースとしてご利用いただけるようであれば,活用をご検討いただきたい。
従来の紙媒体による手続きについては,各地区において管理が必要な項目がMAMISの入力項目だけではカバーできない場合も考えられ,具体的には,入力項目に「班名」がない等の指摘をいただいている。こういった事情から引続き紙ベースでの入会・異動・退会の届出と併用せざるを得ないことも想定されるため,当面は紙による届出とMAMISによる申請の両方が混在することになると考えている。
府医においても,現状はMAMISによる申請だけでなく,引続き紙ベースの届出書も受け付けているが,今後,認定医になるための研修単位や,日医生涯教育制度の単位の取得にあたってMAMISのマイページ登録が必須となることを鑑みると,MAMISへの登録も勧奨していく必要があると考えている。将来的にはすべての医師会(地区,都道府県)がMAMISを利用することによって完全なペーパレス化を実現し,先生方の利便性の向上と,先生自身がデータを入力する仕組みであるため,医師会ごとに入力していたデータを一元化することで各医師会の事務の手間・ムダの軽減が期待できる。
今後もMAMISの機能拡充が予定されており,各医師会で作成した新規入会データの取り込み機能の追加や,会員の先生方のマイページから医師年金や医陪責保険の加入状況の確認が行えるようにするといった準備が進められている。現在はまだまだ発展途上のシステムであるが,今後のアップデートによって,会員の先生方,各医師会にとって使い勝手のよいシステムになることを期待している。
府医は,災害対策基本法に基づく「指定地方公共機関」として防災行政に参画することが求められており,その義務として「都道府県防災会議の協力要請・指示への対応」,「防災業務計画の作成」,「災害対策への体制づくり」,「防災訓練の実施」,「災害発生時の応急対策,復旧活動」などが定められている。
府医では,昨年の能登半島地震の経験も踏まえ,地区医での災害対策の参考となるよう「防災業務計画」を策定したところである。実際に被災した際には,全国から人・モノの支援が被災地に集中するため,「受援」に対する準備が大変重要となる。
~地区医の初動について~
災害医療は,平時の医療とは異なり,医療需要に対して医療資源が大幅に不足し,需給バランスが大きく崩れることになる。そのような状況において,限られた人的・物的資源を有効に活用することで,重要と供給(資源)のアンバランスを極力小さくし,効率的な医療活動を行うための基本原則として,「CSCA」と呼ばれる戦術的アプローチが行動の基盤となる考え方である。Command and Control(指揮命令系統)を構築し,Safety(安全)を確保した上で,Communication(情報収集)を行い,集めた情報をAssessment(評価・分析)し,活動方針を立ててから効率的に活動を行う。地区医での初動については,府医のひな形を参考にしてCSCAで考えた行動指針を検討していただきたい。
<参考>
「C:Command&Control」
指揮本部の設置・宣言,指揮命令系統
診療所の組織化(担当範囲)
・医師,スタッフ,家族 等・本部の設置 「いつ」,「どこに」,「誰が」,「何が必要」,「どこと連携」
「S:Safety」
安全管理
・self:自分・家族・スタッフ 等
・scene:診療所・自宅・地域 等
・survivor:来院患者,在宅患者 等
「C:Communication」
情報共有,通信体制
・固定電話,データ通信,携帯電話,衛星電話,無線伝令
「A:Assessment」
現場の評価(アセスメント)
・被災状況 ・周辺避難所 ・来院患者 ・近隣医療機関 等
~地区医に取組んでいただきたい重要項目~
災害時には情報収集に苦労するため,すぐに連絡が取れるよう緊急連絡網の作成とともに,指揮命令系統の確立とコミュニケーションツールの検討が必要である。
災害対策本部の設置については,設置基準や要件の明確化が重要であり,「震度5強(震度6弱)以上,警報発令時,地域(全部・一部)が被災したとき」など,いつ,どのタイミングで本部を設置するか,地域性に合わせて検討が必要になる。また,事務局,会長宅,公的施設など,どこに本部を設置して,会長,副会長,担当理事,事務局職員の誰が指示を出すか,本部資機材・通信手段の確保など,準備が必要なものの検討と同時に,「アクションカード」の作成も重要である。災害発生直後に参集した役員,事務局職員が最低限必要となる行動を簡単かつ具体的に示した行動指標カード(チェックリスト)になる。
地区内で地震が起こった際,被災状況についてどのような状況が起きているのか,また,物資の不足や,地区医で対応できることなどを府医や行政に発信していただくことで,府医としてサポートできるため,地域性等を含めて被災情報を具体的に発信いただくことが重要となる。
地区医として,すべてを背負い込むのではなく,こういった情報を共有していただくことで,全国から来る支援チームが適切な支援に取組むことができると考えている。
かかりつけ医機能報告制度が創設された経過については,財務省が新型コロナウイルス感染症の流行当初,かかりつけ医機能が十分に機能しなかったとして「かかりつけ医の制度化」を企図したことに対し,フリーアクセスを制限し,多くの医療機関に多大な影響を及ぼすものであるとして,日医が政府や国会議員などに積極的に働きかけを行った結果,令和5年5月に成立した「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」によって「かかりつけ医機能報告制度の創設」を含む「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」を行うという形で,法制上の明確化や認定制等,財務省が狙っていた「かかりつけ医の制度化」が回避されたものである。
かかりつけ医機能報告制度のポイントは,①かかりつけ医機能は診療科に関わらず報告できる,②研修を修了していなくても報告できる,③具体的な報告方法等の詳細は今後示される予定であるが,初回の報告は令和8年1月から3月に実施される見込みである―の3点である。
かかりつけ医機能の強化については,府医としても,高齢者が住み慣れた地域で自分らしい人生を全うできる社会を目指して「地域包括ケアシステム」の構築に取組んでおり,その中心的な役割を担うのが,「かかりつけ医」であり,「かかりつけ医機能」であると考えている。1人の医師がすべて担うのではなく,地域のすべての医療資源を活用することによって必要な医療を必要な時に,また,継続的に提供することができる,まさに医療をコーディネートする機能である。地域の中で患者を通じで普段から医療機関同士の連携を深めることによって,各医療機関がそれぞれの役割を理解し,機能を高め,お互いに助け合うことで地域の「面としてのかかりつけ医機能」のさらなる充実を図ることが重要である。
~報告が求められるかかりつけ医機能の内容~
報告する具体的な機能,項目は,1号機能と2号機能に分かれており,1号機能を報告した医療機関が2号機能も報告する仕組みとなっている。1号機能にある「②かかりつけ医機能に関する研修の修了者の有無,総合診療専門医の有無」は,あくまで有無について報告するものであり,研修を修了していないと報告できないというものではない。また,「③17の診療領域と一次診療を行うことができる疾患」についても,幅広い診療科が対象となっており,一次診療を行うことができる疾患も推計外来患者数が多い傷病を基に設定されることとなっているため,診療科にかかわらず,多くの医療機関が報告できるものである。
当初,財務省からは「一定以上の症状(20項目以上)に対して一次診療を行うことができる」医療機関を報告対象とすることが提案されたが,これにはかかりつけ医機能を持つ医療機関を限定することで,かかりつけ医と非かかりつけ医に分断し,その先には,非かかりつけ医への受診に関してフリーアクセスに制限をかけ,さらには,診療報酬でかかりつけ医を包括点数によりコントロールしようとする狙いがある。
これに対して,日医は多くの医療機関が報告できることが重要であって,これまで築き上げてきた患者と医師との信頼関係をこの報告制度が壊すことがあってはならないと主張し,最終的には多くの医療機関が報告できる制度になっている。日医は診療科にかかわらず積極的な報告を求めている。
~かかりつけ医機能報告の報告対象として該当する研修について~
報告の対象となる研修は厚労省において整理中であるが,日医は現在の「日医かかりつけ医研修制度」とは別のものを準備し,多くの会員が修了できる簡易なものとする見込みである。座学と実地両方の研修受講が必要となるが,座学は幅広い診療領域への対応に関する内容等で,決して難しいものではなく,実地についても休日の輪番業務や学校保健や健診への協力,行政の会議の委員など,これまで先生方が地域において活動されているものが対象になる見込みである。
また,現在の日医かかりつけ医機能研修制度を修了していれば,追加で受講する必要はないよう調整が図られており,詳細が示され次第,お知らせする(10頁参照)。