府市民向け広報誌『Be Well』第106号 『尿路結石症』

 府医では,府民・市民向け広報誌「BeWell」,VOL.106「尿路結石症」を発刊しました(本号に同封)。
 各医療機関におかれましては,本紙を診療の一助に,また待合室の読み物としてご活用ください。
 本誌に関するお問い合わせは,府医総務課(電話:075-354-6102,FAX:075-354-6074)までご連絡ください。

VOL.106「尿路結石症」
(A3版,見開き4ページ)

解説

医仁会武田総合病院 泌尿器科 部長  今村 正明

 近年,尿路結石症の罹患率が増えていることが報告されています。2015 年の調査では人口10 万人あたり年間138 人の日本人が尿路結石症になっており,さらに,生涯のうちで尿路結石となる確率(生涯罹患率)は日本人男性の7人に1人,女性の15 人に1人と非常に高率であると報告されています。
 尿路結石症の原因ですが,まず大きな要因として水分摂取量が少ないことが挙げられています。
また,尿路結石症患者では高血圧,糖尿病,高脂血症など生活習慣病の合併が多いことが判明しており,これらの疾患と結びつく食生活の欧米化も要因と言われています。家族性の要因も判明していますが,明確な遺伝子の異常は指摘されておらず,むしろ同じ食生活を送ることの影響が考えられています。これらの要因から,予防法としては,第一に水分を1日2L以上摂取することが有効と報告されています。そして,生活習慣病を有している場合には,食生活の改善も効果的と考えられます。
 症状は結石の部位によって異なります。上部尿路の腎尿管結石では,閉塞なければ無症状ですが,閉塞生じれば血尿をともなう腰背部痛を生じます。下部尿路の膀胱結石でも,多くは無症状ですが,頻尿や排尿時痛を生じることもあります。尿道結石では,尿道閉塞により,排尿困難を生じます。
 尿路結石症の診断は,基本は画像検査となり,症状を認める場合もしくは尿検査で顕微鏡的血尿を認める場合が検査の対象です。まずエコーやレントゲン検査を行いますが,最近では診断率の高いCT が行われることが増えており,より被曝線量の低いlow dose CT も普及しています。
 実際の治療法ですが,大きさが5mm 以下の結石では,基本は経過観察,症状あれば内服薬で自然排石を目指します。一方で,5mm を超える結石では外科的治療として,体外衝撃波結石破石術(ESWL),経尿道的腎尿管破石術(TUL),経皮的腎尿管破石術(PNL)を検討します。ESWLは体外から衝撃波を当てて結石を砕く方法で,比較的小さく柔らかい結石に向いていますが,患者自身が水分摂取を行い,結石を体外に尿として洗い流す必要があります。一方で,TUL とPNLは内視鏡で直接結石を確認の上で破砕装置を用いて砕き,その後破砕片を回収する方法で,大きく硬い結石にも対応しており,近年の主流の治療となっています。診断時の画像検査で得た情報から,結石の大きさや硬さを分析し,それに応じて各種治療法を行うことが治療成績の向上に役立っています。

2025年5月15日号TOP