舞鶴市の医療再編に思うこと

国立病院機構 舞鶴医療センター 眼科部長
酒井 克之

 昨年度の話になりますが,舞鶴市では持続可能な地域医療を確保・提供するために,市の主導で「舞鶴市医療機能最適化検討会議」が立ち上げられました。そこで今後この地域に必要な医療需要を分析し,病院機能の再編も選択肢に入れたまさに“将来にわたって持続可能”な体制を整理する検討会議が行われました。そしてこの3月に最終報告書がまとめられました。今回はその件に関して思うことを書きたいと思います。
 舞鶴市の医療提供体制について少し説明をいたします。舞鶴市内には公的な総合病院が4つあり,西舞鶴に舞鶴赤十字病院(日本赤十字社)と舞鶴市民病院(舞鶴市)の2つ,東舞鶴に舞鶴医療センター(国立病院機構)と舞鶴共済病院(国家公務員共済組合)の2つです(カッコ内は設置母体)。人口8万人にも満たない舞鶴市に公的な総合病院が4つもあることは,それはそれで恵まれていることであり,数年前まではそれなりに機能をうまく分担してダマシダマシではありますがなんとかやっておりました。しかし年々減る人口と高齢化による患者構造の変化,医療従事者の減少による業務過多,コロナ禍,働き方改革…などによりいよいよ収益が悪化し,4つの病院ともに赤字を叩き出すようになりました。このままでは舞鶴市の医療体制は維持できなくなる…,そのような事情もあり冒頭の検討会議の設置に至るわけです。

持続可能な医療提供体制を構築するための再編パターン(案)を整理(舞鶴市HP より)

 検討会議の最終報告書では別図の再編パターンを提示されました。①~⑧の8パターンありますが現実的なのは③~⑦であり,今後この5パターンをベースに詳細なシミュレーションを行って,どの選択肢が効率的で持続可能なのかを吟味して再編が進められていくのだと予想しております。要するにもう舞鶴市内に4つも総合病院を置いておく余裕は全くない,ということです。先日再編に関しての説明会が当院であり,舞鶴市の担当者に質問する機会がありました。「だいたいどのぐらいのタイムスパンで再編を考えているのか?」と質問しましたところ,「すべて完了するまでにはおおむね5~6年を見込んでいる」との返答でした。
 どの選択肢が選ばれようとも,私を含めて舞鶴の公的病院で働いている者はこれから数年のあいだに何がしかの影響を受けることになります。多くの医療従事者や市民を巻き込んで多大なエネルギーをかけて再編を行うわけですから,やはりうまくいってほしいと思います。そのために必要なのは,先ほどまで“効率的”や“持続可能”という言葉が出ておりましたが,それに加えて“舞鶴で働くことが魅力的”な再編案ではないかと考えます。若い人が舞鶴の病院で働きたい,医療に従事したい,と考えれば,これからの人口減少時代でもうまくこの地域の医療を維持することができるのではないでしょうか。
 私事ですが舞鶴市での生活はもう22年になります。結婚して子どもが3人すべて舞鶴市内で生まれ,いろいろな病院にお世話になっています。まだ幼い子どもたちの急な熱発や腹痛で,夜中や休日の救急外来にお世話になることも1回や2回ではありませんでした。昨年には妻が病気になり,手術を舞鶴市内で受けることになりました。おかげさまで今は完治しており,舞鶴市内で出産や治療ができたことは大変ありがたいことだと夫婦で感じています。舞鶴市の医療体制を末永く維持していくことは必ず成し遂げなければなりません。私は病院勤務医の当事者として,そしてイチ舞鶴市民として行く末を見守っていきたいと考えています。

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