2025年10月1日号
8月30日(土),各専門医会長との懇談会がホテルオークラ京都で開催され,専門医会から14名,府医から18名が出席。松井府医会長の挨拶に続き,専門医会長および府医役員の自己紹介が行われた。
今回は日医常任理事の笹本洋一氏を講師に招き,「MAMISの今後の展開と組織強化」をテーマに講演が行われた。
日本医師会 常任理事 笹本 洋一氏
日医では,「医師会の組織強化」を課題として,さらなる入会促進による組織率の向上に取組んでおり,令和6年10月末に公開された「医師会会員情報システム(MAMIS)」(以下,「MAMIS」という)の導入によって期待される効果や今後の展望について説明するとともに,改めて医師会の組織強化を図ることの重要性を訴えた。
日医が実施した令和6年度の調査結果では,各都道府県の郡市区等医師会入会率は平均61.3%,うち日医までの入会率は平均84.3%,京都府においては,郡市区等医師会入会率は約65%と全国平均を上回っているものの,日医入会率は60%に満たない状況であることが示された。
勤務医に関しては,郡市区等医師会入会率が平均45.3%,うち日医までの入会率が平均76.4%という状況の中,京都府では,前者が46.9%と平均をわずかに上回る一方で,日医入会率は31.1%と大きく全国平均を下回っていることが示され,今後の組織強化には勤務医の日医までの入会率の向上が不可欠であることが指摘された。
日医会員数は,令和6年12月1日現在,17万7,383名(前年同月比+1,450名)であるが,厚生労働省の医師・歯科医師・薬剤師統計の調査結果次第では医師会の組織率が低下することが懸念され,仮に組織率が50%を下回った場合,医師会が国に対して強く主張したとしても,その意見が本当に医師を代表するものかどうかが問われ,発言力が著しく低下すると説明し,引続き入会促進を図っていくことが重要かつ当面の目標であるとして,会員数増加への取組みに理解を求めた。
今後の会員数の増加に向けた課題として,異動手続きの煩雑さ等による退会を防ぐこと,会費減免期間終了後の入会継続を図ること―を挙げ,後者については,会費減免期間終了後,新たに会費が発生することから,退会を希望する会員が一定数現れることが想定されるとした上で,各都道府県医において,会費減免期間終了後も会員として定着してもらうために様々な取組みが行われていることを説明し,日医の医師会組織強化検討委員会が行った調査結果から,取組み事例が紹介された。その中で,医学会の中で若手医師の発表の場を設けることや,研修医・若手医師との交流の場を設定することなど,医師会活動に直接関わる機会を創設することがポイントになると指摘した。
もう1つの課題である「異動手続きの煩雑さ等による退会を防ぐこと」については,「MAMIS」によって手続きの簡素化を図っていることを紹介した。
MAMIS は,全国すべての医師会に所属する医師を対象とし,三層構造の流れに則って,従来の紙の流れと同様の手続きフローをWeb上で行うシステムであり,これまで医師会の入退会や異動に際して地区医,都道府県医,日本それぞれに届出書を提出していたものを,会員が自らMAMISにアクセスし,入力することによって,ワンストップで申請が可能となるため,手続きに係る負担が大幅に軽減されていると説明。また,各種申請をスムーズにするだけでなく,本年4月からは,研修管理機能が追加され,研修会・講習会等の受講実績や単位取得状況が会員自身の「マイページ」からシステム上で確認可能になると同時に,受講証明書も自分で出力できようになっており,利便性の向上が図られていることが紹介された。
当面はMAMISの安定稼働と,システムとしての品質向上,登録情報の精度向上に取組みながら,今後,認定産業医・認定健康スポーツ医の取得状況や有効期限の確認の他,医賠責特約保険や医師年金の加入状況の確認も可能となるよう,さらなる機能拡充を図っていく予定であるとした。
日医としては,すべての医師に医師会活動に参画してほしいと考えており,医療界が求める制度・政策等を実現するためには,医師会を通じて医療界の意見等をその決定プロセスに反映させていくことが現実的な方法であると考えていることを説明した上で,医療に関する制度・政策等はいったん決定すれば,すべての医師がその決定に縛られることになり,また,一度決定したことを変更することは容易ではないため,すべての医師が自分事として医師会活動に関心を持ち,その活動に参画する中で,医師会のプレゼンスや発言力を高め,医療現場が求める医療制度・政策等の実現を目指すことが必要であるとの考えを示した。今後の診療報酬改定の議論において医師会の意見を反映させていくためにも,医師一人一人が集まって総力をなし,医師会として組織力で対応していくことがますます重要になると強調した。今後も若手医師や勤務医の入会を促進していくにあたり,各医師会からの働きかけだけではなく,専門医会の立場からもアプローチしていただき,医師会への入会を勧奨していただくことで,より説得力のある効果的な働きかけになり,入会促進につながるものと期待を示し,各専門医会に対して理解と協力を求め,講演を締めくくった。
その後の意見交換では,勤務医の入会促進を図るにあたって,そのメリットして日医の医師賠償責任保険への加入を挙げ,万一,保険事故が発生した際には,他団体が運営する医賠責保険に比べ,日医および都道府県医の全面的なバックアップがあることで,医師にとっては手続き面だけでなく,心理的な負担が大きく軽減されることが最大のメリットであるとして,もっとアピールしていく必要があるとの意見が上がった。
府医からは,医賠責保険の加入だけでなく,そういった医療事故等の情報を会員の先生方と共有しながら再発防止につなげていくことも医師会入会の大きなメリットであるとして,引続き入会の促進に取組んでいく考えを示した。