「市町村が行う健康診断や予防接種などの行政サービスにおける地域格差」,「外来機能報告制度,かかりつけ医機能報告制度」,「施設入所における情報提供書の提出」について議論

 宇治久世医師会と府医執行部との懇談会が12月10日(水),うじ安心館で開催され,宇治久世医師会から27名,府医から6名が出席。「市町村が行う健康診断や予防接種などの行政サービスにおける地域格差」,「外来機能報告制度,かかりつけ医機能報告制度」,「施設入所における情報提供書の提出」をテーマに議論が行われた。

※この記事の内容は,12月10日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。

市町村が行う健康診断や予防接種などの行政サービスにおける地域格差について

 地区から京都府内では市町村が実施する健康診断や予防接種などの行政サービスに地域格差が存在しており,宇治市・城陽市・久御山町では連携してサービス水準を揃える努力が進められているものの,府全体での格差是正には限界があり府医の関与が期待されているとして,問題提起がなされた。
 府医としては,帯状疱疹ワクチンの接種費用に代表される大きな地域差(京都市18,000円,宇治市6,500円)を認識しているとした上で,京都府および京都市に対し,予防接種広域化事業による費用請求の一元化や制度の統一,おたふくかぜワクチン接種費用の公費助成,RSウイルスワクチンの公費助成など,毎年の予算要望を通じて働きかけを続けていると理解を求めた。
 一方で,自治体ごとの予算状況から要望の実現は難しいのが現状であることを認めるとともに,京都市とのワクチン単価交渉も毎年難航している実情を明らかにした。
 さらに,国が示した5歳児健診の平準化については,府医学校医部会内に「子ども・子育て支援委員会」を設置し,健診実施体制における小児科医の偏在など,さまざまな側面から地域間格差の是正に継続的に取組んでいると説明した。
 その後の意見交換では,宇治市や亀岡市の「おたふくかぜワクチン助成」のような先進事例を他の地区医にも展開し,地域格差を是正する働きかけを強化するべきであるとの意見や,日本のワクチン行政に対する不満の声があがった。特に,海外製ワクチンの増加と国産ワクチンの減少,それにともなう価格高騰への懸念が示され,日本のワクチンメーカーは製薬会社の一部門であり,多額の投資を行う海外メーカーと比べて収益事業として成立しにくい構造的な問題などが指摘された。

外来機能報告制度,かかりつけ医機能報告制度について

 2026年1月より「かかりつけ医機能報告制度」の初回報告が開始されるが,これは医療機関が自身の機能を報告することで地域医療提供体制を「見える化」する新制度であり,医療費削減を目指す財務省のかかりつけ医の制度化に対抗する形で,日医が主導して設計されたものである。
 報告制度の概要について,制度は既存の「医療機能情報提供制度」に追加され,G-MISにより報告する。報告項目は以下の2種類。
・1号機能:院内掲示,研修修了者の有無,対応可能な診療領域などを報告。
・2号機能:時間外対応,在宅医療,介護連携など地域との連携体制を報告。
 原則は,2026年1月〜3月に初回の報告を行い,2026年4月に結果公表される。多くの医療機関は既存の日常業務で要件を満たし得るものである。
 かかりつけ医機能報告制度は,地域の実情に応じて,各医療機関が自らの機能や専門性を活かしながら連携し,それぞれが担うべきかかりつけ医機能を強化することによって,地域に必要な医療機能を確保することを目的としている。特定の医療機関を優良と認定したり,患者の受療行動に制限を加えたりするものではなく,あくまで国民や患者が自らのニーズに応じて,適切な医療機関を選択できるようにするための情報提供を強化する仕組みである。

~意見交換~
 2号機能の報告は「機能強化型在宅療養支援診療所」としての位置づけになるのか,また,報告を行わない医療機関では,診療報酬の初診料・再診料が引下げられるとの話題もあるが現状はどうか,との質問があった。
 2号機能には在宅医療の提供という項目のほかに介護サービスと連携した医療提供,入退院時の支援などもあることから,2号機能の報告を行うことが必ずしも「機能強化型在宅療養支援診療所」を意味するわけではないと回答した。
 報告を行わない際の診療報酬の減算については,財務省が財政審で提案している内容であり,医療機関を区別し,登録制などにつなげる狙いがあると述べた上で,今後議論される可能性も否定できないことから,すべての医療機関が積極的に報告することが極めて重要であると,理解を求めた。

施設入所における情報提供書の提出について

 地区から老人ホーム入所時にかかりつけ医が外され,施設側が利益追求のために都合の良い医療・介護サービスに限定する「囲い込み」の実態や過剰な介護サービス費請求などの問題提起がなされた。
 府医からは,厚生労働省「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」の資料を基に現状を説明した。
 高齢者向け住まいとして有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅が急増し,大都市部では特養など公的施設の整備が進みにくい中で,民間主導の住宅型ホームが高齢者受け入れの中心となってきた。
 一方で,併設・関連法人の介護サービスやケアマネジャーの利用を事実上強制したり,利用しない場合に家賃値上げを示唆するなどの「囲い込み」が各地で問題化しており,調査でも住宅型ホームの多くが併設事業所を持ち,その一部でケアマネ変更や併設サービス利用を入居条件にする実態が確認されている。
 ケアマネジャーに対しても同一法人サービスを限度額いっぱい使うよう求めるケースが相当数あり,画一的で利用者本位と言えないケアプランが作られる懸念が指摘されている。自治体も選択の自由の阻害や過剰・過少サービスの疑いを認識しているが,判断や指導が難しいという構造的課題がある。法令上は外部サービスの利用制限や特定事業者への誘導は禁止されているものの,現場での徹底には課題が残っている。
 こうした状況を踏まえ,厚労省の検討会では,中重度者や医療的ケアに対応するホームに対して事前の登録制を導入し,参入後も更新制によって質を担保し,不正があれば開設制限を行うなど規制強化の方向性が示されている。
 また,入居契約で併設サービスやケアマネの利用を条件にすること,家賃優遇などで誘導すること,医師やケアマネの変更を強要することを禁止事項とすることなどが設けられる他,行政が事後確認できるよう透明化を進めること,住まい事業と介護サービス等事業の経営の独立などが検討されている。民間住宅型ホームが高齢者受け入れの主力となる中で,囲い込みや不適切なサービスを防ぎ,入居者の権利と安全を確保するための仕組みづくりが今後の大きな方向性となっている。

 その後の意見交換では,家族が施設に頼らざるを得ない在宅介護の負担という社会制度の問題があるとの指摘や個別の対応には限界があるため,医師会として地域で連携し,地道な活動を続けるとともに,国に対して制度改善を働きかけていく必要があるなどの意見が挙がった。

2026年2月1日号TOP