「防災計画」,「OTC 類似薬の保険給付の在り方の見直し」について議論

 中京東部医師会と府医執行部との懇談会が 12 月 17 日(水),ハートンホテル京都にて開催され,中京東部医師会から8名,府医から8名が出席。「防災計画」,「OTC 類似薬の保険給付の在り方の見直し」をテーマに議論が行われた。

※この記事の内容は,開催日時点のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。

防災計画について

 府医は,災害対策基本法に基づく「指定地方公共機関」として位置づけられており,平時から防災行政に参画することが求められている。指定地方公共機関には,防災業務計画の作成をはじめ,都道府県防災会議への協力,災害対応体制の整備や訓練の実施,さらには災害発生時の応急対策や復旧活動などが義務として定められている。こうした背景を踏まえ,府医では災害対策小委員会での協議を経て,令和7年1月に「京都府医師会防災業務計画」を取りまとめた。
 その中で,特に重要な位置づけとなるのが「地区医師会の対応」である。地区医における初動対応や基本的な考え方について整理し,計画の中に示している。地区医の初動対応にあたっては,「CSCA(Command・Safety・Communication・Assessment)」の考え方が重要である。この考え方に基づき,誰が指揮を執るのか,安全を確保できているか,情報の共有と連絡が取れているか,被災状況を適切に把握できているか―という視点を意識することで,混乱を最小限に抑えた対応につなげることができる。
 計画では,地区医に取組んでいただきたい重要項目として,①緊急連絡網の整備,②会員医療機関等の被災状況や地域の医療ニーズに関する情報発信,③地区医師会としての本部体制の構築,④災害対策本部会議の開催による方針決定,⑤市町村の災害対策本部や,保健所単位で設置される保健医療福祉調整支部への要員派遣―などを例示している。これらすべてに取組むことは理想的ではあるが,地区医の規模や被災状況によってできることも変わってくるため,あくまで目安として可能な範囲で取組んでいただければと考えている。
 地区からご指摘のあった,「各地区医が各自ばらばらで作成した災害対応指針が本当に役に立つのか」という視点は非常に重要であり,府医としては,各地区で対応に大きなばらつきがないよう一定の枠組みとして地区医災害対応指針のひな型を示している。一方で,あまり細部まで決めすぎると,実際の災害時に機能しなくなる恐れもあるため,最低限の決め事以外は,発災時には状況に応じて柔軟に対応するということでも差し支えないと考えている。
 また,開業医が救護テントや災害拠点病院などで医療救護活動に参加する場合の要請については,原則として府医から発信し,JMAT京都として活動していただくことを想定している。地区や状況によっては,市町村や区役所から直接要請を受けるケースも考えられるが,その場合でも,事後で構わないので速やかに府医へ報告していただくことで,JMAT活動として整理し,傷害保険等の補償の対象とすることを想定している。
 「京都府医師会 防災業務計画」には,災害発生時の初動として,医師会の役職員がどう行動すべきかを「アクションカード」としてまとめ,やるべきことがフローチャートで示されているので,是非ご参考いただき,それに則って対応を検討いただければと考えている。

OTC類似薬の保険給付の在り方の見直しについて

 OTC類似薬の保険給付の在り方の見直しは,財政審の「春の建議」において,セルフメディケーション推進策の1つとして打ち出され,その後,三党合意の文言が反映される形で「骨太の方針2025」に記載された。その後の社会保障審議会医療保険部会では,子どもや慢性疾患患者,低所得者の「患者負担などに配慮しつつ」という文言が付記されたため,保険外しの動きは限定的になると見込まれたが,政局が大きく動き,少数与党となった自民党はその政策決定プロセスにおいて,局面によっては連立を組む日本維新の会の考えを汲み取らざるを得ない状況となった。
 現時点で,一律に薬価基準から削除しての保険適用除外は見送る方向で公的保険適用は維持させることとなり,保険外併用療養費の仕組みを導入して薬剤の全額もしくは一部を特別料金として患者負担とすることは確定しており,医師が処方して調剤薬局で患者が受け取るという従来の流れは確保されたが,最終的には「今後の保険適用除外を見据え」という一文が明記される形となった。
 OTC類似薬の保険適用見直しは,医療資源の効率的な再配分が目的であると直接的に示した資料は確認できないが,過去には保険者側の委員から「薬剤給付の適正化」について言及があったことや,直近では,厚生労働省社会保障審議会の医療保険部会の資料に令和6年の三党合意を引用する形で「医療保険制度の持続可能性確保」が目的と記載されていることを鑑みると,ご指摘のとおり,単なる給付の削減だけでなく,医療資源を最も必要な領域に重点化するという狙いもあると推察される。
 また,セルフメディケーションの動きにどう向き合うのかという点に関しては,比較的低いとされている日本のヘルスリテラシー向上への取組みとして,府医においても引続き健康スポーツ委員会等での検討を通じて,府民に向けた啓発活動を展開していきたいと考えている。一方で軽症領域における適切なセルフケアという考え方は,実質的に医学的判断を経ない段階で国民の自己判断に委ねるという側面もあり,誤った自己判断による重症化リスクや重大な疾患の見落としリスク等も潜んでいるという本質的な問題をしっかりと伝えていく必要がある。
 医療資源の再配分については,財務省が秋の建議で「受診時定額負担」を再び持ち出し,比較的軽微な受診に際しては患者から一定額の負担を徴収する仕組みを検討すべきとして,これらを保険から外し,国民皆保険制度を有名無実化する試みが繰り返されている。
 財務省は「大きなリスクは共助中心,小さなリスクは自助中心」として,生死にかかわる治療のみを重視しているが,日医は「診療所においても患者の日常生活を支え,幸せな人生を送るために必要な診療を行っており,これを“低価値”として軽視するのは不当である」と強く反発している。財務省の考え方は効率性を基礎とした民間保険の発想であり,支え合いの原理で成り立つ公的保険には全くそぐわないものと考える。ただ,医療資源の効率的配分という考え方には,「限りある医療保険財政」という観点において合理性があり,プロフェッショナルオートノミーとしてその実現を目指すことも医師会の役割の一つであると認識している。
 今回のOTC類似薬の保険給付の在り方の議論もそうであるが,医療保険制度の給付と負担をめぐる議論においては,現在受けている給付の価値と制度改正により生じる影響を国民が十分に理解した上で進めることが不可欠である。その前提を欠いたまま,負担面のみに着目した議論が先行すれば,最終的に国民全体の不利益につながることが懸念される。政治情勢が大きく動く中でこそ,日医を中心に医療界がまとまって社会保障に係る国民的議論を正しい方向にリードしてく必要がある。

〜意見交換〜
 その後の意見交換では,地区より重層的支援体制事業における医師会の役割と課題整理について問題提起がなされ,同事業で扱う認知症,精神障害,難病および慢性疾患といった支援困難ケースの多くは医療の継続的関与が不可欠であるにもかかわらず,京都においては医療側から事業の全体像が見えにくく,医師会やかかりつけ医が自分たちの事業として認識しにくい現状があるとして,是正の必要性が指摘された。地域包括ケアの構築課程において顕在化する制度横断的で支援が届きにくい支援困難事例を可視化し,調整・対応につなげるための実践的枠組みとして重層的支援体制事業を位置づけるのが妥当であり,かかりつけ医機能の延長として同事業を捉え直し,地域でどのように認知症や精神障害等とともに暮らすのか,という生活モデルの構想段階から医療が関与する必要があるとの意見が挙がった。

2026年2月15日号TOP