福知山医師会との懇談会 12.20 福知山医師会講堂

 福知山医師会と府医執行部との懇談会が 12 月 20 日(土),福知山医師会講堂で開催され,福知山医師会から 15 名,府医から5名が出席。「名称変更した府医の事業」をメインテーマとしつつも,看護師不足や災害・緊急時の通信インフラ,医師会組織強化などテーマにとらわれない幅広い内容について活発な意見交換が行われた。

※この記事の内容は,開催日時点のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。

名称変更した府医の事業について

 府医では,2025年6月に発足した新執行部の方針のもと,会内事業の再編を行った。その背景には,新型コロナウイルス感染症や大規模災害への対応経験を踏まえ,より実働性の高い組織として機能する必要性があった。
 新執行部の活動方針としては,

  • 「地域包括ケア構想」の検証と,各医療圏における「新たな地域医療・介護構想」の推進,その中での「面としてのかかりつけ医機能」の強化
  • 必要な政策実現のため,できるだけ多くの会員が医政活動を含めた医師会活動に興味を持ち,その必要性を理解し,参加できる環境づくりを進める「組織強化」
  • 若手医師との交流を深め,情報を共有しながら将来の医療のあり方をともに考えることで,医師会活動を次世代へ継承すること

の3点を掲げているとして,主な会内事業の再編について説明した。

〜地域医療部門〜
 従来の救急・災害委員会と感染症委員会を統合し,「救急災害危機管理対策委員会」を設置。緊急時には関係機関と連携し即応できる体制構築を目指すとともに,平時からの研修や情報提供は小委員会(救急,災害,感染症)で担うこととした。
 また,健康日本21対策委員会とスポーツ医学委員会を統合・再編し「健康スポーツ委員会」を設置。スポーツを通じた健康寿命の延伸や健康リテラシー向上を中心に取組む方針である。
 これまで会長諮問事項に対する答申を検討する場として「地域ケア委員会」を設置していたが,地域包括ケアのより実践的な推進や在宅医療を含む「地域医療・介護構想」への対応を強化するため,委員会を「地域医療対策委員会」へ改称・再編する。2026年度には,各都道府県で「新たな地域医療構想」の策定に向けた具体的な検討が始まる。従来のように2年間で答申をまとめる方式にとらわれず,地域ごとに不足・充足している医療資源,持続可能な体制維持のために必要な再編・集約の有無などを,柔軟かつ迅速に検討していくことが求められる。今後は,各圏域からの意見を踏まえつつ行政とも連携し,地域医療構想調整会議をより実りあるものにするため,実働的で機動力のある委員会運営を目指す方針である。
 学校保健委員会,乳幼児保健委員会,産業保健委員会については,学校医部会,産業医部会にそれぞれ発展的に統合し,答申作成にとらわれない柔軟で迅速な対応を最優先とした。学校保健・乳幼児保健分野については学校医部会のもとに「常任幹事会」,「子ども子育て小委員会」を,産業保健分野については「産業医部会正副幹事長会」をそれぞれ設置し,答申作成にこだわることなく,協議の自由度を高め,より実践的な活動につなげていく方針である。

〜保険医療部門〜
 急激に変化する医療の周辺課題への理解促進を図る機会として,医療政策懇談会の開催頻度を年1回から年4回程度に増やし,会員へ即時性のある情報提供を行う方針である。

〜総務部・学術部部門〜
 従来の活動をさらに発展させるとともに,「KMA.com」を通して,多くの若手医師を巻き込むことで会員増強を図る。特に,府医が全国に先駆けて取組んできた“屋根瓦塾”“新研修医総合オリエンテーション”“Re-1グランプリ”など,研修医事業の実働部隊として活躍していた若手医師ワーキンググループを「屋根瓦ワーキングチーム」と改称し,公式な位置付けにしてより推進していく方針である。

〜意見交換〜
 病床削減,看護師不足,医師国家試験,災害・緊急時の通信インフラ,医師会組織強化,次期診療報酬改定など幅広い内容について活発な意見交換が行われた。

■病床利用率低下と病床削減への懸念

 多くの病院で病床利用率が下がっているが,その主因は医療需要の減少ではなく,看護師不足によって稼働できない病床が増えている点にあると指摘があり,公立病院でも同様の状況が見られ,看護師が確保できず病床を閉鎖せざるを得ないケースが各地で発生している中で,こうした実態を無視し,利用率の低さのみを根拠に病床削減を進めるような意見に強い懸念が示された。
 特に,大規模災害や感染症流行時には一時的に病床需要が急増するため,過去に旧病院などを活用して対応できた余力が失われれば,地域全体で患者の受け入れが困難となり「たらい回し」が発生する危険性が指摘された。

■看護師不足と看護師養成機関の危機

 看護師不足の背景には,養成基盤そのものの弱体化があり,少子化や大学志向の高まりにより看護専門学校の入学者が減少し,医師会立を含む多くの専門学校が閉校・縮小に追い込まれているとの意見が挙がった。地域に根ざし定着率の高かった専門学校が失われる一方,大学の看護学部は増えているものの,地域医療を担う人材確保には必ずしも結びついていないと指摘。このままでは将来的に深刻な看護師不足が進み,地域医療の維持が困難になるとの危機感が示された。
 また,看護師養成は本来行政の責務であるにもかかわらず,公的支援が不十分で,学費補助や養成支援の仕組みも弱い点が問題視された。病床削減を議論する前に,学費補助や無償化などを含む抜本的な支援強化が不可欠であり,大学にも地域で働く看護師を育成する体制整備を求める必要があるとの意見が出された。

■医師国家試験合格率で医師数を調整(財務省案)

 医学部定員が約1割増加しているにもかかわらず,医師国家試験の合格率を意図的に調整して医師数をコントロールする財務省案に対して,強い懸念が示された。現在の合格率は9割強であり,この構想が実施されれば,6年間学んだにもかかわらず医師資格を得られない医学生が大量に生じることになると指摘。歯科医師や薬剤師分野ではすでに国家試験の合格率調整による人数抑制が行われており,その「成功体験」を医師にも適用しようとする官僚的発想に対して,強い危機感が示された。
 国家試験は本来,一定水準の知識と技能を備えているかを確認する資格試験であり,必要な能力を満たした者は原則として全員合格とすべきであり,合格率を操作して医師数を調整することは,資格制度の本質を歪めるものであるとの意見が多数を占めた。

■災害・緊急時の通信インフラ

 9月に発生したNTTの通信トラブルにより,救急業務において一時的に連絡手段が途絶し,現場ではやむを得ず個人の携帯電話などで対応せざるを得なかった事案が報告された。こうした非常時に備え,各医療機関が個別に補完的な通信手段を整備することは現実的ではなく,本来は行政が主体となって一括で企画・構築すべき公共インフラであるとの意見が示された。
 現状では,総務省からは「複数の通信手段を準備するように」といった一般論にとどまり,京都府としても医療機関側に義務づける立場にないため,具体的な制度設計や整備が進んでいないと指摘。実際に想定されている対策も,固定電話と携帯電話の二重化程度に限られており,補助金を含めた現実的な支援制度が不可欠であるとした。また,当日,CPA事案が発生し,警察経由で連絡を取るなど十分とは言えない対応が行われた例もあり,現行体制の脆弱さが改めて浮き彫りとなったが,行政側の危機感や本気度が不足していることが問題視された。

■医師会の価値と若手世代への発信強化の必要性

 近年,医師会入会にメリットを求める傾向が強いが,医事紛争対応など専門弁護士による支援の価値が十分に伝わっていない現状があるとの意見が挙がった。しかしながら,医師会の本質的な価値は個々の医師にとっての短期的・金銭的な損得ではなく,政策形成や制度維持に組織として関与し,医療そのものを守る力にあるという点であり,この「組織として医療を守る」という意義を,若手医師にも実感できる形で可視化し,具体的サービスと併せて伝えていくことが,加入促進の鍵になるとされた。
 さらに,情報発信のあり方そのものを抜本的に見直す必要性に言及があり,若手医師は対面型の集会よりも,オンラインやモニターを通じた学習・情報取得に慣れており,従来型の広報や対面中心の医師会活動では十分に情報が届かないとの指摘があった。また,医師会のメディア戦略は総じて弱く,今回の診療報酬改定率ではマスメディアが味方したものの,状況が反転した場合のリスクも大きいとの危機感も示された。

■次期診療報酬改定

 本体3.09%という約30年ぶりの高水準のプラス改定が見込まれているが,これは当初,財務省が提示していた本体プラス0.55%,薬価等を含めれば実質マイナスとなる案から大きく転換したものであると説明。日医や自民党議員連盟を中心とした集中的かつ組織的な働きかけにより,短期間で改定率が押し戻されたことは,医政活動と世論形成の効果を明確に示すものとして一定の評価がされるとの考えが示された。一方で,補正予算18兆円超のうち医療分野に1兆円以上が配分されるなど,財務省側から見れば「負け」が続いており,今後は医療費抑制や配分操作による巻き返しが強まる可能性があるとの懸念も示された。また,改定財源の多くが病院に配分され,診療所は限定的にとどまるのではないかという不安の声も上がった。
 さらに,財務省が医療費抑制のために,病院と診療所の分断を招くような恣意的なデータを用いているとして,不信感が強く示された。特に,診療所の利益率などを「平均値」で示すことにより,「開業医は儲けすぎている」という印象を世論に与えている点が問題視され,日医執行部はその都度誤りを指摘し抗議しているとした。
 加えて,医療財政の持続可能性という観点から,消費税と高額医薬品の問題も議論がおよび,医療は消費税が非課税であるため,仕入れ等にかかる消費税を控除できず,結果として特に病院は大きな負担を直接被っている現状が改めて示された。また,超高額医薬品をすべて保険で賄う現在の制度は将来的に限界があり,保険給付の範囲や自己負担のあり方について,国民を巻き込んだ本格的な議論が不可避であるとの認識が示され,少子高齢化の進行により,支える側と支えられる側の人口比が急速に悪化し,従来の共助モデルが揺らいでいることへの危機感も強調された。

■医政活動の重要性

 医療政策を左右するのは最終的に「政治」であるとして,診療報酬改定や補正予算の過程では,与党のみならず野党も含めたロビー活動が一定の成果を上げており,議員連盟,地元選出議員との関係構築が極めて重要であることが再確認された。政治力の源泉は「数」であり,医師会員数,特に若手医師の入会拡大が,今後の医療政策に影響を与える最大の基盤となるとの認識が共有された。

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