2026年2月15日号
京都市立病院診療部 統括部長
家原 典之
コロナ禍が去ったかと思えば,医師の働き方改革や厳しい病院経営と物価高の荒波が押し寄せ,皆様も緊張した日々をお過ごしのことと思います。忙中閑あり,今回は私の趣味の話をします。皆様の気分転換になれば幸いです。
私は山科の田舎に生まれ育ち,中高を奈良公園の鹿とともに過ごしたためか,自然が大好きでのんびりとした性格になりました。京都大学時代は旅行という学外活動をもっぱらとしたおかげで,季節にも敏感で,春の花見は哲学の道・夏の花火は琵琶湖・秋の紅葉は京都西山・冬のスキーだけは信州へと自然とともに過ごしてきたためか,透析室や研究室という閉鎖空間が性に合いません。スタッフや透析患者さんはいつも同じ顔ぶれで,光景にも変化がありません。最近は透析室の殺風景な白壁に季節感あふれるタペストリーを師長さんと協力して張り替えることが大事な仕事となっています。
そんな私の趣味は園芸です(財テクも趣味ですが,殺伐とした話題は今回控えます)。きっかけは京都大学腎臓内科柳田教授就任のお祝いに多数いただいた胡蝶蘭を貰い受け,水やりを始めたことです。綺麗に飾られた包装や詰めものが蘭の生育によくないと知り,自宅で仕立て直しました。翌年きれいな花をたくさん咲かせて以降自信を持ってしまいました。今も数株が生きながらえてきれいな花を咲かせてくれます。職業柄趣味に時間をかけることができないので,手間がかからない多肉植物を中心に育てています。多肉植物はサボテンと混同されることが多いのですが,厳密には水分を蓄える構造を有しているが,トゲのないものを指します。この世のものとは思えないような,いわゆるキモ可愛い姿や日光を浴びて宝石のように輝く姿に心惹かれながら週一回の水やりと休日の園芸店巡りを楽しんでいます。ふと気がつくと身の回りは植物で囲まれていて,彼らの成長を楽しむと同時に季節の移ろいも楽しむ生活となっています。
この趣味を医学に生かせないかと考えたときに「ガーデンセラピー」に出会いました。早速コーディネーター2級を受講しました。これをきっかけに多くのことを学びました。いくつかを披露させていただきます。園芸の第一歩は水やりですが,多くの人は水のやりすぎで植物を枯らします。植物は水蒸気を吸い上げることができるので水は程々で結構です。水につかりすぎると根が腐って枯れてしまうのです。鉢の下に水をためておくのも良くない場合があります。次に頂芽優勢です。一番上にある花芽が成長するので,てっぺんの枝を水平に誘引してやることで多くの花芽に自分がてっぺんだと思わせることができ,花をたくさん咲かせることが可能になります。植物ホルモンを利用した賢い方法です。最後にガーデンの語源です。諸説ありますが,古代ヘブライ語の囲むという意味のガルと楽園を意味するエデンが合わさってできたといわれています。このガーデンセラピーは具体的には庭・菜園などで生活に植物を取り入れ,日常的に様々な形で自然と接するようにします。そうすると視覚・触覚・嗅覚・味覚・聴覚の5感を刺激して,脳を活性化することで健康寿命を延ばすことを目指す療法です。裾野は広く,園芸以外にも森林浴や芳香療法・食事療法・芸術療法と多岐にわたります。
このような裾野の広い活動こそが最終的に成果をあげると信じています。我々はつい目先のことにとらわれがちです。課題は多いですが,ここは一旦落ち着いて周りを見回せば,医師だけでなく看護師・薬剤師・栄養士・心理士など幅広い人材が集まっています。お互いを補完するだけでなく,新しいムーブメントを興す潜在能力を秘めていると思います。
皆さんもガーデンセラピーを学んでみませんか。
Information
病 院 名 京都市立病院
住 所 京都市中京区壬生東高田町1の2
電話番号 075-311-5311( 代 )
ホームページ https://www.kch-org.jp/