2026年3月15日号
2月7日(土),令和7年度第41回勤務医部会総会をザ・サウザンド京都で開催した。
尾池府医理事の司会のもと,冒頭挨拶に立った禹府医副会長は,日頃より地域医療に尽力する勤務医への謝意を述べた上で,今回のテーマである「病院経営」について,診療報酬改定への対応,人材確保の困難さ,物価・エネルギー価格の高騰などが重なり,かつてない厳しい局面にあると指摘。これらは単なる経営上の問題にとどまらず,勤務医の労働環境や医療の質,さらには地域医療の持続可能性に直結する重要課題であると強調。本総会が立場を超えて建設的な議論の場になることへの期待を述べ,挨拶を締めくくった。
続いて白神幹事長が挨拶。自身が過去に経験した病院破綻の現場を振り返り,その影響が地域医療,職員,患者にまで深刻に及んだ実情を紹介した上で,現在の医療界にも当時と同様の危機的兆候を感じていると憂慮した。また,医師会活動の意義が勤務医に十分浸透していない現状にも触れ,病院経営を「管理職の問題」ではなく「現場全体で共有すべき課題」と捉え,率直な議論を行いたいとの姿勢を示した。
その後,平田副幹事長より令和7年度勤務医部会の活動報告が行われ,幹事会での協議内容をはじめ,府医への入会促進の取組み,京都医学会での演題発表,京都医報「勤務医通信」への投稿状況などについて説明した。また,設立40周年記念誌の発刊についても紹介。若手医師や女性医師も参加した座談会では,勤務医を取り巻く現状や将来展望が多角的にまとめられており,本誌はこれまでの活動記録にとどまらず,今後の勤務医部会の方向性を考える資料となるものであると述べた。さらに,医師偏在対策や医師・看護師等の人材確保,安定的な医療提供体制の構築といった課題について,今後も幹事会を中心に継続的に協議していく方針を示した。
■ 基調講演
千葉大学医学部附属病院副病院長 井上 貴裕 氏
基調講演では,千葉大学医学部附属病院副病院長の井上貴裕氏が,令和8年度診療報酬改定を踏まえた今後の病院経営の方向性について,具体的なデータを示しながら解説した。
令和8年度改定は本体3.09%のプラス改定となったが,その影響は一様ではないと前置きし,とりわけ高度急性期・DPC病院においては比較的手厚く配分されている一方で,経営改善の取組みなくしては,依然として厳しい経営環境が続く可能性があるとの見解が示された。
井上氏は,経営改善の鍵として新入院患者数,病床数,看護配置のバランスが極めて重要であると強調。病床数が多くても新入院患者を確保できなければ稼働率は向上せず,反対に人員配置が過剰であれば人件費が経営を圧迫する。急性期病床では「1床あたり月2回転以上」を一つの目安とし,達成が困難な場合には病床削減や機能転換も検討すべきとの私見を述べた。
患者動向の分析では,入院患者総数や軽症救急,予定外入院が減少する一方で,重症救急や全身麻酔件数は維持されている現状が示された。
また,救急車による搬送患者の入院率の考え方が経営指標にも直結することに触れ,救急受入体制は単なる地域貢献にとどまらず,戦略的視点を持って構築すべきであると述べた。さらに,医療安全の観点からも一定の入院受入は合理的であり,救急医療は病院機能を支える中核的役割を担うとの見解を示した。
加えて,各病院が自院の役割を明確にする「選択と集中」の重要性を指摘。人口動態の変化や物価高騰といった外的要因が重なる中,人材確保も困難さを増しており,病院間の機能分担と連携強化なくして持続可能な医療提供体制の維持は難しいとの認識が共有された。
講演では,京都府内各病院の詳細なデータと,個別の動向を踏まえた具体的な分析と戦略的提言が示され,参加者は今後の病院経営を考える上で示唆に富む内容に,熱心に耳を傾けていた。
■ シンポジウム
千葉大学医学部附属病院副病院長 井上 貴裕 氏
京都医療センター副院長 白神幸太郎 氏
京都ルネス病院理事長・院長 冨士原正人 氏
引続き行われたシンポジウムでは,井上氏に加え,京都医療センター副院長の白神幸太郎氏,京都ルネス病院理事長・院長の冨士原正人氏が登壇。冨士原氏は民間病院の立場から,白神氏は公的病院の立場から,それぞれの経営実態と課題を提示。現場ならではの率直な内容に,フロアからも活発な意見が寄せられた。
最後に座長の白神幹事長は,病院経営は管理職のみの問題ではなく,勤務医一人ひとりが関わる課題であると改めて強調。府医会員の半数以上が勤務医であることを踏まえ,現場の窮状を中央へ届けるためにも,京都のみならず近畿など広域的な枠組みで発信していく必要性を訴え,討論を締めくくった。