2022年12月1日号
第 53 回全国学校保健・学校医大会が 11 月 12日(土)に岩手県で開催された。本年はハイブリッド開催(現地参加+ LIVE 配信・オンデマンド配信)され,府医からは現地参加9名,Web 参加6名であった。
午前は「からだ・こころ1」,「からだ・こころ2」,「からだ・こころ3」,「耳鼻咽喉科」,「眼科」の5分科会で合計 45 の演題発表が行われた。府医からは兵庫美佐子氏(左京)の「学齢期難聴児の耳鼻咽喉科疾患と聴覚補償について~京都市立小中学校聴覚特別支援学級聴覚検診結果より~」と,柏井真理子氏(京都北)による「就学時健診及び幼稚園・保育所等での視力検査等に関する全国調査について」,さらに林鐘声氏からの「令和3年 10 月に行った学校医の新型コロナウィルス感染症対応のアンケート結果」と題した研究発表を行った。
午後は式典のあと,「幼児期・学童期における認知的力と非認知的力の意義」と題した白梅学園大学名誉教授 無藤隆氏からの特別講演と,「子どもたちの『生きる力』を育む」をテーマとしたシンポジウムが行われた。
無藤氏は講演の中で認知能力と非認知能力はともに相まって発達するものであり,学力や社会的適応,当人の幸福感に寄与するとした上で,非認知能力は感情(情動)と意欲・意志の働きを主なものとしているが,必要なことに考えを集中させるために感情の抑制が必要となり,この抑制機能が脳神経科学において「実行機能」と呼ばれ抑制制御,ワーキングメモリー,シフティング(柔軟性)という働きからなると説明。非認知能力には実行機能以外にも多くの心理変数が含まれそれらの整理統合が必要とされてきていることを説明した。
その後,3人の演者による発表があり,まず,日本産婦人科医会前会長の木下勝之氏から「子供がストレスを乗り切る力“レジリエンス”を育む」を演題としての講演があった。レジリエンスとは人生の逆境における困難に対する反発力,回復力のことであり,これを獲得するためには「甘え」を受け入れることができる母親や父親,または祖父母,そして第3者の養育者に育てられることが必須条件であるとしてその重要性が説明された。
次に,「すべての子どもたちの幸せのために~私たちが今知っておきたい『非認知能力』について~」を演題として登壇した岩手県医女性医部会副部会長 千田恵美氏は,まず,「非認知能力」が岩手県医として取組むべき重点課題と結論したことを説明し,子どもたちにとって重要な鍵となる自分を制御する力(実行機能)や他者と良好な関わりを持ち続ける向社会的な力といった非認知能力を育成するために我々ができることについての具体的な提案を行った。
最後に,花巻東高等学校硬式野球部監督 佐々木洋氏は「夢を実現する」と題しての講演を行った。プロ野球の菊池雄星選手や大谷翔平選手等を輩出した高校野球部監督として自身の生い立ちや裏話も交えながら選手たちの成長の軌跡を辿り,盆栽や庭園の植栽から着想を得た選手たちの育成方法について興味深いエピソードが語られた。
閉会式では来年度の開催県である兵庫県医会長からの挨拶を以て第 53 回全国学校保健・学校医大会は無事終了した。